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シリア:急増する難民の子どもたちに、急がれる支援の拡大【2012年9月11日 ヨルダン発】
マラディさんは、生後4ヵ月の娘のソフィアンちゃんを抱きながら、ブランコに乗った2歳半の息子のサフワンちゃんの背中を押しています。サフワンちゃんの双子の弟のオムランちゃんは、父親と一緒にテントに戻っていました。 遊び場では、子どもたちのにぎやかな声が響きわたっています。サフワンちゃんは、午後の照りつける太陽と、顔にあたる土埃に目を細めながら、静かにブランコに揺られています。 この日は、マラディさん一家が、ヨルダン北部にあるザータリ難民キャンプに避難してきてから、15日目になります。 急増する難民
「日没後の爆撃が半年間続きました。毎晩、子どもたちは叫びながら目を覚まし、爆弾の音を聞くたびに、泣いていました」マラディさんは、当時のことを思い出してこう話します。 マラディさん一家は、村の6人が銃撃に巻き込まれて命を落とした時、シリアからの避難を決意しました。その夜は、まずバスに乗って移動。徒歩で渓谷を渡ってヨルダンに入国し、ザータリ難民キャンプに辿り着きました。 シリアを逃れてくる難民の数の大幅な増加に対応するため、今年7月、国境から15キロ南の場所に、ザータリ難民キャンプが設置されました。このキャンプでの避難生活を強いられた難民の数は、キャンプ設置から僅か1ヵ月で、2万8,000人以上に達しました。その半数は、18歳未満の子どもたちです。 ザータリ難民キャンプが設置された当初、このキャンプに辿り着く難民の数は、毎日300人から500人程度でしたが、現在、その数は、2,000人から3,000人に急増しています。 照りつける太陽と砂嵐。そして、耐え難い記憶
ザータリ難民キャンプが設置された地域は、砂漠の不毛地帯。日中の気温は、摂氏40度を越えます。また、砂嵐も頻繁に発生。ザータリに暮らす全ての人々が、また全ての物が、厚い砂埃に覆われているような状態です。 こういった環境の中、人々が直面しているのは、生活上の困難だけではありません。シリアの過酷な状況の中に、何ヵ月も置かれていたことによる精神的なストレスも抱えています。子どもたちは、特に深刻な影響を受けています。 「シリアの難民の子どもたちのほとんどが、ひどい暴力や殺戮を目撃しています」ユニセフ ヨルダン事務所のドミニク・ハイド代表はこう話します。 子どもたちが、自分たちが経験してきたことに苦しんでいる兆候は、難民キャンプ全体で見られています。遊びの中で、見てしまった暴力的な場面を真似している子もいます。また、飛行機が通ると、金きり声を上げて顔を覆い、必死になって隠れる場所を探す子もいます。 子どもたちへの支援ユニセフは、子どもたちを守り、子どもたちが日常の感覚を取り戻し、紛争で負った精神的な影響に対処できるよう、次のような支援を行っています。
“子どもに優しい空間”は、親や保護者を対象とした“教室”や、地域の人々の話し合いのための“会議室”として使われたり、健康を維持するための様々な知識を学べる保健啓発セミナーなどが開催されるなど、子どもたち以外の方々への支援の拠点としても使われています。 “不確かな未来”に備えるためにユニセフは、現在、ザータリ難民キャンプで、コミュニティの子どもの保護委員会のメンバーとして活動するボランティアを募集しています。この委員会は、特に厳しい状況に置かれている子どもたちの存在をユニセフやユニセフのパートナー団体に連絡し、その子たちが教育や保健をはじめ、緊急に必要としているニーズを確認し、適切な対応につなげられるよう、活動する予定です。 毎日、多くの人々がこのキャンプに到着しています。ユニセフは、高まるニーズに対応するため、“子どもに優しい空間”の数を、現在の4倍に増やす計画です。 「この傾向が続けば、今後2ヵ月の間に、ザータリ難民キャンプの子どもの数は、劇的に増加し続けることになります」「“子どもに優しい空間”の数を、早急に増やすよう、準備を進めています」(ハイド代表) 冒頭に紹介したマラディさんは、このキャンプでは、とりあえず基礎的なことは満たされていると言います。しかし、幼い双子のことが心配だとも語ります。「子どもたちは、どうしてシリアを離れたのか、何かがおかしいと気がついています」「でも、ここでの生活にも徐々に慣れてきています。少なくとも、もう爆撃はありませんから」 |