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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

イラク難民の受け入れ基準を強化したシリア政府に対し ユニセフなど、人道的配慮を要請

 【2007年2月21日 ニューヨーク発】

© UNICEF Syria/2006/Al Azmeh

シリアが隣国イラクからの難民に対する受け入れ(入国許可)基準を厳しくしたことを受け、ユニセフをはじめとする人道支援団体は、シリア政府に対し、人道的観点から特例の適用を求めています。

イラク国内で依然として続く武力衝突。すでに約400万人が住みなれた家を追われ、200万を超える人々が、避難の地を求め、隣国のシリア、ヨルダン、レバノン、トルコ、イランなどへ逃れています。

シリアのイラク難民は、70万人以上(シリア政府発表では100万人以上)と推定されています。

シリア政府 難民受け入れ基準を強化

© UNICEF Syria/2006/Al Azmeh

ユニセフ シリア事務所代表アニス・サレムは、イラク難民のシリアへの流入は2003年にはじまり、特にこの1年は、その数が激増していると伝えてきています。

「シリアに逃れてきた人々は、既に、イラクから持ち出した『蓄え』を使い果たしています。結果、イラク難民の流入が、シリアの人々と限られた労働市場を奪いあう状況が生まれ、イラク難民による窃盗や売春も発生し始めています。こうした出来事が次々とシリアの新聞紙面を飾り、シリアの人々の間に、イラク難民に対する懸念や敵意が広がっています。」

サレム代表は、今回の受け入れ基準強化の背景には、そもそも国際社会が連携して対処すべき難民問題に、シリア政府が、その責任(対応)を全て負わされていると感じていることを指摘しています。

パレスチナ難民問題の再燃

シリアは、極最近までイラク難民の受け入れに積極的で、国境でも、簡単な手続きだけで、更新可能な3ヶ月の定住許可証を発行していました。現在は、今回の受け入れ基準強化に伴い、原則として15日間の定住許可証を発行し、再発行(更新)には、1ヶ月以上シリア国外に滞在することを条件としています。しかしながら、シリアの隣国も、同じような問題を抱えているため、シリアから追い出されたイラク難民を1ヶ月以上受け入れる国が無いのが現状です。

最近中東地域を訪れたUNHCR(国連難民高等弁務官)のアントニオ・グテーレス氏は、シリアを含めたイラク周辺諸国で発生しているイラク難民問題を、1948年のイスラエル建国時に起きたパレスチナ人の大移動以来となる、中東における大規模な危機が発生していると指摘しています。

1948年の危機以降、イラクに安住の地を見つけたパレスチナ人の多くが、今再び住む場所を追われているのです。これまでに、約2万人のパレスチナ人がイラク国外へ逃れましたが、1万5,000人前後は現在もイラク国内に留まり、その多くが首都バクダットに住んでいます。また、イラク政府の要請を受け、UNHCRがイラク国内で保護していたパレスチナ人のうち700人程が、国籍上の問題など、複雑で不明瞭な彼らの法的立場を理由にシリアに入国できず、国境地帯で足止めされています。

求められる人道的支援

国境で足止めされているパレスチナ人は、2箇所の仮設キャンプに収容され、ユニセフ、UNHCR、国際赤十字から水や衛生、食糧、保健や教育などの支援を受けています。「先行き」が見えないままですが、今月初めには仮設テントを使った学校が開設され、ユニセフが提供した教材を使って約90人の子どもが授業を受け始めました。

サレム代表は、ユニセフをはじめとする支援団体は、シリア政府に対し、このパレスチナ人のイラク難民を、人道的な見地から特例処置として受け入れるよう要請していると伝えています。

グレーテス難民高等弁務官は、中東訪問中、この地域の難民問題について、次のようなコメントを寄せています。

「国際社会は、中東の難民問題にただただ圧倒されてしまっています。難民受入国や難民を支援する国際機関・NGOに対して、もっと多くの支援が寄せられなくてはなりません。」

ユニセフのサレム代表もこの見解を共通しています。「ユニセフは、1月29日、2007年版人道支援レポートを発表し、国際社会に、シリアでの難民支援活動に70万ドルの資金を要請しました。しかし、これに対する反応は、ほとんどと言っていいほど無いのです。」

 

注: 本記事で使用した写真2点は、2006年にシリア国内の難民キャンプなどで撮影されたもので、今回の記事に合わせて配信されたものではありません。

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