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カンボジア:ユニセフは、HIVとともに生きる
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© UNICEF video |
叔母に見守られながら、自宅のベランダで宿題をするバナくんと弟たち。彼らはエイズ孤児です。 |
農家のベランダで、バナくん(12歳)は、双子の弟と姉と一緒に、明るいうちに宿題を終わらせようと格闘しています。家族の写真と並んだ時計が6回鐘を打つと、3人の孤児と叔母は一日の大半を終えます。
チャイムを合図に、叔母は薬箱を持ってきます。そして、バナくんは薬の錠剤を飲みます、もうひとつの闘いのために。バナくんは、少なくとも6,000人はいると見られるカンボジアのHIVに感染した子どもの一人なのです。
バナくんの父親は2000年にエイズ関連疾患で亡くなりました。直後に母親も亡くなりました。子どもたちがHIV検査を受けたのはこのときだけ、HIV陽性だったのはバナくんひとりでした。
6年後、バナくんの生活は弟たちの生活とそれほど変わりません。バナくんはバイクに乗るのが好きで、学校に通い、家事をして弟たちを助けます。
ユニセフの支援する「友人同士の助け合い」プログラムが州立病院で行うグループ支援活動こそが、バナくんの平穏な日常生活にとって支えとなってきました。HIVとともに生きる子どもたちや介護者のためのこのプログラムは、友人同士の助け合いを通じて、同じ境遇にある子どもたち同士が知り合い、お互いの人生を語り、ともに遊び、栄養価の高い食事を食べ、医療ケアを受ける機会を提供しています。
バナくんと叔母はこれまで2年間、毎月15キロの道のりを病院まで通ってきました。
「自分と同じ境遇にあるほかの子どもたちと話したり遊んだりすることは、とても楽しいです。毎日 、薬も飲まなくてはなりませんが。」と、バナくんは恥ずかしげに話します。
「友人同士の助け合い」プログラムにより、HIVとともに生きる子どもたちは、検診を受けるために病院を受診したときに、健康的な食事をしっかり食べることができます。
ユニセフの資金援助により、小児病棟の大部屋はカラフルな動物の絵に塗り替えられ、本やおもちゃも購入されました。ユニセフの協力団体のひとつ、クリントン財団はバナくんのようなHIVとともに生きる子どもたちが毎月の検診後に服用する薬を提供しています。
ユニセフは小児のエイズ治療支援、小児病棟をはじめとした病院の改装、カンボジアでのHIV/エイズに関連した技術やトレーニング提供において、けん引役を担ってきました。
「カンボジアの問題のひとつは、多くの施設が老朽化していることです。紹介先の病院の中には、子どもたちのための施設がないものもあります。医療保健施設の改装により、子どもたちの状態に関わらず、全ての治療の質を改善することに役立ちました。」(ユニセフ・カンボジア事務所ハリティアナ・ラコトマモニュ HIV/エイズ予防と治療部門チーフ)
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毎月の定期健診をうけるバナくん(12歳)。ユニセフは、カンボジアで「友人同士の助け合い」プログラムを支援しています。 |
カンボジアでは、HIV感染率が1997年の3パーセントから劇的に改善して、2006年には1パーセント未満にまでなりました。この成功の要因は、治療を受けるための負担金を減らしたことでした。
これまで、HIVに感染した人々は、仲間外れにされることが多かったのですが、こうした偏見や差別は、HIV検査施設や医療保健サービス、「友人同士の助け合い」プログラムのような支援ネットワークを通じて、少なくなってきました。
「カンボジアの成果は、限られた資源の中であっても複合的な感染性疾患を予防して減らすことができることを示しました。非常に優れたリーダーシップとフォローアップにより、地域や州レベルで地道な成果が得られるという証拠です。」
しかし、結婚した女性の感染者ではほぼ半数は新規感染、新規感染3分の1が母子間でのHIV感染という状況で、カンボジアの子どもたちは依然としてHIV感染との厳しい闘いに直面しています。