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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

ニジェール:質の高い治療が、マリから避難した子どもの命を救う


【2013年3月12日 ニジェール発】

© UNICEF Niger/2013/Therrien
マリアマ・サドウさんとオウダちゃん、アダモウちゃん、ハワちゃんの3人の子どもたち(マンガイゼ難民キャンプの給食センターにて)。オウダちゃんは重度の栄養不良と診断され、難民キャンプ近くの病院へ治療を受けに行くことになった

4週間前、マリアマ・サドウさんと3人の幼い子どもたちは、マリでの暴力の影響を逃れるため、焼け付く太陽の下、ロバを引きながら、11日間かけて徒歩で国境を越え、隣国ニジェールへ避難してきました。

サドウさん家族は、ニジェールに設置されている3つの公式の避難キャンプ地のひとつ、マンガイゼ難民キャンプで避難生活を送っています。非公式のものも含め、ニジェール国内に6箇所ある避難所には、マリから5万人の難民が避難しています。

マリからニジェールまでの長く危険な旅を強いられ、サドウさんと子どもたちは疲弊しきっていました。しかし、オウダちゃん(1歳)は、さらに危険な状態だったのです。

栄養不良の検査

「オウダちゃんが病気になってから、もう25日になります」「お母さんがオウダちゃんに食事を与えようとしても、オウダちゃんは嘔吐し続けています。毎晩熱が出ていました」「ここまでの旅の途中には、1日に1度、僅かな小麦とオイルで作ったパンを食べていただけのようでした」。サドウさん家族と同じく、マンガイゼ難民キャンプで難民として暮らすある女性が、サドウさんに代わってこう話してくれました。

サドウさんは、キャンプ地内に設置された、ユニセフが支援している給食センターにオウダちゃんを連れていきました。このセンターでは、全ての子どもに栄養不良の検診を行い、1日3回栄養豊富な食事を提供しています。栄養不良の検診は、月に1度、キャンプ地内に3箇所設置されている全ての給食センターで実施されています。

しかし、オウダちゃんは、食べることを嫌がっていました。

栄養の専門家がオウダちゃんの左手の上腕を測定。オウダちゃんは、重度の急性栄養不良で苦しんでいることが分かりました。オウダちゃんは、精密検査と治療を受けるために、すぐにキャンプ地近くの保健センターに搬送されることになりました。

多くの子どもが栄養不良に

© UNICEF Niger/2013/Therrien
ニジェールのオウアラム地区病院へ向かうサドウさんとオウダちゃん。マリ北部のメナカから避難を余儀なくされてから、オウダちゃんの体調は悪化した

保健センターでは、看護師がオウダちゃんの体重と身長の割合から容態を確認。オウダちゃんの身長に相当する標準体重は7.1キロですが、彼女の体重はわずか5.8キロしかありませんでした。また、自分では物を食べられないことも確認されました。

さらに、下痢性疾患にも陥っていました。

「オウダちゃんは、重度の栄養不良で合併症も併発しています」こう話すのは、マンガイゼ保健センターのイッスフォウ・ボウバイ医師です。「集中的な治療が必要です。栄養治療食だけでは、完治することはないでしょう」

オウダちゃんは、特別なわけではありません。難民キャンプに暮らす多くの子どもたちが重度の栄養不良で苦しんでいるのです。「今年1月の1ヵ月間に確認された101人の重度の栄養不良の子どものうち、47人が難民の子でした」(ボウバイ医師)

集中栄養治療リハビリテーションセンター

栄養不良に苦しむ難民の子どもの多くは、週に1度、保健センターの外来を受診して、栄養治療食の提供を受け、体重測定や状態を確認する治療を受けています。

しかし、オウダちゃんのように合併症を伴う子どもの場合、集中栄養治療リハビリテーションセンター(CRENI)で治療を受ける必要があります。

この集中栄養治療リハビリテーションセンターは、マンガイゼ難民キャンプから45キロ離れた場所に位置しています。サドウさんは、着替えやビニールマット、毛布などをかばんに詰め、救急車に乗り、オウアラム地区病院まで1時間かけて向かいました。医療スタッフは、オウダちゃんの容態をフェーズ1と診断。オウダちゃんは、治療のために栄養治療リハビリテーション病棟に入院することになりました。

オウアラム地区病院の集中栄養治療リハビリテーションセンターのチーフ、ヒミン・ボウバカル医師は、オウダちゃんの容態を悲観的に捉えてはいないようでした。「彼女は回復するでしょう。神のご意思により、短期間のうちに」

実際、オウダちゃんは回復に向かっています。治療も山場を越え、次の段階へ移行し始めました。オウダちゃんは、すぐに口にできる栄養治療食を処方され、体重は増加し続けています。

オウダちゃんのように多くの難民の子どもが、難民を受け入れている国で緊急の保健ケアを受けています。ニジェールは、栄養不良率が世界で最も高い国のひとつ。今年だけでも、重度の栄養不良で治療が必要になるニジェールの5歳未満児の数は、29万人近くに上ると予想されています。

マンガイゼ難民キャンプで、ユニセフは、パートナー団体と共に、子どもたちのための栄養豊富な暖かい食事やお粥などの給食を提供。また、栄養不良児を確認するための定期健診や、治療のほかに、母親を対象に子ども向けの適切な食事や正しい衛生習慣についての啓発活動も実施しています。

ユニセフは、子どもたちの栄養不良を予防し、治療を施し、増え続けている難民の患者に対応するため、集中栄養治療リハビリセンターや保健センターの対応能力を強化しています。

しかしながら、必要とされている医薬品、栄養治療食、そのほかの命を守る支援物資を届けるためには、さらなる資金が求められています。ユニセフは、ニジェールの厳しい立場に置かれている子どもたちを守るために、国際社会に対し、あらゆる手段を講じ、取り組みを強化するよう求めています。

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