メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ギニア:
通過儀礼として根付く女性器切除(FGM/C)
96%の女性が施術、コミュニティーの力で根絶へ

【2014年2月11日 ギニア・ラベ発】

写真
© UNICEF video
かつて女性器切除を執り行う切除師として働いていたドゥンボヤさん。施術を二度と行わないという決意とともに、ナイフを土に埋めました。

何世代にもわたって続く女性器切除(FGM/C)の慣習を拒んだ切除師の女性。彼女から語られる言葉から、女性器切除の危険性の認知を高めるためには、コミュニティの力が必要不可欠だということが分かります。

ドゥンボヤさんがまだ20代前半の頃のことです。祖母が亡くなり、先祖代々伝わる赤いローブ、革で包まれ貝殻の装飾がほどこされた鏡、鋭く曲がったナイフなどを受け継ぎました。

ドゥンボヤさんは現地の言葉でbaradjeliと呼ばれる、儀式的慣習として行われる女性器切除を施術する切除師の職を継いだのです。

「それぞれの家には、代々伝わる家業があります。それが仕立屋の場合も、農家の場合もあります。私の家は女性器の切除師でした」

切除師になるための公式な教育課程はありません。必要な技術は現場で習得したというドゥンボウさんは、「実際に施術方法を見て学び、あとは恐怖心を乗り越えるだけです。私は医療訓練を一度も受けたことはありません」と語ります。

高度な技術が必要な施術ですが、それに見合う報酬を受け取ることはほとんどありません。「お金はほんの気持ち程度で、いくらかのお礼の品をもらっていました」

女性が付き添う施術、術後は盛大なお祝い

写真
© UNICEF video
ドゥンボウさんがスピーチをしたイベントに参加する女性たち。

ドゥンボウさんは数えきれないほどの女の子の施術を行いました。そのほとんどは、7〜10歳の女の子です。時には数人で施術を受けに来る場合もありますが、常に切除を促した家族が付き添ってきました。

「たいてい、母親や叔母、祖母が女の子を連れてきます。男性が連れてくることはありません」(ドゥンボウさん)

女性器切除はギニアの女の子にとって通過儀礼になっており、96%が切除を受けています。そしてその多くは15歳未満の女の子です。切除が行われると、ドゥンボウさんのコミュニティでは大きなお祝いを開くのが慣例になっていました。

「施術が終わった際や術後の体調が回復した後、盛大にお祝いするのです。両親は、結婚をするとき以上にお金を使います。女の子をできる限り豪華に着飾ってあげたいのです。皆競い合うかのようにお金をかけてお祝いをしていました」

「もう二度としない」

世界的な女性器切除の根絶活動の一環として、ユニセフ・ギニア事務所は女性器切除の慣習の実態を広め、人々の認知を高めるための啓蒙活動を行う団体を支援しています。ユニセフのパートナー団体である国際NGOトスタンは、女性器切除の慣習の根絶をコミュニティに促すことに、大きな成果を収めています。その活動により、74のコミュニティが女性器切除の根絶に向けた公約を定め、宗教や政治のリーダーの協力の下、女性器切除の慣習を断ち切るという宣言をしました。

切除師として長い月日を過ごしたドゥンボウさんは、現在、伝統的な家業でもあった女性器切除の慣習に反対しています。「私はかつて、女性器切除はコミュニティのためになると考えていました。しかしトスタンの活動で、私はただ単に女の子を傷つけていたのだと気付いたのです」

集まったコミュニティの人々を前にし、ドゥンボウさんは女性器切除に携わっていたことへの後悔の念を語りました。彼女は、代々伝わる切除師の赤いローブを裂き、ナイフを土に埋め、施術のお守りにしていた鏡を捨てました。

「私は切除した人たちの体を元に戻すことはできません。でも、これ以上このような経験をする女の子たちを増やさないために、女性器切除を行わないという決断を下すことはできます。もう二度と行うことはありません。今も施術を行っている切除師に、女の子たちを傷つける行為をやめるように伝えたいです。女性の人生は、十分痛みを伴うものです。妊娠や出産で痛みを経験する女性たちに、それ以上の痛みは必要ないのです」

資金不足により、困難が伴うアドボカシー活動

この女性器切除の現状やドゥンボウさんの話から、コミュニティを基盤とした人権の啓蒙活動が大きな効果を発揮するということが分かります。家族代々引き継いできた伝統ですが、彼女は女性器切除がもたらす危険性について認識がありませんでした。宗教上で必要な行為でもなく、教えられてきた大義を果たすことができるような行為でもないということ、1965年からギニアでは違法行為と位置付けられていることも、まったく知らなかったのです。

女性器切除が与える身体的・精神的な危険性を広めるためのコミュニティのエンパワメント活動や、切除師が新たな職業に就くための支援プログラムは、莫大な費用を必要とするものではありません。しかし残念なことに、ギニアでは資金不足により、ユニセフやトスタンがドゥンボウさんのコミュニティで実施したような、効果的なプログラムの拡大が困難になっています。

【関連ページ】

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る