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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

長い道のりへの第一歩
<ロシア>


お父さんのアレクサンダーさんとヴォヴァ・サシャを含む子どもたち

 ちょうど一年ちょっと前のこと。シャポヴァロフ家のヴォヴァ(11歳)とサシャ(10歳)は、学校に通うことよりもお父さんと一緒に建設現場で働くことに興味を持っていました。「学校よりも、建設現場にいる時間のほうが長いんだ。ひと月に300ルーブル(12ドル)稼げるんだよ」ヴォヴァにいたってはこんな自慢さえしていたほどです。彼が稼いだお金のほとんどはクッキーやその他のお菓子などを買うことに消えてしまいますが、家族の生活を支える重要な足しにもなっていました。

 ソビエトが1990年代に崩壊したとき、シャポヴァロフ一家はアゼルバイジャンを離れ、よりよい仕事と生活を求めてバルト海沿岸に位置するカリーニングラードにやってきました。しかし、仕事が見つかるどころか、シャポヴァロフ一家はホームレスとなり、基本的な身分を証明する書類がないため、援助を受ける資格もないことがわかりました。子どもたちでさえも、医療やその他の基本的な社会サービスが受けられなかったのです。学校に通うこともできませんでした。しかしさらに問題なのは、子どもたちが学校に通えるようにするための解決策を、両親がほとんどとっていないことでした。子どもたち、特に年長のヴォヴァとサシャが働いて生活を支えることのほうが、家族が生きていくためには必要不可欠なことだと両親は考えていたのです。

ソーシャルワーカーのタチアナさんと赤ちゃんを抱いたスヴェトラナさん

 しかし、ソーシャルワーカーであるタチアナさんとの出会いによって、一家の生活は変わりました。彼女は、「家族と子どもたちのためのカリーニングラード社会支援センター」で活動するソーシャルワーカーです。タチアナさんは言います。「シャポヴァロフさん一家に出会って、基本的な子どもたちの権利が無視されていることに気付きました。教育を受ける権利や適切な医療サービスを受ける権利などです」タチアナさんは、一家が身分の保障や権利を求めて声を上げることができるよう支援するのみならず、周囲の理解を得て、これまでと違った態度で接してもらい、生活を向上させることができるよう、長きにわたる支援を行ってきました。

 課題もたくさんありますが、指導や励ましに支えられ、忍耐強くセンターの一連のカウンセリング活動に参加することにより、一家は家族として大きな一歩を踏み出しました。この活動を通して、シャポヴァロフ一家は子どもたちの権利、そして健康、教育および保護のニーズのために立ち上がることの大切さを認識するようになったのです。特に父親のシャポバロフさんにとって、ヴォヴァとサシャにとっては教育よりも働くことのほうが重要なのだという考えを変えることは簡単なことではありませんでした。それでも最後には、家計への影響があるにもかかわらず、子どもたちには学校に通う権利があり、また教育を受けるに値する存在なのだと理解するようになったのです。

 お母さんのスヴェトラナさんも、子どものニーズを理解するようになりました。スヴェトラナさんは話します。「社会支援センターからの支援には感謝しています。医療サービスを受けたくても、自分一人ではすべての必要書類を用意することはできませんでした」今では、新しく生まれた赤ちゃんを含め、5人の子どもみんなが定期的に健康診断を受け、適切な予防接種を受けています。

 一家はその他の様々な問題にも直面していますが、以前のような弱い立場にはありません。今では子どもたちの権利やニーズをより深く理解し、尊重するようになっているからです。一家は、アドバイスや支援を求めて、今も頻繁に、そして自発的にセンターへ通いつづけています。

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