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マリ:メジナ虫病の根絶に向けた取り組み【2010年10月4日 マリ発】
ひどい痛みを伴う寄生虫性疾患、メジナ虫病が、マリの北部で流行しています。汚染された水を介して感染するこの病気は、安全な飲料水の確保や改善された衛生的施設(トイレ)の設置、適切な衛生習慣の普及に多くの課題を残すマリで、課題となっている問題のひとつです。 世界中の多くの地域で、飲み水用の水源として、淀んだ水溜りや池が利用されています。そうした水の中には、メジナ虫の幼虫を取り込んだ小さな水生のミジンコが生息していて、人がこのミジンコ入りの水を飲むことで、メジナ虫病に感染しているのです。 人の体内に入ったメジナ虫の幼虫は、1年ほどで、体長1メートルにも達する成虫に成長します。メジナ虫病の患者は、痛みを鎮めるためによく水を利用していますが、その際、人の身体の中にいるメジナ虫の成虫も、その水場に何千匹もの幼虫を放出します。こうして、悪循環が繰り返されてしまうのです。 ユニセフは、さまざまな団体と協力して、マリの全域で、メジナ虫病の根絶を目差し、水と衛生分野での取り組みを進めています。このプロジェクトは、この国で、水と衛生分野と子どもの保健分野におけるミレニアム開発目標の達成を推し進める、代表的な活動のひとつです。 世界中で貧困を削減するために様々な目標を設定したミレニアム開発目標は、2015年までに安全な飲料水と基礎的な衛生設備(トイレ)を継続的に利用できない人の割合を半分に減らすという具体的目標を掲げています。 感染予防に向けた取り組み「一人がメジナ虫病に感染すると、その患者から、200〜300人に感染が広まる可能性があります。」「例えば、家庭で水汲みの役割を任されている子どもがメジナ虫に感染した場合、その子が感染を広めてしまうことは確実です。」 北部ガオ地方で、地域の保健行政に携るアマドウン・ディクコさんはこう話しました。 メジナ虫病の治療法は、成虫を体内から除去することです。皮膚の下にできた水泡から皮膚を破って外に出さなければならないので、痛みが何週間も続くこともあります。外に出てきたメジナ虫は、少しずつ棒に巻き取られて取り除かれ、傷口には、感染を予防するため包帯が巻かれます。 1992年、マリ全域の1,000以上の村で、1万6000件以上のメジナ虫病の症例が確認されました。こうした状況を受けて、ユニセフや、地元NGO,世界保健機関(WHO)などの支援を受け、マリ政府は、全国メジナ虫根絶プログタムをスタートさせました。この結果、感染者数は、2009年までに200人未満に減少。発生地域も、北部の52の村だけになりました。 「主な問題は、北部の地域にあります。」「ガオ、トンブクトゥ、キダル各地方での根絶は、課題が山積みです。これらの地域での治安上の問題や、地下水の不足が、根絶プログラムの完全実施を難しくしているのです。」メジナ虫根絶プログラを取りまとめているガブリエル・ギンド医師はこのように話しました。 3つの戦略
メジナ虫病の根絶に向けた取り組みは、現在、3つの戦略に基づいて展開されています。まずスタートしたのは、池や溜まった水の利用には、ろ過フィルター使用を促す広報キャンペーン。フィルターが無くても、布でこせば、家庭でもメジナ虫を予防することができます。 次に、感染拡大を防ぐため、感染した患者は、一時的に水源のある場所から離れた場所にあるセンターに隔離され、治療を受けます。患者には、自ら進んで家族と離された場所で治療を受けてもらえるよう、1日約4ドルの奨励金が支給されています。 そして、ユニセフ・マリ事務所は、地元NGOと共に、汚染している可能性のある水源の利用を防ぐため、利用できる井戸の数を増やし、必要不可欠な安全な飲料水へのアクセスを確保するべく活動しています。 こうした活動や、人々の行動パターンや習慣を変えるための様々な支援活動を通じ、ユニセフは、パートナー団体と協力して、今後2年間のうちに、メジナ虫病を完全に根絶したいと考えています。 |