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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

マラリアと栄養不良から子どもを守ろう
<ニジェール>

ニジェールの子どもたちをマラリアから救う

ニアメー、2001年10月9日(ユニセフ)
キャラ・フェイズ

ニジェールでは、子どもの病気と死亡の最大の原因はマラリアです。とくに5歳未満の子どもがかかる病気の4割はマラリアで、死因もマラリアが半数近くを占めています。この国では、年齢に関係なく毎日国民17人がマラリアで亡くなっているのです。これほど蔓延しているマラリアですが、実は蚊帳を正しく使えば効果的に予防ができ、また早めに治療すれば治る病気です。ユニセフがニジェールで行なっている支援活動によって、マラリアにかかった多くの子どもや妊婦が救われており、多くの人がこの恐ろしい病気に感染せずにすんでいます。

最近、ニジェールの首都ニアメーにあるラモルデ国立病院では、マラリア薬が底を尽いたところでしたが、ユニセフによってすぐに補給が行なわれました。今回の薬品提供で生命が助かったひとりに、13歳のイスマイルがいます。彼は2日間高熱に苦しんだあげく、この病院に運ばれてきました。12人の患者が詰めこまれた小さい病室で、イスマイルはほんの数日前に危機を脱したばかりでした。防虫処理をほどこした蚊帳を使えば、マラリアにかかる危険は減るのですが、イスマイルはそのネットを毎晩使っているわけではありませんでした。彼の父親は、これからは息子をちゃんと蚊帳のなかで寝かせ、病気にならないように注意すると話していました。

4歳のサラモウも、熱と吐き気が続いてマラリアと診断されました。サラモウはベッドに横たわり、2回目の投薬を待っています。かたわらでは、やはり病気の赤ん坊をあやしながら、母親が付き添っています。サラモウが病院に連れてこられたとき、体重に対して正確に薬の量を測る計器がこわれていました。そのため医師は薬を投与しすぎることを恐れ、大事をとって、少ない量の薬を与えてみましたが、これでは熱が下がりませんでした。サラモウの家は貧しいので、病院ではユニセフが提供した薬を使って、2回目の投薬を行うことにしたのです。

6歳のマリアマはニアメーに住んでいて、ふだんは蚊帳を使っています。しかし親戚たちと数日間郊外の親せきのところへ遊びに行き、そこには蚊帳がなかったために、マラリアにかかってしまいました。熱を出して病院にやってきたマリアマは、検査を受けて病気が確認された後に、治療を受け始めました。

ユニセフでは、防虫処理をした蚊帳を使う利点を各家庭に知らせるとともに、貧しい家庭でも手に入る値段でネットを販売できるようしています。こうした活動が子どもの生命を守ることにつながっています。割引価格とはいえ、人びとに自費で蚊帳を買ってもらうのには理由があります。"はじめから根本的な予防策に収入の一部を割いておけば、この先かかる費用を節約でき、生命の危険も避けることができる"この考えを広め、長期的に持続可能な活動を実現することが、ユニセフのねらいです。またユニセフでは、マラリア薬をニジェール全土の病院や保健センターに配布し、マラリアと診断された子どもには初回の緊急投薬を無料で受けられるようにしています。ユニセフ国内委員会や一般の個人から寄せられる募金が、この活動を可能にしています。

栄養不良で危機にさらされるニジェールの子どもたち

ニアメー、2001年10月9日(ユニセフ)
キャラ・フェイズ

健康状態を調べるため体重測定を受ける子どもと、その母親。

サニは数か月前に2歳になったばかり。ふつう2歳の子なら、兄や姉たちと大騒ぎしながらそこらじゅうを駆けまわり、少しもじっとしていないものです。でもサニは家の隅でじっとして、動こうとしません。ニジェール南部のドゴン・シムグイという辺鄙な村に住むサニの家を、地元の助産婦が訪ねました。サニは、どんないたずらをしようか考えたり、母親の注意を惹こうとしたりするでもなく、熱っぽい身体でだるそうにしています。しかし母親は、家の掃除や食事作りに忙しく、サニに付き添っていません。どの村でもそうですが、助産婦は年長で村人の尊敬を集めており、指導者のような役割を果たしています。サニが病気ではないかと疑った彼女は、この子はどうしたのかと母親にたずねました。すると母親は、この子は祖父に似て引っ込み思案なだけだと説明します。けれども、2歳の男の子がこれほど長い時間じっとしているのは、ふつうではありません。納得できない助産婦は、村の保健センターにサニを連れて行って診察を受けるよう勧めました。母親は忙しいからとしぶっていましたが、翌日保健センターに連れていくことを約束しました。

保健センターの看護婦たちは、サニの体重や身長をはかって、すぐに病気だと察知しました。サニの体重は身長の割にかなり軽く、急性の栄養不良に陥っていいるようでした。しかし、サニの家はとくに食べ物に困っているわけではないのに、どうしてそんなことになってしまったのでしょう。両親は時折食べ物の調達に苦労することがあっても、何とか工面して子どもたちに充分な食事を与えています。とくに今年は、これまでにくらべても良かったほうです。保健センターの看護婦は、サニの母親にたくさんのことをたずねました。すると、サニは3週間前に寄生虫にやられ、下痢が続いていたことがわかりました。原因は、料理に火が完全に通っていなかったか不衛生な食べ物を食べたため、あるいは汚染された水を飲んだためと思われました。

看護婦はサニに虫下しを飲ませました。そして母親に、栄養補給を行なうので、毎日サニをセンターに連れてくるよう指示しました。集中的な治療を行なわないと、サニは健康を取り戻すことができません。看護婦はまた、サニのために栄養のある食事の作り方を指導しました。穀類や野菜を、油・全乳・砂糖で調理するのです—これでサニに栄養をつけることができます。いろいろ教わった母親は、サニを家に連れて帰り、看護婦の指示を守りました。サニは毎日保健センターで栄養補給も受け、週に1度体重を測りました。こうして4週間後、サニの調子は見違えるように良くなり、もう保健センターで栄養補給を受ける必要はなくなりました。体重も2歳児の標準にまで回復しています。再び深刻な栄養不良を招く病気にならないよう、サニの母親も勉強しました。それには正しく調理した穀類と野菜、それに清潔な水が欠かせないのです。

ニジェールでは子どもの5人に2人が慢性的な栄養不良
サニのような子どもはニジェールでは珍しくありません。この国では、5歳未満の子どもの10人に1人以上が、急性の栄養不良(消耗症)に陥っています。収穫が乏しい時期に食べ物が不足したり、農作業で忙しい母親が子どもの世話を充分にできないことが原因ですが、サニのように寄生虫感染が原因になったり、ニジェールで幼い子どもがかかりやすい数々の病気がきっかけになることもあります。5歳未満、なかでも3歳に達しない子どもは体力がなく、消耗症になりやすいのです。幸い、適切な時期に正しい治療を受けさえすれば、治療効果はすぐにあがります。急性の栄養不良は、始まるのも速ければ、治るのも速いのです。

しかし、ニジェールでより深刻なのは慢性の栄養不良です。5歳未満の子どもの5人に2人は慢性の栄養不良状態で、身長に対する体重の割合を調べると、発育不全に陥っていることがわかります。そのうち約半数は、かなり深刻な発育不全の状態にあります。この状態を改善するのは困難で、栄養補給を何か月も続けないと子どもは健康を取り戻せません。

最近、栄養不良の子どもの数は減るどころか増える傾向にあります。5歳未満の子ども発育不全の割合は、9年前には32%だったのが現在は40%にまで達しています。しかし栄養不良は、食べ物の不足だけが原因というわけではなくもっと複雑なものです。確かに食料不足は直接の原因になりますが、子どもが病気になったとき、衛生と食事の両面で正しく世話をする方法が理解されていないことも問題です。たとえば子どもが下痢になったとき、親は水分を補給するどころか、食事も水分も与えるのをやめてしまいます。そうすると子どもはすぐに深刻な栄養不足に陥ります。子どもが栄養不良になるかどうかは、親の教育レベルが明らかに関係しているのです。教育を受けていない母親の子どもは、中学校まで行った母親の子どもにくらべて、2倍も栄養不良になりやすくなっています。

ユニセフは、全国微少栄養素補給の日(National Micronutrient Days 以下NMD)を支援することで、ニジェールの栄養不良の問題に取り組んできました。また保健センターが正常に機能し、適切な治療と親への教育を行えるよう支援しています。NMDは、全国予防接種の日(National Immunization Days)に合わせて6か月ごとに設定されています。この期間には、保健担当者が各家庭を回り、家族に直接働きかけます。5歳未満の子どもにはビタミンAの錠剤が、また、妊婦には、母体の健康を保ち、胎児の健全な成長を促す鉄分の錠剤が配られます。定期的に繰り返しNMDを実施することで、これまで機会のなかった子どもたちにもビタミンが行き渡り、子どもの健康について親の意識を向上させることもできます。

ユニセフはまた、各地の保健センターに、子どもの身長と体重を測定し、栄養不良の子どもにケアを与えるための器材を提供しています。地域の保健センターは、病気になった子どもが最初に連れてこられるところなので、保健センターの円滑な機能を維持することは栄養不良の問題、中でもニジェールで深刻になっている急性の栄養不良に対処する上でとても大切です。ユニセフの支援によって、保健センターは病気の子どもを治療するだけでなく、適切な食べ物の調理の仕方や健康を維持する方法など、ど栄養不良に対抗するための方法を親に教育する役目も果たしています。

栄養状態の改善をめざすユニセフは、正しい母乳育児の知識を母親に広める活動も行なっています。ニジェールではほとんどの母親が赤ん坊に母乳を飲ませていますが、早い時期からほかの食べ物も与えてしまうため、母乳の良さが生かされていません。赤ん坊は生後わずか3日目で、砂糖を入れた薄いお茶を飲まされます。それは、暑い気候では赤ん坊にたくさん水分が必要だと母親が考えるからです。ユニセフは教育キャンペーンを実施して、生後6か月までは母乳だけを与え、その後少しずつほかの食べ物を与えていくように指導しています。

またユニセフは、村全体で子どもたちの成長を見守る地域活動も支援しています。村に商店や穀物貯蔵庫を作り、いろいろな種類の食べ物を手に入れやすくしたり、豆類、穀類、野菜、その他ビタミンAが豊富な作物の種を配布したり、母親の労働負担を軽くするために、村に製粉所を作ったり、といった試みが中心です。またユニセフは、コミュニティが実施する"AAAプラン"を支援しています。これは評価(Assessment)、分析(Analysis)、行動(Action)の頭文字をとったもので、地域が直面する各種の問題に対して意識を高め、その対策に優先順位をつけて、解決策を探るというものです。その村だけでは解決できない場合は、地方の当局に援助を要請します。ニジェール各地の村では、栄養不良もっとも差し迫った問題なので、AAAプランでもこの課題に取り組むよう後押ししています。

このようにいくつもの部門が、異なる角度から栄養不良の問題を解決すべく活動しており、近い将来ニジェールの子どもたちの栄養不良は改善されるでしょう。しかしこれは長期的な努力が求められる問題であり、ユニセフは、サニのような子どもが生死の危機に直面しなくてすむ日が来るまで、これからも活動を継続していく方針です。

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