届け、子どもたちの願い 〜第1回子ども国会開催〜
<モザンビーク>
2001年10月20日、マプト
ホセ・パウロ・デ・アラウホ
今年9月5日〜6日に開かれた議会は一風変わっていました。国の徽章の上には色とりどりの風船が漂い、前列に座る議員達はTシャツに野球帽、そしてスカーフを首にまき、中にはサンダルを履いている人もいます。彼らが持っている書類かばんは、花柄の布製です。中でも、本来の国会と一番違っているのは、この2日間の議会を取り仕切った人びとです。議長を務めた14歳のスゼテ・ロレイロさんは、スピーチが長くなりすぎるとそれを止め、また、みんなで元気に歌をうたうようグループ全体をひっぱりました。
これは、第1回モザンビーク子ども国会のようすです。モザンビークの11州および政治家や国際機関職員を代表して総勢100人の子どもたち(内57人が女の子)がこの子ども国会に集いました。首都、マプトのジョシナ・マシェル中学校の講堂で開かれたセレモニーは、モザンビークテレビ、ラジオ局を通して全国に放送され、手話による中継放送も行われました。
参加者は、政府と共和国国会に向けての具体的な提案について話し合いました。
第一回モザンビーク子ども国会は、国の子どもたちを代表する全体的な活動の新たな舞台です。この動きは、21万2000の署名(内17万人は18歳以下)を集めた"Say
Yes for Children"キャンペーンから始まりました。全国で実施されたこのキャンペーンは、ユニセフが支援し、11のNGO(非政府機関)と4つの省庁が直接関わりました。
一番署名の多かったテーマは、「エイズ/HIVとのたたかい」、「子どもを守る」、「子どもの教育」の3つでした。これらは、まず各州ごとに行われた子ども議会で話し合われました。そして、これらの州議会で提案されたことが、国会に提出されました。
ユニセフ・モザンビーク代表 マリ・ピエール・ポワリエ氏は、子どもたちが選んだテーマについて、次のように話しました。「ユニセフは、政府や国民のみなさんと一緒に、今後の5年間にわたるプログラムの計画を立てようと手がけてきました。そして、その中で私達が優先課題としたものを知っていますか?それは、みなさんが選んだものと同じ、『エイズ/HIVとのたたかい』、『子どもを守る』と、『子どもの教育』の3つなのです」
共和国国会の議長、エドゥアルド・ムレンブエ氏は興奮をかくしきれないようすで、「私達の未来は今日から始まります。私達がこの国をつくりあげていくために、お互いの意見を聞き入れられることを望みます。」と、強調しました。
子ども国会の議長をつとめ、ザンベジアのクエリマネ市代表のスゼテ・ロレイロさん(14歳)は、「私はおとなの方々に、私たちの提案を受け入れ、信頼してほしいと思います。提案は本当によいものですし、問題を解決するための私たち自身の考えです。この子ども国会は、参加者だけでなく、国のすべての人の考えを変えるでしょう。なぜなら、参加しなかった人も、これに参加してみたい、私たちの生活がよくなっていくようすを見てみたいと思うでしょうから」と、加えました。
この子ども州議会の後、ソファラ州議会ドンド地区代表のティトゥス・ラウル・ナエメ君は、子ども国会の州代表として選ばれました。貧しい家庭で育ったティトゥス君は、教育がかぎだ、と考え「教育は正しく義務を果たす上でも必要なこと」と、述べました。ティトゥス君はユニセフが支援する、子どもによる子どものためのラジオ番組にも参加しています。このラジオ番組は、ベイラにあるミラマ-ルラジオ局から毎週土曜日に放送されています。彼は、教育の大切さを主なメッセージとして放送しています。
スゼテさんは、これから経済を勉強することに決め、いつかモザンビーク共和国国会の議長になりたいと思っています。
ポルトガルの植民地時代に、初めての中学校の卒業生となった黒人生徒は、ジョシナ・マシェル、後のサラザール高等学校で勉強しました。その生徒達とは、まさに、後の首相パスコール・モクンビ、そして、モザンビーク大統領 ホアキン・アルベルト・キッサーノだったのです。
<子ども国会が決議したこと >
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子どもの人権尊重を法の中心におく。
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政府は、未成年者がおとな向けの歓楽街等に行かないように、監督できる仕組みをつくる。
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政府は、未成年者用の裁判所、そして社会復帰センターを拡充する努力をする。
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政府そして市民社会全体が子どもの人権、子どもの教育、健康、貧困撲滅の必要性を国内計画として実施する。
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政府は、積極的に学校や病院を建て、すべての子どもたちが"子どもの権利"を享受できるようにする。
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政府は学校教員の質を向上させる。
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教科書がきちんと間に合って生徒の手元に届くようにする。
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政府は、無料の質の高い教育について基準を明確にする。
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政府は、貧しい子どもたちが勉強できるように、特別な手段を講じる。
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政府は、学校の食堂でのタバコ、お酒の販売を禁止する。
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政府は、子どもの遊び場をつくる。
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政府と社会全体で、子ども図書館を開く。
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政府と社会全体で、子どものための休暇を過ごせるキャンプをつくる。
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政府は、エイズ/HIV感染防止対策を優先事項とする事業を拡大する。
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政府は、エイズ/HIVに苦しむ親をもつ子どもを保護することを保証する。
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政府と社会全体で、買春を防ぐために大人向けの講義を行う。
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政府は、年齢にしたがったエイズ/HIVの予防事業をおこなう。
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政府は、子どもの健やかな成長を保障する基本的な条件として、貧困を撲滅するための努力を行う。
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