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南スーダン:独立後、子どもたちの権利を守るために【2011年7月13日 南スーダン発】
7月9日早朝、南スーダンのジュバにある教育病院の分娩室に、女性たちの大きな声が響きわたりました。この声は、苦痛を訴えるものではありません。うれしさのあまり歓声が上がったのです。 病院の外では、何千人もの人々の歓喜の声が響き渡るなか、分娩室では生まれたばかりの赤ちゃんの誕生が祝福されていました。この出産のほんの少し前、南スーダンが正式に独立し、世界で最も新しい国が誕生しました。そして今、病院の女性たちは、独立後初めて生まれた赤ちゃんの誕生を祝っていたのです。この男の赤ちゃんは、「インデペンデンス(独立)」と名づけられました。 インデペンデンス・モセス・スピナちゃんは、9日(土)、この新しい国の首都ジュバで、地元時間の深夜12時を少し回った頃に生まれました。 出産直後、母親のジョセフィン・スピナさん(24歳)は、分娩室のライトを浴びながら横になって休んでいました。スピナさんは、家族と助産師、看護師、そして赤ちゃんの誕生を祝う人々に囲まれていました。赤ちゃんは、毛布に包まれて母親の胸の上で横になり、新しい世界を見つめるための目は、まだほとんど開いていませんでした。母親と赤ちゃんは、二人とも疲れきった様子でした。 危険にさらされる子どもたち
スピナさんに、南スーダン独立後、最初の出産となった感想を伺うと、「嬉しいです」と答え、疲れながらも満足そうな表情を浮かべていました。 スピナさんとインデペンデンスちゃんは、新国家として幕を開けた南スーダンが直面している課題をまさに象徴する存在です。元子どもの兵士であったスピナさんは、14歳のとき、スーダン人民解放軍 (SPLA)に加わっていました。現在、彼女は、野生生物保護サービスに勤務しながら、兵士の武装解除、動員の解除、および社会への復帰支援プログラムに参加しています。 インデペンデンスちゃんは、スピナさんの二人目の子どもです。インデペンデンスちゃんが生を受けたこの国は、5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす割合が9人に一人、女の子の半数以上は法的に定められている年齢に達する前に結婚しています。また、未成年の武力勢力への徴用も依然として高い割合です。 「南スーダンは、生まれてくる子どもにとって、依然として世界で最も危険な場所のひとつです。」「子どもの生存と開発のためには、多くの課題が残されています。」ユニセフ・南スーダン事務所のヤスミン・アリ・ハック代表は、このように話しました。 出生登録を受ける権利しかしながら、インデペンデンスちゃんは幸運です。2008年の児童法に基づき、新政府は、最も弱い立場の子どもたちが基本的なサービスを受けられるよう、改善していくことを約束しました。この児童法の主要事項のひとつは、全ての子どもたちの出生登録を行うことです。いまだ登録されていない同国の約3分の2の子どもたちとは異なり、インデペンデンスちゃんは、南スーダンの国民として、公式に出生が登録されました。 「出生登録は、基本的人権です。登録されることで、国籍得て、身分証明書が与えられます。」「出生登録によって、その存在が示されるのです。」ユニセフ・南スーダン事務所のファトゥマ・イブラヒム子どもの保護担当官はこのように話しました。 政府とパートナーは、あまりに多くの取り組むべき課題を抱えています。なぜ、今、出生登録に重点的に取り組む必要があるのでしょうか?南スーダンでは、児童労働、早婚、子どもの兵士への徴用が依然として深刻な問題であり、新政府は、こうした問題に対処するために、子どもたち一人ひとりの正確な年齢を示す公式な記録が必要なのです。 また、新しい国家のインフラ設備や求められているサービスを整備する際にも出生登録が助けとなります。「存在していない人々の将来をどうやって計画できるのでしょうか。」(イブラヒム子どもの保護担当官) 全国的に拡大するサービスしかしながら、出生登録の重要性を理解してもらうための啓発活動は、思うように進んでいません。最終的には、信頼できる出生登録が、全国で可能とならなければなりません。 ユニセフは、他国で支援してきた経験を踏まえて、パートナーと共に政府を支援し、南スーダン全域の病院、子どものケアセンター、伝統的な出産センターで出生登録を拡大するべく支援する予定です。 しかしながら、まだまだ多くの問題が山積みとなっています。こうしたサービスが、体系的に全国で展開される前に、効率的な電子化された登録システムが確立されている必要があります。また、保健ケアの提供者と出生登録を行う作業員の研修も行わなければなりません。出生登録を行う大規模なキャンペーンも必要です。 スピナさんは、新しい国で最初に生まれた赤ちゃんの母親であることを誇りに思いながら、体を休めています。他の多くの人々と同じように、スピナさんは、彼女自身と彼女の国のためにこれまで奮闘してきました。しかしながら、今は、インデペンデンスちゃんを始めとする子どもたちは、もうスピナさんのような大変な思いをすることはないという希望があります。 |