<2004年7月13日>
パレスチナ自治区で進むはしか予防接種キャンペーン
<ヨルダン川西岸とガザ地区>
ファティマ・イブラヒムは、2歳になる娘のイクラン・ハメッドの手を引いて健康省の診療所に恐る恐る歩いて行きました。数分後、イクランはビタミンAとはしかの予防接種を受けました—50万人以上にのぼるパレスチナの子どもたちのための予防接種キャンペーンのはじまりです。
「このキャンペーンのことは口コミで知りました。子どもたちにとって、予防接種はとても良いものだと思います」24歳の母親は言います。ワドラ・ラハルの不毛な丘に、健康省からの案内が携帯用メガフォンから流れています。ワドラ・ラハルはベツレヘムから車で20分ほどのところにある町です。
イブラヒムは、予防接種を受けることで子どもたちが病気になるのではないかという不安が母親たちの間に広まっていたと言います。でもイブラヒムは気にしませんでした。「予防接種は子どもを守るものなのよ」
この光景は、ヨルダン川西岸とガザ地区で行われている、はしかとビタミンA欠乏症に対する国の予防接種キャンペーンの一部です。パレスチナ自治区で公共の保健キャンペーンがこのような規模で行われるのは初めてのことなのです。
はしかは高い感染力を持ち、子どもの主たる死亡原因となっています。毎年3000〜4000万人の子どもたちが感染し、75万人以上もの子どもたちが命を落としています。命を落とさないまでも、目が見えなくなったり耳が聞こえなくなったり、脳に障害を負ったりするなど、一生涯にわたる障害を負う子どもがたくさんいます。栄養失調をわずらっているときや、パレスチナ自治区のように人口が密集している地域では、危険性がさらに高まります。
パレスチナ占領自治区で近年行われた調査から、3分の1の子どもたちがはしかウイルスに対する抗体を持っていないことが判明しています。一部の地域ではこの割合が50パーセントを超え、子どもたちがはしかの大流行の危険にさらされています。
でも、このキャンペーンのおかげで、ヨルダン川西岸とガザ地区に住む生後9カ月から59カ月までの、54万人以上ものパレスチナの子どもたちが予防接種を受けることになります。
6月28日のキャンペーンの初日、アクセスが困難な地域においても多くの子どもたちが集まり、午前11時までにはガザ南部のラファの町だけで500人の子どもが予防接種を受けました。
ワドラ・ラハルにあるタブラの町では、たくさんの親たちが不安げな顔をしている子どもたちを保健員のもとへ連れてきました。歩いてきた人、ロバや馬に乗ってきた人、車でやってきた人など、移動手段はさまざまです。地元の住民たちはプラスチック製のイスと木の机を診療所へ持ち寄り、急場の予防接種会場をこしらえました。
雲ひとつない空が広がるガザ地区の町マンディで、ユニセフ親善大使のヴァネッサ・レッドグレイブがキャンペーンの幕を開けました。健康省副大臣アナン・マスリが、西岸地区の町、ラマラでテープカットのセレモニーを行いました。「このキャンペーンが成功するように輸送体制に万全を期しました。予防接種は無料で行われます」とマスリは言います。
このキャンペーンはこれから3週間の間に、ベドウィンのコミュニティや封鎖地区などのアクセスの困難な場所も含めた、ヨルダン川西岸とガザ地区の15の地区すべてで行われる予定です。(このキャンペーンは、日本政府とUSAID[国連合同エイズ計画]の資金援助のもと、パレスチナ健康省、UNRWA[国連パレスチナ難民救済事業機関]、ユニセフによって進められているものです)
予防接種は、健康省とUNRWAが指定した拠点のほか、移動チームも派遣してアクセスの困難な地域や封鎖地区でも行われる予定です。ヘブロン地区のユニセフ職員、ドナ・カーターは、保健員が車の中からでも予防接種を行うことができるよう、ひと回り大きな4輪駆動車が調達されたといいます。
このキャンペーンについては、テレビや新聞やラジオ広告、モスクやその他、人が集まる場所を通じて広められることになっています。
キャンペーンが円滑に進むように、イスラエル軍と当局が特別の調整をしました。キャンペーンの成功のためには、ワクチンの安全かつ自由な輸送が必須条件です。もし輸送が遅れたりワクチン箱が開封されてしまったら、ワクチンの有効性が損なわれ、予防接種の有効性が失われる結果になるからです。
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