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ソマリア:國井修医師からの報告【2010年9月1日 ソマリア発】 今年6月ソマリアに赴任し、現地で乳幼児死亡削減のためのユニセフの取り組みの陣頭指揮にあたっている國井修医師が、先日、ソマリア北東部の“プントランド”と呼ばれる地域を訪問。レポートが送られてきました。 * * * * * * * * ソマリア北東部に位置する港町ボサソに到着するとすぐ、ソマリアの猛暑と強風、そして不毛な平原を前に、ソマリアでの昔の経験と思い出がよみがえってきました。 私は、1985年から1993年まで、あるNGOのメンバーとしてソマリアで活動していたことがあります。今回、私は、ユニセフの職員として、期待に胸を膨らませて再びソマリアに戻ってきたのです。 キャンプへの脅威
私がソマリアを離れた1993年当時、私は、ソマリアが新しい国として確立し、人々の日常生活が改善されていくことを期待していました。しかし、治安状況は今も悪化し続けていて、胸が張り裂けるような思いです。子ども約100万人を含む約200万の人々が、今も人道支援が必要な状況に置かれています。 ボサソでは、ソマリアの南部・中部地域で続く武力紛争から避難してきた人々が暮らすキャンプを訪れました。このキャンプで、二人の子どもを持つある女性に話を聞きました。一家の大黒柱でもあるこの女性は、モガディシュの武力紛争を逃れ、このキャンプまでにたどり着くまでトラックで4日もかかったということです。 幸い、ユニセフの支援により、治療的な食事や保健サービスを受けられたため、彼女の家族の状況は改善しています。もし何の支援もなかったら、様々な病気やそれに伴う合併症で、命を落としていたかもしれません。 ボサソのキャンプの中には、5歳未満の子どもたちの26パーセント以上が急性の栄養不良で、うち約5パーセントは、深刻な栄養不良に苦しんでいる場所もあります。こうした数値からも、ソマリアが、緊急支援が必要な非常に危険な状態であることは明らかです。 非常に重要な支援
食事の量が不足していることに加えて、キャンプの不衛生な環境や感染症の流行、母乳育児の習慣が根付いていないといった要因が、子どもたちに栄養不良を引き起こし、状況を悪化させています。 ボサソのキャンプでは、多くの栄養不良の子どもたちが、下痢や肺炎に苦しんでいます。多くの母親は、完全母乳育児を実践しておらず、そのため、子どもたちが安全でない食事や水を与えられているのです。 人的体制の面で制約があるにもかかわらず、ボサソ病院とキャンプ内の外来専門の食事治療プログラムのための施設(OTPs)に設置されたユニセフの「安定化センター」が、うまく機能していることが分かりました。ユニセフは、ソマリアの子どもたちの栄養不良問題への取り組みにおいて、大きな役割を果たしています。 しかしながら、避難民の間に見られる高い栄養不良率や、支援が届き難い地域で生活している最も困難な状況にある人々の状況を鑑みると、現在行われているこうした支援は、決して十分ではありません。更なる支援が求められています。 失われている幼い命
視察中、私は、ガロウェでこの地方の保健大臣と面会しました。大臣は、ユニセフの継続的な支援に対して感謝の意を述べられました。大臣と最近の事業計画の内容を協議し、私は、大臣の保健と栄養問題に対する熱意と深い傾倒に感銘を受けました。 さらに、効果的な支援をさらに拡大させる方法や、最も弱い立場の人々への支援、また、財源の有効活用に関すること、医療従事者の能力を高めることも話し合いました。 また、この地域の妊産婦と新生児のための保健施設(MCH)も訪問しました。ユニセフは、現在、プントランド地方にある48箇所のMCHと93箇所の保健所に、必須医薬品を提供し、保健従事者の訓練などの支援を行っています。 しかしながら、まだまだやらなければならないことが山積みとなっています。分娩台等の基本器材も不足しています。多くの子どもたちと母親が、MCHに辿り着く前に命を落としており、こうした保健施設の対応能力の強化が緊急に求められています。 今回の視察で、今、ソマリアが抱えている保健と栄養面での問題の状況をさらに理解することができました。私は、これから、ユニセフ・ソマリア事務所の一員として、ソマリアの子どもと女性の生存を改善するための活動を続けていくことを楽しみにしています。 |