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≪2003年11月12日掲載≫ ヤギで子どもたちの夢を実現!
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バンソフェのコミュニティ教育委員会の先生のひとり。ヤギを囲んで |
1年前、ユニセフで研修を受けた教育担当官が、コミュニティにやってきて、ちょっとしたアドバイスを村に残して行ったのです。貧困と政情不安にもかかわらず、村人たちは子どもたちを学校に行かせることができるかもしれない、と希望に湧き立ちました。そこで、5人の男性と2人の女性から成る、コミュニティ教育委員会を設置したのです。
コミュニティはまず、簡単な造りの3棟の小屋を建てました。雨風、太陽、ほこりから子どもたちを守るには充分ではありませんでしたが、少なくとも、子どもたちを内戦の遺産とも言える「非識字 1 」から守ることができます。
コミュニティの努力
教育委員会は、しかし、ここで重要なことに気づきました。そう、建物があっても、先生がいなければどうにもならないのです。低所得者しかいないこの村では、教師代も払うことができそうにありません。
子どもたちが字を読めるようになってほしい、そう思った親たちは、何とかしてこの夢を実現したいと思いました。お金がないからといって、簡単にその夢を捨てる気にはならなかったのです。お金は確かにありません…。でも、資本、つまり生きた家畜があるではありませんか!
「子どもたちの親が、先生のためにひとり1頭のヤギを寄付してはどうだろうか、と考えたのです」と振り返るのは、地元の指導者のひとりです。「この努力が一回限りのものに終わらないように、雌のヤギを提供して、ヤギが増えていくことを考えたのです」
どうやら、この努力はうまく実を結んでいるようです。校長のアリ・アダン・アリは現在、156頭のヤギを所有しています。小学校1、2年生のクラスは子どもたちであふれかえり、就学率もどんどん高まっています。
子どもには小学校に通う権利がある。これを村の教育委員会の人たちはよく理解しています。ですから、校長に寄付しているヤギには、自分たちの子どもたちばかりでなく、27人の孤児とヤギを提供できない貧しい家庭の子ども2人分の教育費も含まれています。委員会は、この子たちを支えるのも自分たちの責任だと感じているのです。
女の子の教育に力を入れる
現在、学校には3人の先生がおり、166人の子どもたちが学校に通っていますが、うち47人は女の子です。女の子の就学率28%は、ソマリア全体の平均35%より低いものになっています。それでも委員会は、近い将来、女の子の半分が小学校に通えるようになるだろうと考えています。
ユニセフは、黒板、チョーク、なわとび、地図、地球儀、教科書、そのほかの備品を提供して、こうした学校を支援しています。ほかにも、教育キット、教育管理情報システム(EMIS)を提供していますが、EMISは、学校に就学している子どものデータ、出席率、成績表など、学校側が収集すべきデータを標準化したものです。支援は多岐にわたりますが、ユニセフの支援の中でも重要なのは、教師の研修だと言えるでしょう。
この村でも課題はまだまだたくさん残っています。学校には机やいすもなく、床はほこりだらけ。屋根は雨もりし、トイレもありません。でも、絶対に必要なものがこの村にはあります。それは、コミュニティの堅い意思です。ユニセフとそのパートナーの支援を受けて、親たちは、学校の環境も改善したいと思っています。
欠点はたくさんあるものの、学校は村にとって大切な財産です。
「苦労の連続ともいえる生活…。その中で子どもたちは教育も受けられずにきました」と語るのは委員会のメンバーのひとりです。「100年かかろうと、何がなんでも子どもたちが教育を受けられるようにしてみせます」
きっと実現するでしょう。夢を持ち、ヤギを持っていれば…。
2003年11月
ユニセフ・ソマリア事務所発