|
|
インドにおけるポリオ:ラヒラ・ベグムの物語
|
2004年の4月、35歳の:ラヒラ・ベグムは、故郷のアリーガルから何百マイルも離れたラクナウという街をはるばる訪れました。最も優秀なポリオ根絶運動の地域活動家(Community
mobiliser-coordinator: CMC)としての活躍ぶりが認められて、ユニセフから表彰されることになったのです。ラヒラはインド北部のウッタル・プラデシュ州から選ばれた5人の地域活動家のうちの1人でした。ウッタル・プラデシュは2002年にポリオの発症例が世界で最も多かったという不名誉な記録がある州ですが、その州にあって、彼女の活躍は特に目覚ましいものがあったのです。表彰式では、クリケットの人気選手モハメッド・カイフから銀の盃が授与されました。
受け取った銀の盃を飾る12歳の娘ファラもまた、母の功績をとても誇りに思っています。ファラは生後わずか18カ月でポリオに冒され、下肢が不自由になりました。「私はファラのことがきっかけとなってポリオ根絶運動に参加するようになりました。子どもはみんなポリオワクチンの接種を受ける権利があり、不自由な人生を強いることは誰にもできないのです」ラヒラはポリオとの出会いをこう語ります。
「娘は18カ月目まではとても健康でしたが、ある日、高熱を出してぐったりしてしまい、顔が文字どおり真っ白になってしまいました。それから3日後には足が動かなくなり、立てなくなってしまったのです。私たちが強い不安を感じた時に、お医者様から娘がポリオに冒されていると告げられたのです。一カ月間高い薬を与えた甲斐もなく、病状は回復しませんでした。以来、自分の足で立つことはできなくなりました」
「当時、鍵づくりの仕事をしていた夫は同僚から、経口ポリオワクチンをほんの数滴投与されていたら娘の病気を防ぐことができたかもしれないと言われました。経口ポリオワクチンは5歳になるまでに与えるものです。夫は私に、男性の目に触れるのをさけるために女性が身に付けるベールをはずして、家族の将来のために健康問題について学んでくるようにと言いました。家には他に4人の子どもがいて、全員に予防接種を受けさせました。子どもたちはみな男女共学の学校に通っていて、その中でもファラは一番賢いのです。ファラはいつもクラスでトップなので、誰も障害をばかにしたりしません」
「ポリオワクチンの予防接種活動を始めたときは大変でした。人々の拒絶にあったのです。人々は扉を閉ざし、家の中に入れてくれませんでした。というのも、経口ポリオワクチンについて様々な誤解があったからです。人々はみな、ワクチンは子どもを病気から守るどころか、逆に病気にしたり、時には性的能力さえも奪うものだと信じていました。そういった誤解を解いて人々を安心させるには、私の家族のことを話すのが最も効果的でした。私はファラが病気になった経緯と、他の4人の子どもが予防接種を受けることで将来病気にかかる心配がなくなったことを話して聞かせたんです。ほとんどの人は、私の家に来て子どもたちに会ってようやく私の言うことを信じてくれました」
「私が住んでいる村には予防接種を受けていない子どもはもういません。現在の職場がある地域でも同じです。ポリオのない地域作りが順調に進んでいることの満足感のほかに、この仕事によって一定のお給料をもらい、ファラを専門家に診せることもできるようになりました。医療キャンプ中に手術を受けることを勧められ、今年初めに両膝を手術しました。ファラは今、松葉杖を使って歩くことができます」
「ポリオを撲滅するための活動はまだ始まったばかりです。コミュニティ内の参加者をこれからももっと増やしていくために、困難な状況にある人たちや読み書きのできない人たちとも協力していきたいと思っています。それに、極端に悪い衛生状態や飲料水の汚染、ごみ処理、下水施設の整備など、まだまだやるべきことはたくさんあるのです」
2004年10月29日
ユニセフ・ラクナウ事務所