遊牧の民 定住地で切り開く新生活
<マリ>
バマコに向けてコートジボワールのアビジャンを飛び立った機内は、故郷に戻るマリの人々で満席でした。ほとんどの人のひざや上の棚には、アビジャンに出稼ぎをして購入した家庭用品、電気製品などが目いっぱい積まれています。機体が傾いた時、数列前の女性の頭になべがガラガラと落ちてくるのが見えます。
西アフリカのマリはサハラ砂漠の南縁に位置し、水と緑の豊かなアジアとは対照的な乾燥した地域にあります。サハラ砂漠は南へと拡大を続け、かつては黄金の都と呼ばれた北部の古都トンブクツーも、郊外の小高い砂丘からみると砂に埋もれているように見えます。
サハラの砂に追われるように、遊牧民が残ったわずかなラクダと共に南へ南へと移動しています。遊牧の民は水と草木を求め、ラクダや牛や羊を連れて、過酷な乾燥の世界を何世紀にもわたって生き抜いてきた人々です。その自然との共存も限界を超え、遊牧民は南の都市へ流入するか、定住して農耕を始めるか、避難民キャンプで暮らすしかなくなってきました。
しかし、何世代も引き継がれてきた遊牧生活から離れ、生存と日常生活と伝統を共にしてきた家族の一員ともいうべき家畜を失った遊牧の民が、新しい生活を始めるのは容易なことではありません。技術も手持ちの資金もなく都市難民となったり、避難民キャンプで支給される食料に頼らざるをえなくなったり、農耕になじめず失敗することも多いのです。
遊牧民の農耕定住地を訪れた時、残ったラクダに乗り疾走してみせる男たち、現実の生活を守るために慣れない小麦作りに汗を流す女たちの姿がありました。そのような中、学校から聞こえてくる子どもたちの笑い声が定住地に響きわたります。柔軟な考え方と進取の気性に富む子どもたちが、遊牧の民の新しい生活と文化を切り開いていくのでしょう。
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