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キルギスの人々を襲う世界不況【2009年8月6日 キルギス発】 タルガナリー・ケンジェバエブさんは、毎日交通量の多い道路脇の橋に立って、誰かがその日の仕事を頼んでくれるのを待っています。もし仕事があれば、4ドル稼ぐことができます。 ほとんど毎日、約70人の男女が、ケンジェバエブさんと同じように橋の上で仕事の依頼を待っています。ここでケンジェバエブさんたちが得られる仕事は、農場や建設現場での仕事や荷物の積み下ろし作業など屋外での仕事が中心。雨の日には、そんなに仕事がありません。ケンジェバエブさんも、また彼と同じように仕事を切実に求めている数人の男性も、2-3時間後には、すっかり意気消沈してしまうことになるかも知れません。 貧困の悪循環から抜け出すために
ケンジェバエブさんは、カザフスタンの首都ビシュケクから40キほど離れたにぎやかな町で暮らしています。この町に暮らす多くの人々と同じように、4人の子どもたちを彼自身の稼ぎで育てているケンジェバエブさんは、いつも職探しのことばかり考えています。 子育てに熱心なケンジェバエブさんは、子どもたちに十分な食糧と衣服を与え、貧困の悪循環を断ち切れるように、教育を受けさせたいと考えています。しかし、ケンジェバエブさんの苦しい状況はさらに悪化しそうです。キルギスの国内経済が、世界的な不況の影響を受けているだけではありません。その影響は、ロシアなど、他の国で働いているキルギスの人々が送ってくる家族への仕送りにも及んでいるのです。 家庭を襲う不況キルギスの人口530万人のうち、推定50万人が国外に働きにでています。こうした人々が家族に送金しているお金は、ソビエト連邦の時代から、キルギスの経済を大きく支えてきました。 「送金の金額が減少し始めています。来年は、さらに減少するものと予想されています。」ユニセフ・キルギス事務所のティモシー・スキャフター代表は話します。「こうした状況は、大半が貧困地域に暮らしているキルギスの多くの人々に、重大な影響を及ぼすでしょう。」 「2007年から食糧の価格が桁外れに上がり、50パーセントも増加しました。多くの人々が食糧不足に陥っており、非常に懸念されています。」(スキャフター代表) 食べ物さえ満足に得られない人々ケンジェバエブさんは、職探しや子どもたちを食べさせることで手一杯で、世界で今何が起きているか、把握していません。 「家には夜遅く戻るので、新聞を読む時間もありません。子どもたちを食べさせることだけを考えています。もちろん、仕事がないので状況はますます厳しくなっています。仕事があれば、働きますよ。」 しかしながら、ケンジェバエブさんは、たとえどんなことがあっても、子どもたちを学校に通わせるつもりだと話します。ケンジェバエブさんが一番心配しているのは、子どもたちが十分食べることができなくなっていることと、食べたものから、充分な栄養が取ることができなくなっているのではないかということです。 「多くの家庭が、食べものを買うことすら難しい状況に陥っています。私の家よりも暮らしに困窮している人々がいるのです。少なくとも私たちには、食べ物を貸してくれる人たちがいます。小麦粉を一袋といったように食材を借りておいて、収入が得られたら代金を支払うことができます。でも、こうしたことをできない人もいるんです。」 子どもたちの健康を保つために
「子どもの権利条約」は、全ての子どもたちが栄養のある食事を摂る権利があることを定めています。 子どもの権利条約の精神のもと、ユニセフは、キルギス政府と共に、ケンジェバエブさんのような親の栄養面の懸念に応えるために新たな法律を導入すべく活動しています。年内に、新たな法律が制定され、キルギスで売られている全てのパン用の小麦粉は、鉄分、ビタミンや他の必要な微量栄養素が強化されることになっています。これにより、子どもの心身の健康的な発達が促進されるでしょう。 ユニセフのスキャフター代表は、「食糧価格の高騰によって、人々はより多くのパンを食べるようになっています。このパンには、重要な微量栄養素が添加されるようになります。」 |