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チャド:銃の無い生活を取り戻させるために【2010年5月28日 チャド発】
かつて子どもの兵士として紛争に巻き込まれていたドワ・サムナさん(19歳)は、今、チャドの首都ヌジャメナのガレージで働き、以前とはまるで違う日々を送っています。ドワさんは、兵士としての生活がどんなに過酷だったか、当時を思い出して話してくれました。「定期的な食事をとっていませんでした。」「何でもみんなと共有して使わなければなりませんでした。」 ドワさんは、16歳の時チャドの政府軍に入りましたが、政府は翌年、ドワさんの実年齢を確認すると、彼を除隊させました。「ドワが帰ってきたとき、私達は、とてもほっとしました。もう帰ってこないかもしれないと、心配していたんです。」ドワさんの父親のゴングナ・サムナさんはこう話しました。 「パリ原則」履行への強い意志チャドで何十年も続いている武力紛争は、ドワさんのような子どもたちを、いつでも国軍や武力勢力に徴用されてもおかしくない状況に立たせています。チャド防衛省は、2009年に武力勢力が武装解除した兵士の7から9パーセントが、子どもだったと報告しています。 こうした状況の中、希望の光も差しています。子どもの兵士の武装解除や社会復帰の取り組みを強化するために、ユニセフは2007年、チャド政府との間に合意書を交わしました。ドワさんの解放は、この合意に従って行われたものでした。 この合意は、子どもたちを兵士や他の形態で紛争に駆り出す事を禁止する国際協定である「パリ原則」に、チャド政府が署名したことに続き交わされました。 社会復帰のための手段武力勢力が政府によって捕らえられたり、政府との間に和平協定が締結されて、兵士などとして徴用されていた子どもたちが解放されると、こうした子どもたちは、「パリ原則」に従い、ユニセフが支援している社会復帰プログラムに参加します。また、武装解除された元兵士一人ひとりに対し、政府から約830米ドルが支給されます。 武装解除された子どもや若者たちは、国際NGOが運営するヌジャメの施設に一旦保護されます。このセンターでは、カウンセリングや社会復帰のための様々な研修が提供されます。 2007年以降、800人を超える子どもたちが、こうしたユニセフの支援を受けました。 “普通の生活”を取り戻すため
ソウレイマネ・アドウム・イザクさん(19歳)は、チャド東部の武力勢力に徴用され、7年間、子どもの兵士としての生活を送りました。この武力グループが、政府との和平交渉を行っていた時に、ソウレイマネさんは解放され、社会復帰支援センターに保護されました。今、彼は、ヌジャメのホテルで働いています。 「(子どもの兵士だった私たちは)幼い時に戦闘訓練を受けています。武力勢力と共に全ての時間を過ごしてきました。だから、普通の市民になった今でも、常に“闘いたい”と感じているんです。常に、誰かと戦わなくてはいけないという気持ちが、どこかにあるんです。」 銃の無い生活に慣れることは、かつて子どもの兵士だった多くの子どもたち、若者たちにとって、易しいことではありません。 「こうした子どもたちは、人を殺す訓練を受けてきたのです。」 ユニセフ・チャド事務所代表で医師のマルツィオ・バビルはこう話します。「子どもたちのトラウマを解消し、普通の生活を取り戻させることは、易しいことではありません。」 ドワさんや、ソウレイマネさんと同じような環境に置かれている多くの子どもたちは、ユニセフをはじめとする人道支援団体の支援を受けて、新たな人生を送っています。ソウレイマネさんは、まだ家族との再会を果たしていませんが、今は、自分にも未来があると感じていると話してくれました。 |