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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

インド:経済危機が最も弱い人々を襲う

【2009年5月29日 インド発】

インドのビハール州を流れるコシ川に沈む夕日。こののどかな景色を背に、木製のボートがゆっくりと川を渡り、男の子たちは浅瀬で水牛を洗いながら、水を掛け合って遊んでいます。

しかし昨年の9月、地元では「ビハールの悲しみの河」として知られるコシ川は、ネパールとの国境地域の防波堤を決壊し、大規模な被害を引き起こしました。ビハール州の広範囲が冠水したことにより、約300万人の人々が避難を余儀なくされ、数千軒の家屋が倒壊しました。

生きることに必死

© UNICEF video
2008年に起きた大規模な洪水に襲われたインドのビハール州は、世界的な経済危機の影響も受け、幼い子どもたちは非常に高い栄養不良のリスクに晒されている。

既にインドで最も貧しい州のひとつであるビハール州は、現在、新たな災難に見舞われています。

世界的な金融危機が、既に最も困難な状況にある人々に、更なる追い打ちをかけているのです。現在南アジア周辺に影響を及ぼしている世界経済低迷の影響を感じ始めた時、洪水被害に見舞われた人々は、まだ洪水で破壊されたわずかな所持品を掻き集めていました。ビハール州は、インドの貧しい北部の中でも特に非常に貧しい地域です。通常でも、子どもたちの半数以上は栄養不良に苦しんでいます。

ビハール州に暮らす数百万人の人々は、ガルフ州やその他の場所での仕事に頼っています。海外に移住する余裕のない人々は、たいていの場合ビハール州を離れ、国内でもかつて景気のよかった場所で何とか仕事を探そうとします。

洪水、食糧価格の高騰、経済危機によって引き起こされたいくつもの困難が、既に必死で日々を生き延びようとしている人々に、さらなる大きな苦難を与えています。

経済危機の影響を受ける人々

© UNICEF video
ビハール州のコシ川を渡るために、木製ボートが使用されている。

チャンドラ・デヴ・パドダルさんは、こうした影響を受けている家族の父親のひとりです。チャンドラさんは、洪水でほぼ破壊されたバッディ村で何とか残った自分の簡素な泥の家をじっと見つめて立っていました。チャンドラさんがちょうどこの苦難を乗り越えようとしていた矢先、世界的な景気低迷の犠牲となってしまったのです。

「デリーにある靴工場でこの3ヵ月働いてきましたが、解雇されました」と、チャンドラさん。「注文がなくなって、工場を閉鎖せざるを得なくなったんです。」

土地も家畜もなく、パドダルさんは、どうやって家族を養っていけばいいのかわかりません。食料価格の高騰によって、子どもたちに満足に食事を与えられない状況に陥っている親もいます。

「小包の食塩の値段は、以前は3ルピーでした。でも今は5ルピーです。からし油は、今とても高くて、1パック80ルピーもします。」スルリネアバド村の市場で買い物をしながら、パワ・デヴィさんは話します。「最近、私の子どもたちは、塩とパン以外ほとんど何も食べていません。」

栄養不良の危険なレベル

© UNICEF video
ユニセフと地方当局は、経済危機と食糧価格の高騰による影響を受けているビハール州の栄養不良の子どもたちの母親に、治療用の栄養食品を提供している。

ユニセフは、ビハール州で起きた洪水の影響で避難を余儀なくされ、避難キャンプで生活している子どもたちの栄養不良レベルの調査を実施しました。その結果、子どもたちの栄養不良率は危険なほど高いことが明らかになりました。

子どもたちの約8パーセントは、重度の栄養不良に陥っており、生命維持のために緊急に治療を必要としている危険な状態です。ユニセフは、地方当局と協力して、子どもたちのためのRUTF(すぐに食べられる栄養治療食)を提供しています。RUTFは、ピーナツをベースとした栄養治療食で、子どもたちの生存、成長、発達に必要な栄養素が含まれています。

「この洪水によって、重度の栄養不良のレベルがいかに高いかを認識することになりました。」サハルサ町にある合併症と重度の栄養不良に苦しむ子どもたちのための施設、栄養不良治療センターのタリク・アハメド医師は話します。

洪水対策の一環として、ユニセフは、146のコミュニティセンターにて、生後6ヵ月から5歳までの1600人の重度の栄養不良の子どもたちに治療を提供できるよう支援しています。

治療用食品の重要性

スルリネアバド村の8歳の子どもを持つ父親のマハデブ・サダさんは、RUTFによって子どもたちの状態が本当に良くなったと話します。

「私では、どうすることもできません。」仕事がある時にのみ、レンガ窯で不定期に働くサダさんは話します。「私の二人の子どもたちは栄養不良ですが、RUTFを食べることで子どもたちの状態が明らかに回復していくのが分かります。」

同じ村に住むチャンドラ・デヴさんの4人の子どもたちのうち、一番幼い子どもも治療用の食事を与えられており、今は回復に向かっています。

「一番下の子どもは、RUTFを与えられ始める前までは、いつも病気がちでした。」チャンドラさんはその当時を振り返ります。「息子は食欲が全くなくて、常に抱っこしていなくてはいけませんでした。でもRUTFを食べ始めてから、とても良くなったんです。今、息子はもっと積極的に遊ぶようになりました。他の子どもたちも、RUTFを与えてあげる機会があれば、もっと健康に育っていたのに。」

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