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南アフリカ:私たちができる最善の投資【2009年11月16日 南アフリカ発】
マンドラ君(仮名)はまだ9歳ですが、すでに幼い子どもたちの良き指導者です。マンドラ君は、学校が終わると、毎日農村のより弱い立場の幼い子どもたちに、伝統的な歌や物語、ゲームを教えています。 マンドラ君は、『リトル・エレファント(子象)トレーニングセンター』と呼ばれる現地の幼児教育の取り組みの中で最近始まった「子どもから子どもへ」プログラムに、ボランティアとして参加しています。この取り組みは、コミュニティの中で早期幼児を実践しボランティアとして活動する人々に、年間を通して様々なトレーニングを提供しています。“バディ”と呼ばれるマンドラ君やこのプログラムに参加している8歳から13歳までのボランティアの子どもたちは、病気や高齢にも関わらず、幼い子どもたちの面倒を見ざるを得ない人々を少しでも助けるために活動しています。 「“バディ”たちの活躍は、お年寄りと幼い子どもたちの間に橋渡しをすることによって、多くの子どもたちに、幼児教育などの機会が提供できることを示している好例になっています。」ユニセフ・南アフリカ事務所のアンドリエス・ビビエス教育事業担当官は話します。「年上の子どもたちは、自分には価値があるのだという強い感覚を得ることができますし、一方幼い子どもたちは、積極的なケアと良い刺激を受けて年上の子どもたちと遊ぶことを楽しんでいます。 未来への投資幼児教育などの活動に参加している子どもたちは、健康、認知能力、学業成績の面で向上がみられ、以後の人生で、高い収入の仕事に就き、高い生産性を持つようになることが証明されています。 幼児教育などの活動は、幼い子どもたちの持って生まれた認知力や、感情、社会心理的な能力を最大限発揮できるよう、子どもたちの権利を守ることを目的にしています。こうした権利は、子どもの権利条にも、第28条の教育を受ける権利、また第31条の休み、遊ぶ権利としてそれぞれ記されています。 しかしながら、南アフリカの子どもたちのわずか約16パーセントしか、こうした活動の恩恵を受けていません。また、こうしたプログラムが実施されている地域でも、貧困や限られたインフラ設備のために出席率が低いままとなっています。 信頼されている協力者
マンドラ君と彼の家族が暮らす農村部のモチマトロ渓谷地域も例外ではありません。リトル・エレファントトレーニングセンターのメアリー・ジェームス施設長によると、この地域の約8割の世帯が貧困ラインを下回る生活を送っているということです。 「私たちは皆、私たちの子どもたちのために最善を尽くす必要があります。貧しいコミュニティに暮らす南アフリカの幼い子どもたちの多くは、いまだ幼児教育を受ける機会がありません。」(ジェームスさん) センターの幼児教育開発専門家チームは、ファシリテーターを訓練し、地元の貧しい農村部の家庭と緊密に連携をとりながら活動するボランティアの人々も支援しています。また、各家庭の子どもたちの元を訪れ、幼児教育の一端を紹介しています。幼い子どもたちのために、“バディ”たちは、勉強と遊びを組み合わせて行うことを訓練されています。こうした活動を通じて、“バディ”たちは、幼い子どもたちから信頼され、いざという時に子どもたちを助けてくれる協力者となっています。 「“バディ”は遊び相手以上のものです。」ビビエス教育事業担当官はこのように指摘します。「この素晴らしい子どもたちは、各家庭の中で、子どもの発達の障害となり得る状況が発生した時に、それを外部に知らせる重要な役割を果たしています。こうした子どもたちは、幼い子どもたちの身に迫る危険のサインに一番初めに気がつき、子どもたちの身に起こっている飢えや、病気、虐待、放置などの危機を外部に知らせてくれるのです。」 最良の実践モデルユニセフ・南アフリカ事務所は、リトル・エレファントトレーニングセンターが実践するコミュニティの中での活動が、こうした活動を南アフリカ全土に広める際の最良の実践モデルになると考えています。 こうしたプログラムが拡大されるように、ユニセフは、目的を共有する様々な団体と共に、幼児教育活動に関する政策立案を進めています。また、社会開発・基礎教育・保健省と共に、より費用対効果の高い実践方法、コミュニティと家族を基盤とした実践モデルに力点を置き、特に貧しく、厳しい状況にあるコミュニティで、こうした取り組みを実施していく予定です。 ユニセフは、世界中で、子どもたちが人生の最善のスタートが切れるように、様々な支援活動を展開しています。こうした支援は、各国ができる最善の投資方法のひとつでもあるのです。 |