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インドネシア:子どもたちを襲う世界的な経済危機【2009年4月7日 インドネシア・ジャカルタ】
100年に1度と言われる世界的な経済危機。その波は、東南アジアの経済大国インドネシアにも押し寄せています。インドネシア政府は、この危機が子どもたちや貧しい人々にどのような影響を与えているのか、早急に調査する意向を表明しました。 ユニセフは、こうした声に応えるため、国連開発計画(UNDP)をはじめとする国連諸機関とともに、インドネシア国家開発計画庁(BAPPENAS)をサポート。先週、この国で貧しく最も弱い立場に置かれた人々への世界的な経済危機の影響を調査するためのワークショップが、首都ジャカルタで開催されました。 また、ユニセフは、今年1月、このワークショップに先駆け、シンガポールで経済危機の影響をテーマとする国際会議を開催。この会議に参加したインドネシアの財務大臣スリ・ムルヤニ・インドラワティ氏は、基調講演の中で、経済危機の下であるからこそ、インドネシア政府は、その予算を子どもたちに優先的に使う政策を堅持すると表明しています。 最新の情報を把握するために「経済危機が、食糧や雇用、貧困、教育、保健などにどのような影響を与えているかを測ることは、それぞれの問題に対して有効な対策を講じるために不可欠です。」と、国家開発計画庁のバムバング・ウィディアント副長官は訴えます。 先週開催されたワークショップは、インドネシア政府自身による危機管理体制を強化することを目的に開催されました。ユニセフ東アジア・太平洋地域事務所のマセシュ・パテル社会政策アドバイザーは次のように話します。「特に、統計情報をできる限り早く取得するための手法を開発し、その有効性をテストすることが必要です。」 一連の強化活動の中には、1997年から1998年にインドネシアを襲った金融危機で使用された、保健センターやカウンセリング活動、疾病検査センター、学校から定期的に集められている健康や疾病に関する統計を集めた「100村調査」と呼ばれる調査モデルの修正や、様々な物の市場価格の調査が含まれています。 ユニセフはまた、国際労働機関(ILO)とどもに、児童労働の統計情報も合わせて収集するよう求めています。 開発と“セーフティネット”2008年、ユニセフと世界食糧計画(WFP)は共同で、都市部の貧しい人々よりもさらに厳しい状況に置かれている農村部の貧しい人々の食料事情について調査を実施。調査対象世帯の41%は、もはや自分の土地で農作物を作っておらず、そのかわり、賃金労働に従事し、そこから得たわずかな収入で、食料を購入していることが明らかになりました。 それから、さらに経済状況が悪化した現在、農村部の人々がどのように生活しているのか。さらに調査は続けられています。これまでに、人々は安価で低品質の食料を食べ、食料が足りなくなると、親戚や友人を頼ったり、食料以外の生活必需品は、お金を貸りて入手したり、医療サービスへの出費を削ったりしている傾向が明らかになっています。また、子どもたちが長期に学校を欠席している傾向も確認されました。 ユニセフ・インドネシア事務所のニロウファル・ポウルザンド社会政策担当官は、ユニセフは、こうした活動に加え、子どもの健康や栄養、教育、保護の分野でも、統計的裏づけをもった政策提言活動を行っていると語ります。 「インドネシアが、現在の経済的危機の中でも、防ぎ得る死を防ぎ、栄養不良を減らし、学校からの退学や兵士として徴用される危険などから子どもたちを保護するためには、様々な農村・社会開発活動やセーフティネットを拡充し続けることが必要です。」(ポウルザンド社会政策担当官) 保健サービスと教育の効果アジアの他の国々と同様、インドネシアは、世界の他の地域よりも、医療分野に対する政府予算が低い水準に留まっています。医療などの社会サービスを利用者負担としておくということは、今回のような経済危機に一旦襲われた場合、人々の収入が途絶え、子どもたちの健康が脅かされやすくなることを意味するのです。 しかしながら、インドネシア政府は、これまでに革新的で注目に値する新機軸を打ち出しています。その一つが、農村に対する補助金の拠出です。こうした補助金は、例えば、出産前健診や子どもを対象にした予防接種の普及率を改善するためだけに、その利用目的が限定されています。この予算は、農村のリーダーの管理の下、妊婦のための無料の医療サービスの提供に使われたり、保健センターまでの交通費に充てられています。 また、小学校と中学校の児童・生徒への教育を無償化するため、2009年度の教育予算は20%増額されました。しかしながら、学校の出席率の低下が懸念されています。 しかし、先の補助金によって、各学校は、不足する教員数を補うためにアルバイト教員を確保したり、子どもたちに教科書や制服などの学用品を提供することができます。補助金を受け取るコミュニティには、コミュニティをあげて、子どもたちの就学率や出席率が保たれるよう努力することが合わせて求められます。 「輸出産業の急速な低迷と商品価格の下落が続き、インドネシア経済を過去10年で最も悪い状況に追い込んでいます。だからこそ、こうしたセーフティネットがさらに拡充され、インドネシアの他の地域にも広げられなければなりません。」と、政府関係者は語ります。 |