<2001年7月16日>
栄養不良がまん延 母親も勉強
<モザンビーク>
お母さんの腕の中でアウグストはぐったりとしています。目は落ち込み、おなかだけが膨れ上がり、足はとても弱々しく体を支えられそうにもありません。何かを求めるようにお母さんの顔を見つめる疲れきった表情はまるで老人のようです。「何でこんなことになったのか分からないんです。毎日わたしが食べるものをアウグストに食べさせているのに」。23歳のお母さん、アデリアは途方に暮れた様子で言います。
アデリアとアウグストの住むモザンビークは、今年2月の洪水によって大きな被害に遭いました。10万人以上の人々は家を追われ、そのうち2万2千人は5歳未満の子どもでした。何万人もの避難民が身を寄せるチハケラネキャンプの栄養センターでは、アウグストのような重度の栄養不良の子どもたちが80人近くおり、センターがオープンした最初の一週間で、5人の子どもが栄養不良のために命を落としたといいます。
洪水が起こった時、アデリアの家族は高台にある学校へ避難し、水が引くまで1週間そこでじっとしていました。「最初のうちは洪水の水を飲んでしのぎました。食べ物は全く持っていませんでしたから、水に浸かっていたトウモロコシを見つけだして食べたり、おぼれて死んだ鶏やヤギを食べたりしたんです」
やがてアデリアはアウグストの様子がおかしいのに気付きました。何回かヘルスセンターへ連れていきましたが、アウグストはどんどん弱っていくだけ。そこでヘルスセンターの看護婦さんはアウグストを栄養センターへ行かせることにしました。
栄養センターでは、ユニセフから支給されたミルク、油、砂糖を慎重に測り、昼も夜も3時間ごとにアウグストに与えるようにしました。抗生物質やビタミンを与えたり、寄生虫の治療も行われました。そしてアウグストが回復してきたら、おかゆを食べさせるようにしていったのです。
栄養不良の原因は食べ物がないことだけではありません。食べ物の採り方が間違っているために栄養不良を引き起こすこともあるのです。そこでユニセフは、栄養に関する知識をお母さんたちに学んでもらうためのクラスを支援しています。そこではピーナツや卵、砂糖などを使っておかゆを作ったり、豆を使ってスープを作る、といったように、身近にある食べ物でバランスのとれた食事を作る方法も教えています。
しかし、食べ物が全部洪水に流されてしまった今では、せっかくの知識を生かすことも難しくなっています。人々が以前の生活を取り戻すまで、しばらくの間は緊急支援に頼らざるを得ないのです。
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