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チャド共和国:
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© UNICEF/2014/Chad/Andriamasinoro |
家や財産、父親さえも失ったジムランガー・イドレスさん16歳(右)。現在はシドにあるトランジット・センターに身を寄せている。 |
チャド共和国南部シドにある帰還民の受け入れ施設には、中央アフリカの首都バンギから、何時間もかけてやっとの思いでたどり着いた人々が、続々と到着しています。恐ろしい暴力を目の当たりにし、家族を失った人や、財産をすべて残して着の身着のまま避難してきた人もいます。
施設に着いてもなお、帰還した人々の顔からはトラウマ、疲労、恐怖がうかがえます。ジムランガー・イドレスさん(16)は、チャド共和国政府の護送車で帰還しました。「悲惨な状況でした。家に火を放たれ、全ての財産を失いました。父親も殺されました。家は全焼し、何も残りませんでした」とジムランガーさんが話します。「バンギからチャドに避難してきました。これまでチャドには来たことがありませんでしたが、身を守るために、他に選択肢はありませんでした」
帰還民の人々が、受け入れ施設で帰還民登録をするため、列に並んでいます。
「この状況をどうやって乗り越えていけばよいのか、まだ分かりません。着の身着のまま避難してきました。食べるものも飲むものも、十分にありません」(ジムランガーさん)
© UNICEF/2014/Chad/Andriamasinoro |
中央アフリカの国境に近い町や首都のンジャメナにあるトランジット・センター(上)に一時的に身を寄せる帰還民。 |
「両親も、私も、兄弟も、私の家族はみんな中央アフリカで生まれました。チャドには知り合いも、身寄りもいません。私たちの祖先はチャド中部のアムティマン出身だと、母が教えてくれました。でも残念なことに、今となってはその母ですらも、この国に知り合いは誰一人としていません。どうやったらその町にたどり着くことができるのかも分からないのです」(ジムランガーさん)
チャド政府は中央アフリカに住むチャド国民の帰還を支援するため、両国を渡す橋や人道支援専用道を建設しました。1月20日現在、4万1,700人が帰還しています。その10人に8人以上は女性と子どもです。
この施設は、チャド南部のモワイヤン・シャリ地域にあります。地域の知事を務めるアフマト・マハマット・カランバル氏は「帰還民の数は増加し続けています。今後数日、数週間で、より多くの人々がチャドに帰還するとみられています。中央アフリカの情勢が今後どうなるのか、予測することは極めて難しい状況です。現在の受け入れ体制で、どれぐらい対応し続けられるのかも分かりません」と語ります。
国境沿いに、絶え間なく到着する帰還民の人々。その数は、チャド共和国の対応能力を超えうるものです。新しく入国した人たちはトランジット・センター(一時受け入れ所)に身を寄せます。ここでは、医療ケア、食糧、水と衛生の支援を受けることができ、トラウマを抱えた人々に心のケアも行われています。
「臨時的な施設ではあるものの、ここでは、帰還民の緊急ニーズを満たす支援一式の提供や人々の尊厳を取り戻す支援が必要とされています」と、ユニセフ・チャド代表のブルーノ・メイズ氏が語ります。「女性や子どもたちは、何日間も何も口にせずにここにたどり着きました。トラウマを抱え、疲れ果て、病気にかかっている人もいます。トランジット・センターではこのような人々に基本的な社会的サービスを提供することが必要不可欠です」
ユニセフとパートナー団体はチャド政府と協力し、トランジット・センターに医療スタッフや支援物資、シェルターの配備などの支援を行っています。ユニセフはチャド南部の1万5,000人の子どもたちを対象に大規模な予防接種キャンペーンを実施。家庭用の水と衛生キットや何十基もの井戸、200基の簡易トイレを提供しました。
© UNICEF/2014/Chad/Andriamasinoro |
ドバのトランジット・センターに身を寄せる帰還民とユニセフ・チャド事務所代表ブルーノ・メイズ(右) |
チャド政府によると、これまでに、家族と離れ離れになった子ども250人以上が登録されています。ユニセフは関係機関や他団体とも協力し、チャドと中央アフリカの両ユニセフ現地事務所が力を合わせ、家族の追跡と再会システムを利用して子どもたちの保護や早急なケアを実施しています。最近チャドに入国した帰還民と早期の帰還民とでは、状況に大きな差があることが明らかになっています。家族の離散は深刻さを増し、緊急を要する人道支援へのニーズは高まるばかりです。そしてより多くの子どもたちが、暴力や虐待を目にしたり、経験したと証言しています。
「過去数週間にわたって帰還民の数は増加し続けており、彼らのニーズあった支援を提供することが人道支援コミュニティにとって大きな課題になっています。帰還民の差し迫ったニーズにこたえるため、そして施設での生活環境を改善させるため、チャド政府やユニセフへの支援を国際社会に求めています」(メイズ氏)
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