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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたちは今

ペルー:ドメスティック・バイオレンスの被害者が、ジェンダーの平等を訴える

2007年2月26日から3月9日の日程で開催されている第51回国連婦人の地位委員会のテーマは「女子に対するあらゆる形態の差別と暴力の撤廃」。今回もそれにまつわるお話です。

<2007年2月27日、ペルー・アヤクーチョ発>

© UNICEF Peru/2007/Ursula
ペルー・アヤクーチョの広場で開かれた、ジェンダーの平等を訴える『世界子供白書 2007』のイベントに参加するルズミアさん(左)と彼女の息子。 ルズミアさんのマスクにはスペイン語で「沈黙を打ち破ろう」と書かれている。

ルズミラさんは、笑顔を見せようとしても、あふれ出てくる涙をこらえることができませんでした。ルズミラさんは、ジーザス・ナザレノ地区にあるオフィスのイスに座りながら、父親の暴力から逃がれるためにテーブルの下に隠れる母親の姿を見て育った子ども時代を思い返していたのです。「母が父親から暴力を振るわれているところを見たくなくて、家から逃げだそうと反抗ばかりしていました。でも、私が15歳で妊娠したとき、子どもの父親がどこかに行ってしまったんです」

いろいろな障害があったにも関わらず、ルズミラは高校に通いつづけ、優秀な成績をおさめていました。けれども、学校の人に妊娠していることが知られると、彼女は退学になってしまったのです。「すごくつらかった。みんなに無視されたんです。だけど、いつも『いじめや虐待に屈してはいけない』というお母さんの言葉を思い出していたわ」

ドメスティック・バイオレンス(家庭内における暴力)を逃がれて

ルズミラさんは数年後に結婚し、地元の「バソ・デ・レチェ(一杯の牛乳)」子どもの栄養プログラムに参加するようになりました。「子どものミルクが無料でもらえることもあって、夫はプログラムに参加することに賛成してくれたの。女性たちをより良くまとめられるようにいつも努力をしてきたから、地元や地区代表を任命されるようになったのね。でも夫はそれが気に入らなかった」

ある日を境に、夫は彼女を殴ったり、蹴ったりするようになりました。「夫の暴力がやむまで、テーブルの下で小さくなっていたの。でも、そのとき思い出したんです、お母さんのことを。自分のしていることは、父親の暴力から逃れようとする母親と全く同じだった。こんなことはもう終わりにしなければならないと思った・・・」

救いの手を広げよう
© UNICEF Peru/2007/Ursula
『世界子供白書2007」発表の場に集まるジーザス・ナザレノ地区の地元部族の女性たち。

自立したいと考えたルズミラさんは、将来行政補佐として働くため再び勉強を始め、地区が支援する社会福祉の講座に通いました。彼女はさらに、女性の地位向上のためのプロジェクトをいくつか企画しました。そして、そのプロジェクトは現実のものとなったのです。ルズミラさんは現在、ジーザス・ナザレノ地区の社会福祉局で働き、母親と子どもへの支援に取り組んでいます。

ルズミラさんは今までの困難を振り返って言いました。「今いる場所にたどりつくまでの道のりは、長くて厳しいものでした。シングル・マザーとして、何年もの間、差別を受けました。夫からの暴力にもあいました。でも、自分が価値のある人間だと信じていたからこそ、がんばってこれたの」

男女平等が社会の変化をもたらす

2月初旬に、ユニセフ・ペルー事務所がジェンダーの平等をテーマとしたユニセフの代表的刊行物、『世界子供白書2007』の発表会をアヤクーチョで開催したとき、ルズミラさんはそのスタッフのひとりとして活躍しました。彼女は、地元の人々と歌ったり踊ったりしながら、アヤクーチョのメイン広場に入ってきました。

ユニセフ・ペルー事務所代表のグイド・コーネル氏はイベントで、ジェンダーの平等の重要性を訴えました。「女性が健康で、十分な教育を受け、自分で人生の選択ができるようになると、子どもは健やかに育ちます。虐待や搾取、差別に対する沈黙を打ち破ることで、女性はこれらのことを達成できるのです。そのためには、家庭内の暴力や社会的暴力、そして職場での暴力に対して声をあげなければなりません。それが、すべての社会にとって必要とされている変革をもたらすための初めの一歩となるのです」

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