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シエラレオネ:子どもたちのための医療制度改革【2010年7月28日 シエラレオネ発】
シエラレオネの首都フリータウンにあるプリンセス・クリスチャン記念病院には、毎朝、病院の外まで続く長い行列ができます。妊娠中の女性と赤ちゃんたちが、診察の順番を辛抱強く待っているのです。その列の中、病院のスタッフが、緊急に治療が必要な患者がいないか確認して回っています。 妊娠4ヵ月のザナイブ・コンテさん(28歳)が、夫と義理の弟が担ぐ担架で運ばれてきました。家で倒れたコンテさんは、激痛を訴え、腹部に外傷がありました。病院に到着すると直ぐ列の最前列に連れて来られた彼女は、研修医たちが見守る中、医師の診察を受けました。 以前だったら、コンテさんの夫は、医療費が払えないことを心配してコンテさんを病院に連れてくることをためらっていたでしょう。しかし、今、状況は一変しています。「以前なら、借金をしなければならなかったでしょう。」コンテさんの義理の弟は話します。「でも、今は違うんです。」 保健制度改革
シエラレオネの保健医療制度が、今、改善されようとしています。政府は最近、妊娠中や授乳期の女性と、5歳未満の全ての子どもたちの保健医療サービスを、全て無料とする大胆な制度改革を発表したのです。 しかし、長引く武力紛争の影響で、シエラレオネの保健制度は依然として資金不足が続いており、深刻な状況です。質の高い保健医療サービスを提供するためには費用が掛かります。容易なことではありません。シエラレオネでは、妊娠合併症や出産時に命を落とす女性の割合は8人に一人。赤ちゃんの12人に一人は、一歳の誕生日を迎える前に命を落としています。現状の保健医療制度は、人口約550万人のシエラレオネで、十分に対応できるものではありません。 今年の初め、この診療無償化を発表したアーネスト・バイ・コロマ大統領は、これまでの保健医療制度の不備を認めました。「医者も看護師も、低賃金の中、過重労働を強いられていました。」「その結果、医療従事者は、不十分な給料を補うべく、弱い立場の患者から“医療費”を徴収することが慣習になっていました。しかし、今日からこの状況は変わります。」 ユニセフなどからの支援この発表がなされると、シエラレオネ中の女性と子どもたちが、病院や診療所に詰め掛けました。 しかし、この改革は、一夜にして実現したわけではありません。細かい準備作業が、数ヵ月間にわたって行われました。ユニセフの技術・物流両面での支援と、英国国際開発省(DFID)からの資金援助によって、シエラレオネ政府は、病院や診療所への確固たる物流網を整備。全ての医療機関で、一年間分の医療品が備蓄されました。 また、全ての保健員に、この変革を快く応じてもらうべく、十分な給与が支払われました。 変わりつつある態度「政府は、我々の給与と諸手当を引き上げてくれました。私たちの仕事への態度も変化し始めています。」 プリンセス・クリスチャン記念病院のマイケル・コロマ医師は話します。「患者から医療費を請求することを心配せずに、仕事に集中して、質の高い医療サービスを提供しています。」 この新しい制度の運用が安定するにつれて、より質の高い医療サービスが提供されることになるでしょう。また、政府関係者は、給与が引き上げられたことで、国外で働いている医師たちが戻ってくることも期待しています。そして、(国外流出などで)開いてしまった医療専門家の“穴”を埋める、新しい世代の医療専門家が、すぐその穴を埋めてくれることを期待しています。 |