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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

シエラレオネ:平和のための教育
「暴力や体罰を止めて」
劇を通して、若者が訴える

【2014年6月23日 シエラレオネ・ケナマ発】

世界では、5,700万人の子どもたちが学校に通えていません。そしてその半数は、紛争や暴力が起こっている国で生活する子どもたちです。教育は子どもたちの生活、そして一生を変えることのできる、唯一の方法です。学ぶことで、子どもたちは暴力から守られた安全な場所で時間を過ごすことができ、貧困から抜け出すきっかけを掴み、平和のために手を取り合える人となることができるのです。

10年以上前に紛争が終結したシエラレオネには、依然として暴力が影を落としています。そのような状況の中、若者たちが劇を通して暴力や体罰に関する認識を高め、平和構築に向けたメッセージを広める活動をしています。

* * *

シエラレオネ・ケナマ地区の広場で、多くの住民が集まり、劇の幕が開けるのを楽しみに待っています。17歳のイブラヒム・ジャロくんを含めた若者たちも、新しい劇「血の繋がっていない息子」を演じるのが待ちきれない様子です。

イブラヒムくんの演劇グループは、エンターテイメントのためだけではなく、教育のためになる作品を作っています。ユニセフの平和学習プログラムのサポートを受け、暴力や体罰の根絶と平和構築をテーマにした劇を制作しています。

演劇を通した啓発活動

叔母から虐待を受け、学校では体罰を受ける少年を演じるイブラヒムくん(17)
©UNICEF Video
叔母から虐待を受け、学校では体罰を受ける少年を演じるイブラヒムくん(17)

イブラヒムくん演じる主人公の男の子は、継息子。家では血の繋がっていない育ての親に暴力を受け、学校では体罰を受けています。そして暴力から逃れるために家を出て路上で生活を始めました。

その物語の最後は、村長がその行動の間違いを説くことで住民がその行動の過ちに気づき、教師や育ての母親に体罰をやめるように説得するという結末を迎えます。

「この劇のストーリーをとても気に入っています。私たちや両親に、自らの行動に責任を持つことの大切さを伝えることができますから」と、イブラヒムくんが語ります。

ユニセフ・シエラレオネ事務所の開発のための教育専門官、フレデリック・ボボ・ジェームスは、暴力や体罰の根絶のために演劇を用いる理由を語ります。「子どもたちが両親や教師に、『体罰を止めて』と声をあげることは、とても難しいことです。きっと、子どもたちの訴えに耳を貸すこともないでしょう。ですから、私たちは楽しみながら学ぶことができる、“エデュテインメント”(education教育+entertainmentエンターテイメント)を取り入れることにしました。まずは劇を観て笑い、楽しんでもらえたらと思います。しかしそれだけではなく、劇のメッセージが伝わり、家に帰ってからそれぞれが問題を理解し、物事に変化をもたらすためにはどうしたらよいのかを考えるきっかけになればと思ったのです」

紛争の根を断つために

劇には、家庭や学校での暴力が、更に大きな問題に発展する危険性があるというメッセージが込められています。
©UNICEF Video
劇には、家庭や学校での暴力が、更に大きな問題に発展する危険性があるというメッセージが込められています。

10年以上の歳月を費やしたシエラレオネの紛争は、公式には2002年1月に終わっています。しかし、2013年に実施された平和学習に関する調査では、紛争の根本的な原因となり得る問題が、依然として存在していることが明らかになりました。

ユニセフ・シエラレオネ事務所は、武力紛争が再発するであろう危険性を最小限に抑えるため、これらの問題に対応するためのプログラムを作成しました。コミュニティや学校から“しつけ”と称した体罰をなくすことで、シエラレオネ国内で起きている暴力も減らすことができ、人々が暴力を使わずに対立や衝突を解決するようになるのではないか、と教育者は考えています。

この考えは、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちと若者が集まって共に活動し、演劇を通してメッセージを伝えて行動を変えていこうというイブラヒムくんの演劇グループの想いでもあります。

平和のための教育

ボボ・ジェームス専門官は、学校での体罰がもたらした悲惨な出来事を20年近く経った今でも鮮明に思い出します。「紛争の最中でした。学校を退学した男の子たちは、武装勢力の一員になってしまいました。そしてある日学校に戻ってきました。生徒であった自分たちの人権を無視し、体罰をした教師に復讐するためです。そして、多くの教師を殺害したのです」

恐怖の種をなくすためには、まだ多くのことが成される必要があるとボボ・ジェームス専門官が語ります。「紛争は終わりましたが、依然として緊迫した状態は続いています。子どもたちは恐怖を感じています。そして時には、学校に来ることすら嫌がる子どもたちがいます」

イブラヒムくんを含め、演劇グループのメンバーはこの活動がもたらす効果に期待しています。「体罰を許してはいけません。親や先生は、体罰を止めて、子どもたちの教育に力を注ぐべきです。教育が成功への鍵になるのですから」(イブラヒムくん)

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