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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

エジプト:混乱に晒された子どもたちへの心のケア

【2011年2月18日 エジプト発】

エジプトで数週間続き、一部ではまだ継続している大規模なデモによる混乱。ユニセフは、この影響を受けた子どもたちへの心理社会的な(心のケアの)支援プログラムをスタートしました。

1月25日に始まったデモ。最初の数日間は平和的に続けられましたが、デモ隊と政府軍、反デモ隊の間の衝突が発生し、暴力的なものに変容しました。こうした暴力行為に参加したグループの中には、凶悪犯も含まれていたと報告されています。

また、街中から警察官の姿が消え、混乱の中脱獄した受刑者は数千人にのぼり、商店街では略奪行為が行われ、人々の間に不安が広まりました。こうした事態に対応するため、子どもを含むあらゆる年齢層の人々が、自ら自警団を結成。その活動は、軍隊が治安を回復するまで続きました。

暴動に巻き込まれた子どもたち
© UNICEF Egypt/2011/Aql
エジプトの首都、カイロのタハリール広場で、デモの群集に加わる子ども。

保健省と複数の人権団体が発表した情報によると、各地で発生した暴動により、13人の子どもを含む365人が死亡。負傷者も数千人にのぼると見られています。

「これまでに報告された全ての死傷者、特に子どもたちの死傷者について、また、金銭で雇われてデモに参加させられた子どもたちの状況、身柄を拘束されている子どもたちの状況を、徹底的に調べる必要があります。全ての子どもたちの権利が守られなければなりません。」ユニセフ・エジプト事務所のフィリップ・デュメル代表はこう話しました。

「多くの子どもたちが、目の当たりにしたり経験してしまった暴力や不安な気持ちに“折り合い”を付けるための支援を必要としています。」

危険に晒されている子どもたちへの支援
© UNICEF Egypt/2011/Aql
大規模の中心部、カイロのタハリール広場で眠る子ども。

ユニセフとパートナー団体は、カイロやアレクサンドリアをはじめエジプト全土で、学年齢期の子どもたちを対象に、彼らが精神的な苦しみを克服できるよう、心理社会的な支援を開始する準備を整えました。

トラウマ(心理的外傷)とストレスの兆候を識別したり、必要に応じてより専門的な支援や治療が受けられよう、病院に子どもたちを照会することなどを内容とした研修が、ソーシャルワーカーと教員を対象に、既に始まっています。ビデオ会議システムを利用して、この研修は、今後、エジプト全土を対象に実施される予定です。また、今回の混乱で最も深刻な被害を受けた地域では、心理学者による特別な現場研修が、教員とソーシャルワーカーに提供されることになっています。

アル=アズハル大学の心理学教授、ハシェム・バハリー博士は、不安や落ち込み、脅迫観念に苦しんでいる子どもたちは、最大で、エジプトの全ての子どもたちの30パーセントにものぼっている可能性があるとしています。

「この心理社会的なプログラムは、子どもたちと活発にコミュニケーションする教員や心理学者、ソーシャルワーカーを養成することを目指しています。」「まずは、子どもたちの話を聞くこと。そして子どもたちが自分自身の気持ちをきちんと表現するための技術が、ここで言うコミュニケーションの基本です。もちろん、こうしたコミュニケーションを通じて、子どもたちの不安も緩和されることにもなるでしょう。」バハリー博士はこのように話しました。

街中に残る影響

今回の混乱の中で最も深刻な影響を受けたのは、カイロやその他の主要都市の街頭で暮らしたり、働いたりしている数万人の子どもたちです。路上で暮らしている子どもたちは、深刻な暴力に晒されたり、人々が殺されたり重症を負ったりした様子を目撃したと語っています。

マハさん(仮名・18歳)は、16歳の友人が撃たれた時のことを次のように説明します。「私たちは群集の真ん中にいたんです。彼女は、背中を撃たれました。すぐに病院に連れて行って、回復の兆候が見えるまで、病院で彼女に寄り添っていました。」

デモに参加したモハメドさん(15歳)も、次のように語ります。「私たちの方に催涙弾が投げられたんだ。ゴム弾も打たれた。」「手にゴム弾が当たったんだ。とっても痛かった。弾を取り除いてもらいに、病院に行ったよ。」

ユニセフは、マハさんやモハメドさんのような子どもたちがこうした苦難を乗り越え、自信をもって将来と向き合えるよう、この心理社会的な支援プログラムを通じて、エジプトの子どもたちを支えています。

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