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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パキスタン:洪水後、ユニセフの臨時学習センターが教育の機会を提供

【2012年3月15日 パキスタン発】

© UNICEF Pakistan/2010/Ramoneda

パキスタンのスックルにある、洪水により避難を余儀なくされた人々のための避難キャンプ地で、ワクチンの接種を受ける子ども。

パキスタンのシンド州・ナウコットの道沿いに、ボロボロの避難テントが並んでいます。この多くは、プラスチックのシートがかぶさっただけの簡易なもので、おとなひとりがやっと立てるほどの大きさしかありません。現在、ルクスミちゃん(10歳)とその家族にとって、このテントが家代わりとなっています。

去年の夏、パキスタンのこの地域を激しいモンスーンが襲い、ルクスミちゃん一家が暮らしていた小さな家も破壊されました。残ったのは、ほんの少しの所持品と唯一の家具となった縄で作られたベッドだけです。その日から、ルクスミちゃんとお父さん、お母さん、そして4人のきょうだいはこのテントで生活しているのです。

不確かな未来

© UNICEF Pakistan/2012/Chaudhry

ルクスミちゃん(10歳)は、両親が働きに出ている間、弟の面倒を見ている。(パキスタン、ナウコット)

ここは、快適な避難場所とはいえません。砂漠風が、プラスチックのシートの間を勢いよく吹き抜け、ルクスミちゃんは、埃まみれになって目覚めることもしばしばあり、一番下の弟は、身を切るような寒さのせいで毎晩泣いています。

こうした厳しい状況に苦しんでいるのは、ルクスミちゃん一家だけではありません。パキスタンのシンド州とバロチスタン州を襲った深刻な洪水の影響により、510万人もの人が被災。推定79万7,000世帯が被害を受け、その41%が崩壊しました。不幸なことに、2010年の破壊的な洪水の被害をもっとも大きく受けたのは、パキスタンのなかでも特に貧しい地域だったのです。

被害を受けたほとんどの人々が、徐々に自分たちの故郷へと帰還していく中、ルクスミちゃん一家のように帰る場所を失ってしまった人々もいます。この避難テントで暮らす多くの家族が、帰還するための資金が不足しているか、もしくは水が引くのを待っている状況です。

学ぶ機会の提供

このような厳しい状況のなか、ルクスミちゃんはワクワクするような新しい機会を得ています。彼女は今、そこで癒しの時間を得ているのです。ユニセフの支援により、緊急用のテントの学校である「臨時学習センター」が設置されました。ルクスミちゃんのお兄さんのひとりは、毎日このセンターに通っています。同じく、ルクスミちゃんも通い始めました。ルクスミちゃんにとって、学校に通うのはこれが初めてのことで、以前は想像すらできないことでした。

「私、もっと勉強がしたいの。そして大きくなったら、町の女の子たちみたいに働きたい」ルクスミちゃんは続けます。「もしかしたら、先生さんになれるかもしれない。でも、難しいことは知っているわ。私、まだアルファベットと数のかぞえ方を教えてもらっただけだもの」

被災地の学校の60%が洪水の被害にあったことを受け、ユニセフは、2,070の臨時学習センターを設置。これにより、シンド州とバロチスタン州の10万人以上の子どもたちがこの恩恵を受けています。教育が中断されることのないよう、臨時学習センターは、1万6,000人の女の子を含む、生まれて初めて小学校に通う子どもたち3万9,000人以上を受け入れました。故郷へ帰国していく人々にあわせて、臨時学習センターも避難キャンプ地から移動し、子どもたちが教育を続けられるように支援しています。

臨時学習センターは、淀んだ水の使用や適切な衛生施設(トイレ)へのアクセスの欠如によって広まる病気を防ぐため、適切な衛生習慣と衛生施設(トイレ)の促進も促すことが期待されています。安全な飲料水を貯めておくため、4万5,000人以上の子どもたちが通う約500校の臨時学習センターには、貯水タンクが完備されました。また、さまざまな方法を通じて、ユニセフは150万人に公衆衛生や疾病予防の指導を提供しています。

求められる追加支援

しかし、ナウコットの避難キャンプ地では生命維持に必要な最低限の支援すら不足しているのが現状です。厳しい冬を越すために、多くの人々が苦しんでいます。ある女性は、次のように話しました。「私たちの子どもは、おなかいっぱいご飯を食べていません。夜は、寒さのせいで寝ることもできません。医療施設すらないのです。」

帰還したこの女性とその家族には、生活を立て直すための継続的な支援が必要不可欠です。帰還した多くの人々は、家を修復・修繕するための手段がなく、被災したそのままの状態で生活しています。推定98%の居住区で、管理・運営する人材が不足しています。ユニセフは、パートナーと共に、技術指導などのさらなる支援を展開していますが、そのための追加の資金が緊急に求められています。

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