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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

パレスチナ自治区: 子どもたちの心を癒すために

【2012年11月27日 パレスチナ自治区発】

© UNICEF/NYHQ2012-1590/El Baba
パレスチナ自治区ガザ市のウム・アル・クラ学校の外に張られたポスターを見る女の子。このポスターでは、地雷や不発弾の危険性が訴えられている。

約4年ぶりに起こった本格的な武力衝突。11月21日に停戦が合意された直後、ガザ全域で学校が再開されました。しかし、目撃し体験した忘れることのできない“暴力”は、子どもたちの心に大きな傷跡を残しています。

ガザ市のウム・アル・クラ小学校では、女の子たちが、爆撃を受けた場所を不安そうに見つめながら、瓦礫やガラスが散乱したままの状態の校庭を歩いて通っています。子どもたちは、学校の再開を喜んでいます。でも、見慣れた風景が、子どもたちの心に恐怖心を掻き立ててしまっているのです。

たとえば、ある教室では、子どもたちが書いた文字が残る黒板に、爆撃で大きな穴が開いてしまいました。壁が無くなった教室もあります。隣接する内務省の建物が空爆を受けた際、その爆風で吹き飛んでしまったのです。壁が無くなったその教室からは、完全に破壊された隣の建物の向こう側の、以前は見えなかった景色が一望できます。

学校の被害

今週の武力衝突により、ガザでは、少なくとも136の学校と幼稚園が被害を受けました。この被害は、あくまで、これまで把握されたものに限られているため、この数は、今後さらに増えるものと予想されています。

ガザの人口は、約160万人。その半数は子どもたちです。

コーロウドちゃん(10歳)は、爆撃で吹き飛ばされたドアと散らばった家具の中から、使えそうな物を探しています。洋服には、埃や塵が山のように積もっていました。空中に浮遊するこうした埃や塵で喉を痛める人もいます。

© UNICEF/NYHQ2012-1592/El Baba
倒壊した自宅の瓦礫を片付けるガザ南部ラファの子どもたち。

「電気が使えた日、テレビのニュースを見ていたお母さんが、私を呼んで、こう言ったんです。『ほら、内務省の建物が爆撃を受けて、あなたの通っている学校が被害を受けているよ』って」。コーロウドちゃんはその当時のことを思い出して話してくれました。「テレビには、私の学校が映っていました。(その光景が現実のものとは)信じられなかった。でも、今日、実際に自分の目で見てみて、想像していたより、ずっと悪い状況だと思いました」

コーロウドちゃんの友達のモウルハンちゃんは、自動車が近くを通るたびに、今も身体を震わせています。「近くにミサイルが落ちてきたような音がするの」モウルハンちゃんは、小さな声でこう話してくれました。

学校の中庭では、わずかに残った壁に張られたポスターの周りに子どもたちが集まっています。ポスターには、不思議な形の物体が写っています。子どもたちに、このような物体は命を奪う危険なもので、瓦礫の中にあっても拾わないようにと注意を喚起しているのです。このポスターは、ユニセフと、国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS)が、子どもたちとその家族に、地雷と不発弾の危険について啓発するために作ったものです。

ガザの別の地域にある学校では、建物自体は大きな被害は受けなかったものの、子どもたちが勉強する環境を整えるのに苦心しています。多くの子どもたちは、隣にあるガザスタジアムの緑の芝生に、爆撃によって出来た大きな二つの穴が気になって仕方がないのです。

子どもたちの心への影響

「“暴力の傷跡”がそこら中にある環境の中で、どうやって子どもたちの心をケアしていけばいいのでしょうか」アル・ファラビ学校のワファ・ザキ校長先生は、壊れた窓ガラスをビニールシートで覆ったり、落ちたガラスの破片を片付けながら、こう尋ねます。

この学校では、ガラスの破片で目を傷つけてしまった11歳の女の子を除き、全ての子どもたちが学校に戻りました。しかし、程度の差はあるものの、全員が“暴力”の影響を受けています。親戚が亡くなったり傷を負ったりした子どももいます。また、多くの子どもたちは、自宅や近隣の家屋が空爆や砲撃で被害を受けています。

「子どもたちは、勉強に集中することができません。暴力を受けた体験を話したいのです。子どもたちは、この“暴力”がどうして起きたのか、これからもまた起きるのか議論したいのだと思います」スクールカウンセラーのナディア・アル・アシュルカルさんはこう話し、子どもたちに安全であることを理解させるのは容易ではないと語ります。多くの子どもたちは、約4年前の大規模な武力衝突以来、何年にもわたって、様々な“破壊”や“暴力”を体験してきたのです。

「子どもたち一人ひとりに誰かに伝えたい体験があり、また、友人たちの、無数のそうした話を聞いてきました。自分の叔父さんが、プロポーズをするために恋人の家に歩いて向かっている途中、空爆で殺されたと友人に話す5歳の女の子もいました」(アル・アシュカルさん)

最も年齢の低い女の子たちの中には、ほんの僅かな音にも、小さな体を震わせてしまう子や、独りでトイレに行けない子もいます。「ある女の子は、また砲撃が始まって死んでしまうかもしれないと訴えていました」(アル・アシャカさん)

子どもたちのトラウマは、彼らが描く絵の中にも見ることができます。多くの子どもたちが、自分の帰りを待つ家族が住む家に爆弾が落ちてくるといったような、暴力的な内容の絵を描いていました。

学校の修復=最優先の課題

「子どもたちの心は、家や学校で安心感を得られるようになれば、癒されはじめるはずです。ですから、ユニセフは、学校の修復・修繕を最優先事項にしているのです」ユニセフ・パレスチナ自治区ガザ事務所のダイアン・アラキ所長はこう話します。

ユニセフは、今後数週間の間に、2万人分のスクールバッグを配布する他、今回の武力衝突で被害を受けた118校の校舎などの修繕も実施しますが、子どもたちの心の傷を癒すには、さらに長い時間が必要です。

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