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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

シリア:パレスチナ難民に新たな希望を与える「生きるための技術」

【2009年3月26日 シリア】

© UNICEF Syria/2009/Dukman
シリアのパレスチナ人難民キャンプで行われている「生きるための技術」プログラムに参加する3人の女性。

シリアにある難民キャンプで暮らすパレスチナ人の若者たちは、厳しい生活を強いられています。中東の他の多くの地域に較べれば、状況は比較的「まし」な方ですが、難民キャンプのパレスチナの人々の暮らしは、貧困、暴力、アルコール依存症などの問題を多く抱えるシリアの人々のものとほとんど変わりません。また、このキャンプの若者たちには、難民キャンプの外での生活に必要な重要な技術を身につける機会がほとんどありません。

2004年、ユニセフは、若者の創造的で重要な考え方、自己認識、問題解決能力、コミュニケーション能力を育成する「生きるための技術(Life Skills)」プログラムを開始しました。このプログラムは、現在、パレスチナの人々が暮らす難民キャンプに最近作られた「若者に優しい空間」で実施されていますが、ユニセフは、今後このプログラムが、難民キャンプだけではなく、シリアの正規の教育課程に導入されることを目指しています。

問題に気がつくこと
© UNICEF Syria/2009/Dukman
シリアの難民キャンプに暮らすパレスチナ人の若者のための技術訓練は、シリア国内の教育よりも、より参加型の手法が取られている。

「生きるための技術」を教えるためには、シリアの教育制度の中で使われている伝統的な教育方法の見直しを要することになりました。

ユニセフのモハマド・カナワティは、「(シリアの伝統的な教育方法は、)子どもたちが、ただ教室に行って、先生の話を聞くだけというもの。生徒と教員の間に交流はありません。『生きるための技術』プログラムは、子どもたちの積極的な参加を促します。」

「生きるための技術」プログラムが提供するトレーニングは、4日間の入門コースから始まります。この間に、チームづくりの技術や、問題解決の方法などが教えられます。その後、生徒たちには、彼らが身につけた新しい技術を応用する様々な課題が与えられます。

サエエドさん(18歳)は、喫煙問題に焦点を当てた実地研究に参加しました。

「『実地研究』なんて、どうやるものか知りませんでした」サエエドさんは話します。「でも、本当に簡単なことでした。問題を認識し、グループで一緒に解決を探っていくのです。」

まるで「目が覚める」ように・・・

ラネエムさん(16歳)は、彼女が住む地域で起こっている虐待の問題について調べました。「この授業を受けてから、虐待が、私が住む地域のどこにでも存在することを認識しました。そして、そうした虐待行為が、私を落ち込ませ悲しくさせていたものだったと分かりました。」
ラネエムさんは、虐待の理由を特定すると、この問題にどのように対処するべきかを学びました。ラネエムさんは、自分が住む社会に対する新しい視点を持つようになりました。こうした経験を経て、彼女は、心理学者になろうと思っています。難民キャンプの子どもたちの手助けをしたいのだそうです。

このプログラムに参加した約400人の若者の多くが、今、他の若者に「生きるための技術」を教える立場に立っています。ラネエムさんも、すでに他の若者たちへの授業を始め、また、シリアの正規の教育課程に、「生きるための技術」の手法を導入するよう強く訴えています。

「新しい友達や、楽しい課題が、このプログラムを通じて得られるものの全てではありません。自分自身に気がつき、自分の考えや感情を理解し、自分が住む社会を見つめ直すようになるはずです。まるで目が覚めるように。」と、ラネエムさんは語っています。

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