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スーダン南部 銃を教科書に持ち替える元子どもの兵士たち
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スーダン南部で暮らしているマヨム・マブオングさんは、元子どもの兵士です。15歳のとき、子どもの兵士になりました。銃を置き、教科書を持って、学校へ通い始めたのは、18歳のときでした。24歳のいま、彼はコミュニティのリーダーとして、元子どもの兵士が持つ特別なニーズに応えるためにつくられたスーダン南部の学校、デング・ニアル小学校の教壇に立っています。
マヨムさんが、軍隊に入隊したのは1998年。ちょうど小学校を卒業したばかりでした。20年間以上も続き、何十万もの命を奪ったスーダンの内戦で3年間戦った後、マヨムさんは、2001年にユニセフに保護された子どもの兵士のひとりでした。
兵士から生徒に戻ること。それはとても困難な道のりでした。
「兵士のときは、自由でした」。マヨンさんは言います。「銃を持っていれば、何でもできます。でも、家族に再会したら、家族は、これをしろ、あれをしろというでしょう。兵士という立場に置かれると、戦っている相手だけが自分の唯一の理解者のような気がしてしまうんですよ」。
© UNICEF Sudan/2007 |
2007年、ユニセフがデング・ニアル地区に建てた鉄筋コンクリート製の丈夫な小学校。 |
ルンベックでは、マヨンさんのような元子どもの兵士の数は増加しています。ユニセフは、こうした需要の拡大に応えるために、生徒や教員自身の助けも得ながら、デング・ニアル小学校の施設を拡充しました。学校の近くには、診療所も設立されました。
道らしい道が無く、十分な建築資材が入手できないスーダン南部。殆どの建物は、泥と藁で造られています。このコミュニティが、自分たちの力だけで、風雨に耐え、子どもたちが安心して学べる環境を整えた丈夫な建物をつくることはできません。
デング・ニアル小学校もその例外ではありませんでした。泥の塊を押し固めて造られた壁。藁葺きの天井。雨季の時期には、壁から雨が漏れ、屋根が全て吹き飛ばされてしまうことも珍しくありませんでした。
ユニセフは、スーダン政府と協力し、内戦で崩壊した教育システムを再興し、160万人の子どもたちを今年の終わりまでに学校へ再び通わせることを目指す「学校に行こう!」キャンペーンを展開し、スーダン南部各地で、新しい学校の建設や改築を急ピッチで進めています。
改修なったデング・ニアル小学校では、校舎や教室が広くなったことで、かつての「すし詰め」状態は幾分緩和されました。2005年の南北和平協定締結後、急激に教育の需要が高まったスーダン南部。デング・ニアル小学校には、他の学校と同様、収容可能数を大きく上回る子どもたちが入学しました。今年も、1000人以上の子どもたちが入学を希望しました。「今年こそは、子どもたちが勉強しやすい環境を保てるよう願っているのですが、教室はもう既に満員状態です。」ザカリア・ボル・ガラブ校長先生は話します。
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マヨンさんにとって、新しい学校は、新しい建物以上の意味があります。2004年からデング・ニアル小学校で教員を勤める元子どもの兵士のマヨンさんは、学校は子どもたちが安心できる空間を与えてくれ、新しいことを学べる場所だということを自らの経験の中から感じ取りました。そして今、教員としての立場にある彼は、学校が、地域の若者たちの拠り所としての役割も果たしていると感じています。
教壇に立つ傍ら、マヨンさんは、女子教育推進キャンペーンのリーダーとして、社会的・経済的に弱い立場の子どもたちが、お互いに励まし相談し合い、学校へ通えるようにするお手伝いという「仕事」もしています。
「全ての子どもたちに教育を受けてほしいと思います。学校にいるということは、未来を切り拓いているということなんですよ。」マヨムさんはいいます。
「内戦を経験して、デング・ニアル小学校にたどり着いた私たちは、ときどき、内戦で経験したことを思い出します。とても落ち着かない気持ちになります。でも、友達のところへ行って彼らと話すだけで、私は一人ではないし、ここ、学校は安全な場所だ、私たちは安全な場所にいるんだ、と感じることができるんです」。
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日本ユニセフ協会では、スーダンにおけるユニセフの支援活動を支援するための募金を下記の口座にて受け付けています。皆様のご協力をお願い申し上げます。