遊牧民のために“動く教室”
<モンゴル>
モンゴルの首都ウランバートルの西約85キロに位置するアルガラン村。その中心部から少し離れた大草原の中にポツンと木造コンテナのような荷車が置かれています。一見、ただの荷車のように見えますが、実はタイヤのついた「動く教室」。正規の学校へ通うことのできない遊牧民の子どもたちに「学校外教育」の機会を与えているのです。
ゲルといわれるテント式住居に暮らしながら、自由に移動して暮らすモンゴルの遊牧民。その子どもたちの多くは、義務教育年齢とされる8歳から15歳の間、寄宿舎に入って学校に通ってきました。しかし、ソ連邦解体以降の経済・社会の混乱により、この寄宿舎制度も部分的に崩れてきています。
寄宿舎が有料になり、インフレにより教育費の負担が増加。家畜の私有化により、家畜の世話に子どもの労働力が必要となってきました。このようなことから、途中で学校をやめる遊牧民の子どもたちが増えているのです。そこで生み出されたのが、正規の学校以外の「学校外教育」です。
アルガラン村の草原の「動く教室」に入ると、教室の中には7歳から14歳の11人の子どもたちが勉強しています。机の上には教科書と鉛筆、前方の机はカセットテープレコーダー。全面に小さな黒板が置いてあります。ここで子どもたちは家畜の世話の合間に2時間、国語や算数、生活技術を学びます。カリキュラムのしっかりした正規の学校に比べて子どもたちの年齢差や少ない授業時間など課題もある学校外教育ですが、教育の機会を子どもたちに与える意義は大きいのです。これまでに133人の子どもたちがここで学校外教育を受け、現在も53人の生徒が通っています。
この動く教室がユニークなのは遊牧民の移動にあわせて移動すること。遊牧民がゲルをたたんで動いていくと、そのあとを一緒にゴトゴトついていきます。まさに「動く教室」です。
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