メニューをスキップ
HOME > 世界の子どもたち > ストーリーを読む
財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パレスチナ自治区:戦闘に巻き込まれる子どもと家族

【2012年11月20日 パレスチナ自治区発】

© UNICEF/NYHQ2012-1528/El Baba
ガザ南部のラファ市近くにあるシャブボラ避難所で、倒壊したい家から所持品を集める男の子。

戦闘は、子どもたちと家族に耐え難い影響を与えています。

ガザでは、空爆により子ども22名が死亡、277名が負傷しました。イスラエルでは、ロケット弾により、14名の子どもが負傷しました。死傷者数は増えると見られています。

昼夜を問わない爆音に怯え、ガザとイスラエルの子どもたちには、おねしょやフラッシュバック、悪夢にうなされ、外出やひとりになることを怖がるなど、懸念すべき心理的ストレスの徴候がみられています。

子どもを失う悲しみ
© UNICEF/NYHQ2012-1521/El Baba
ガザ中心部のアル・ブレイジ一時避難所で倒壊した自宅を通る女の子(12歳)。

ガザの農村地帯であるベイトハヌンは、空爆に襲われました。アハメッド・バシウニさんは、その晩に起きたことを話してくれました。ちょうど子どもたちを寝かしつけようとしていたところでした。15歳の娘・ディアナさんは、少しでも安心できるように毛布を頭までかぶっていました。そのすぐあと、自宅のそばで空爆が起きたのです。「子どもたちが、悲鳴を上げました。しかし、ファレスの声は聞こえませんでした。空爆の金属片が、彼を殺してしまったのです。私はすぐにファレスに毛布をかけました。とても恐ろしい光景で・・・。兄弟たちもその光景を見てしまいました。そのあと、私も絶叫しました」

9歳の息子の死を何とか受け止めようとしながらも、バシウニさんはほかの5人の子どもたちをどのように助けていいのかわからないと話します。「食事を取ることも、遊ぶことも、外に行くこともしようとしません。ただ家の中にいて、泣くばかりです」と電話で話している間も、爆撃の轟音が、電話の向こうから聞こえてきます。

ベイトハヌンのほかの家族も、子どもを亡くしました。ジャマル・ナセさんは、その晩、妻と一番幼い子どもに階段の下に寝るよう頼み、自分は4人の子どもたちと居間で寝ました。いっしょに寝ていた15歳のウダイさんは空爆の金属片が刺さり死亡、兄弟のタレクさんも負傷しました。

© UNICEF/NYHQ2012-1522/El Baba
11月19日、ガザ中心部のアル・ブレイジ一時避難所で、イスラエル軍の空爆で破壊された家屋を見る子どもたち。親も疲れ果て、子どもたちが家の外に出ないようにすることは難しく、多くの子どもたちが外に出歩き、倒壊した建物や負傷者、亡くなった人を目にすることになる。

「ウダイは、とても優秀で、医者になるのが夢でした。しかし、その夢はもうかないません。タレクは入院しています。自分も死んでしまうと言い、そんなことはないと言い聞かせても、泣き止みません。昨日、彼は家に帰りたいといいました。しかし、帰る家はなくなってしまった、と伝えることはできませんでした」とナセさんは話します。

ナセさんは、安全と思われるところはなく、どこに子どもたちを連れて行けばいいのかわからないといいます。かつてイスラエルで働いたことがあるナセさんは「この戦闘は、私の子どもたちから夢を奪った」といいます。

ガザの人口160万人の半数は、子どもたちです。

ユニセフの緊急支援下での心理社会なケアを担当する5チームは、バシウニさんとナセさんの家族の心のケアをしようとしています。しかし、この地域は危険な状態が続いていることから、まだ実施されていません。

情勢が許せば、緊急心理ケアチームは、ガザの病院と家庭を訪れ、心のケアにあたっています。ユニセフは、パートナー団体による、電話でのホットラインの開設を支援しています。電話であれば、移動が制約されても、電話で心理カウンセラーと話せます。

「幼い子どもたちにとって、今回のような出来事は安心感を持つことが困難となるようなトラウマ(心的外傷)となります。子どもたちは、何が起きているか理解できず、自分にはどうすることもできないと感じます。家族が直面している困難は、自分のせいだと思ってしまうことすらあるのです。」とユニセフ・パレスチナ自治区・子どもの保護官チーフのブルース・グラントは言います。

また、「心のケアでは、子どもたちにこのような出来事は自分たちの責任とは関係なく起こりうることで、恐怖を感じるのは当然だと伝えます。私たちは、子どもたちの心を回復させようとしていますが、安心できるという感覚を取り戻すには、長期間のプロセスが必要です」と続けて話します。

空爆の被害を直接受けていない家族も、子どもたちのことを心配しています。学校は閉鎖され、停電しています。親も疲れ果て、子どもたちが家の外に出ないようにすることはむずかしく、多くの子どもたちが外に出歩き、倒壊した建物や負傷者、亡くなった人を目にすることになるのです。

ユニセフ・パレスチナ自治区・広報官のサジャブ・エルムガニは「家でも、戦闘の音が鳴り響きます。空爆が起きてから、1歳の息子のカマルの様子が変わりました。以前はにこにことしていましたが、今はただ座り、うつろな目をしています。自分が無力に思えます」と語ります。

トップページへコーナートップへ戻る先頭に戻る