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パレスチナ自治区:支援を待つ母子に届く保健ケアと予防接種【2010年12月21日 パレスチナ自治区ハブレ発】
ヨルダン川西岸で政府の支援を受けて運営されているハブレ診療所は今日も賑わいを見せています。この病院で小児科医は子どもたちを対象に予防接種を行っており、そこに並べられたベンチには母親たちが大勢座っています。彼女たちの片手には子どもが抱かれ、もう片方に健康や予防接種歴を記す「母子手帳」が握られています。 看護士のアイシャ・オデーさんは、毎日およそ75人の患者に提供される通常のケア、出産前ケア、そして小児ケアを計画し、管理しています。 「インティファーダ(民衆蜂起)の中、女性は必要な保健サービスを享受できていないと感じました。それがきっかけで私は助産師になる勉強をしたのです」と、オデーさんは話します。2000年に始まった暴動に触れつつ、「多くの女性が軍の検問所や自宅で子どもを産んでいました」と彼女は言います。 予防接種を可能にした支援
このハブレ診療所では、日本政府からの資金によって支えられている保健省の無料予防接種プログラムが実施されていて、母親たちが子どもを連れてきます。 「1994年にパレスチナ暫定自治政府が設立されて以来、ユニセフは保健省と協力し、ワクチンおよびコールドチェーンを提供しています」とパレスチナ暫定自治政府におけるユニセフの特別副代表を務めるダグラス・G・ヒギンズは述べています。 パレスチナ全域で、日本政府は予防接種プログラムを中心とした母子保健の支援において、重要な影響力を持ち続けてきました。 「パレスチナの保健分野における我々の優先事項は子どもと母親のための保健ケアです。なぜなら、安全な生活こそが社会の基盤だと私たちは信じるからです」と、橋本尚文対パレスチナ暫定自治政府日本国政府代表事務所長は語ります。 脆弱な子どもたちに届く支援を
2010年、ユニセフの支援を受け、保健省はすべてのパレスチナの子どもたちに接種するためのワクチン費用を、この10年間で初めて負担しました。「この予防接種プログラムはパレスチナ暫定自治区内において、接種率が95%を超えるなど、特筆すべき成功例となっています」とヒギンズ臨時副代表は述べます。 健康省の公衆衛生局は、全域で難民も難民でない人々もすべてを対象とした予防接種サービスの質の向上に向けた絶え間ない努力の継続に深くコミットしていると、同省の局長であるアサド・ラムラウィ博士は言います。 また、「支援の届きにくい地域に住む最も脆弱な子どもたちに対しては、移動式の診療所や、効果が実証されている昔からの伝達手段を用い、これらの地域に支援を届けます」とラムラウィ博士は説明します。「母親たちが予防接種のために子どもを診療所に連れて来るよう呼びかけるため、モスクも活用しています。」 保健サービスへのアクセス2010年には、ハブレ診療所は170もの妊娠事例を扱い、そのうち30以上がリスクの高いものでした。小さな検査室では患者に対し基本的な検査を実施しており、診療所では薬も一部処方されています。2名の看護士と一般医が毎日患者を診るほか、小児科医と皮膚科医は一週間のうち数日診察を行います。 このクリニックは、ハブレの住民のみならず近隣の村々にも開かれています。これらは、カルキリヤ等、イスラエルによってヨルダン川西岸に境界として築かれた障壁によって影響を受けている地域です。一連の壁やフェンス、防衛塔や検問所から成る分離壁は、ハーグの国際司法裁判所により2004年に違法との判断を下されています。 スブヒヤ・ハッサンさんは生後2ヵ月になる息子のハッサンちゃんがワクチン接種を受けられるよう、ハッサンちゃんを揺すってあやします。 彼女は診療所で提供されるサービスについて、「すばらしい」と賞賛しています。また、他にも4人の子どもを持つ彼女にとって、住んでいるラス・アッティエー村で週2回開かれる診療所では不十分だと言います。 「医師は週に2度、2時間ずつ来てくれますが、それ以外の時に赤ちゃんが病気になるとハブレまで来る必要があるのです。」 |