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<2001年11月5日信濃毎日新聞夕刊掲載> 戦闘から離れ 躍り上がって喜ぶ
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50の異なった民族が住むアフリカ最大の国スーダン。スーダンは北部と南部の二つの地域に分けることができる。北部はアラブ系の人々でイスラム教徒が多く、南部は黒人系の人々でアニミズムを基層としたキリスト教徒が多い。スーダンは45年前にイギリスより独立して以来、10年ほどの停戦期間はあったが、北部と南部の間で武力紛争が続いてきた。数十年に及ぶ戦闘で、戦場となってきた南部では学校が破壊され、道路は寸断状態となり、水道や病院は使い物にならなくなっている。
武力紛争はコミュニティーの秩序をこわし、家族を離れ離れにし、紛争の長期化で日常生活と戦闘が切り離されない中で、子どもたちが育っている。18歳の子どもが、学校を見たこともなければ、電気も知らず、靴を履いたこともなければ、衣服をまともに身に着けたこともなく育ってきたこともあった。二世代にわたり教育を受けられない人がいることは、紛争が止んでも将来の地域づくり、国づくりに大きな障害となるだろう。
正式な調査はないが、戦闘地域の子どもの多くがトラウマ(心的外傷)を負っているとみられている。夜になると悪夢をみたり、飛行機の音を聞いただけで家の中から出られなくなっている子どもがいる。
なかでも、兵士として徴発し、戦闘行為を強制させる問題は、特に子どもの基本的人権を奪うものであり、ユニセフは紛争当事者に子どもの開放を働きかけている。今までに開放された350人は11歳−18歳で、600の村から徴発され、80%が実際に前線で戦闘に従事させられていた。
子どもたちは開放される際、銃器を放り出し、躍り上がって喜びを表したという。ユニセフはこれらの子どもを戦闘地域から遠ざけて安全地帯の村へ移送した。そこで生まれて初めて健康診断を受け、生活用具をもらった。食事の時、今まで十分食べたことがなかったのだろうか、大人も驚くほどの量をむさぼり食べたという。