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<2004年7月17日信濃毎日新聞掲載> 絵描くこと通じ 感情を表現
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スーダン・ダルフール地域のユニセフ子どもサポートセンターで、11歳の女の子、アスマは赤鉛筆を渡されると、絵を描き始めました。花が咲き乱れた美しい風景に、血を流し、倒れた多くの村人たちも描き加えました。その犠牲者ひとりひとりを、アスマは指さしました。彼女のお父さん、お兄さん、そして叔母さん−。4カ月前、突然村を襲撃され、みんな殺されてしまいました。
「ヘリコプターが近くに飛んでいる音が聞こえました。そして人の叫び声も」アスマは赤鉛筆をいじりながら話します。ラクダに乗った男の人達に村を襲撃されたこと。目の前でお父さんが撃ち殺されたこと。お母さんとしばらく隠れ、外に出ると、お兄さんが死んでいてひどいやけどを負った叔母さんも、一緒に逃げる途中で息をひき取ったこと。2日間水も無く歩き通して難民キャンプに着いたこと—。「村では農作物や木が豊かだったけど、もう何も残っていません」
当時の様子を語るアスマは、11歳の少女にしてはとても冷静でした。「ユニセフによる絵の授業と学校のおかげです」とアスマの学校の先生は言います。「他の子どもたちと同じく、アスマも最初は情緒不安定でした。でも、絵を描くことを通じて、感情を表現でき、自分と同じ目にあっている子がたくさんいることも分かったのです。まだ先は長いけれど、彼女はいつか、社交的になることでしょう。」この先生も、ユニセフによる教師向け研修プログラムへ通っています。
ダルフール地域での紛争は、1998年以来最悪の状況になっています。約120万人が国内避難民となり、治安は悪化の一途。そこでは多くの子どもたちがアスマと同じような悲劇に遭っています。
サポートセンターでは、絵やスポーツ、グループディスカッション等を通じて、傷ついた子どもたちを精神的に支援する活動をしています。また、子どもたちが生活の中で楽しみを再び見つけ出せるよう、地域のNGOを通じて5000人の子どもたちに対して遊びやレクリエーション活動を計画しました。
同地域では今年の2月まで人道的支援での行き来が制限されていたため、現在も支援が行き届いていません。国連はこのダルフールの紛争を、今日の最悪な人道的危機と呼んでいます。ユニセフは、ダルフールの全ての子どもたちへ、体だけでなく、精神的な健康を一刻も早く取り戻せるように活動を続けています。