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シリア:子ども達の心を癒す場所(レバノンからの報告)【2012年9月25日 レバノン・トリポリ発】 「僕の学校が破壊された時、お医者さんになるという夢も一緒に壊されたんだ。」「シリアの僕らが住んでいたあたりでは、たくさんの発砲や爆撃があって、モスクも壊されてしまったんだ。最悪だよ。通りには、家を失った子どもたちや食べ物がない子どもたちがたくさんいたよ。」シリア難民を受け入れているレバノン第2の都市トリポリ郊外にあるワジアナクール小学校の中庭で、11歳のアス君(仮名)は、俯きながら、こう語ってくれました。 アス君は、シリアの内戦から逃れてきた何千人もの子どもたちのうちの一人。アレッポに住んでいたアス君一家は、着の身着のままで、4ヶ月前にレバノンに逃れてきました。「ここには、何も持たないで逃げてきたんだ。食べる物もなかったよ。」「僕たちきょうだいは、夢を実現するために、ここでも通える学校を見つけたかったんだけど、最初の頃はとても難しくて、ただ家でじっとしていたんだ」 (アス君) 新たな恐怖
シリアの状況が悪化するにつれ、レバノンに逃れてくる子どもの数も増えています。多くの子どもたちが、アス君のような深刻な経験を経てきているのです。シリアの子どもたちが受けている心理的な影響は深刻です。多くの子どもたちやその家族は、シリアで目のあたりにしてきた暴力や、住み慣れた家やコミュニティを奪われた状況から、恐怖とストレスに苛まれています。 また、シリアの混乱が、レバノン国内に飛び火してくるのではないかという不安が、さらにストレスとなって人々を苦しめています。アス君も、1ヶ月前、トリポリで戦闘が始まった時に感じた恐怖がよみがえってくると言います。「ついこないだ、外で銃を発砲する音が聞こえたんだ。すごく怖くて。シリアを思い出した」(アス君) 日常を取り戻せる安全な場所
子どもたちが、友人たちと一緒に正常な生活を取り戻すため、心理的なサポートを受ける事ができる“安全な場所”を早急に確保する必要があります。ユニセフは、ワジアナクール小学校をはじめとする難民を受け入れている施設に、“子どもに優しい空間”の設置を進めています。 ユニセフで子どもの保護支援事業を担当するメリン・ウォーターハウスは、次の様に述べています「“子どもに優しい空間”では、子どもたちが、友人と遊び、新しい友人をつくり、身の回りで起きていることを話し合うことが出来ます。こうしたことを通じて、子どもたちは、いろいろな事を再度前向き良い方向に考えることが出来るようになり、安心感も得られるようになります。こうした支援が、子どもたちの心に大きな変化を与えていることは、一目瞭然です。」 ユニセフのパートナー団体の一つ、War Child Hollandが運営するワジアナクール小学校の“子どもに優しい空間”では、子どもたちに自信を与え、人間関係を構築することに重点的に取り組んでいます。「とは言うものの、初めは、子どもたちを参加させることは難しかった」と、ファシリテーターの一人、マルワさんは語ります。 「子どもたちが初めてここに来た時、彼らは、先生や他の子どもたちを怖がっていました。彼らは難民の境遇に置かれていることに劣等感を持っていたため、攻撃的な態度をとっていました。でも、先生のサポートを受けながら“子どもに優しい空間”で過ごすうちに、落ち着きを取り戻し、自信を持つようになり、前向きな方法で自分たちを表現するようになりました」 学校に戻るために
“子どもに優しい空間”の活動で重要なことは、シリアの子どもたちを、レバノンの子どもたちや地域のコミュニティと融合させることです。これは、シリアの子どもたちが、レバノン国内の学校で新しい学年を始められるようにするために、とても大事なステップです。 9歳のラニアちゃん(仮名)はホムズ出身です。彼女は、5ヶ月前に家族とレバノンにやってきました。彼女は3年生です。「ここ(レバノン)にいるのが好き。だって学校に行けるし、新しい友達もできたの」と彼女は恥ずかしそうに笑います。「シリアも大好きだから、いつか戻れるといいな。絵を描くことも大好き。大きくなったら絵の先生になりたい」 アス君にも、“子どもに優しい場所”で新しい友達が出来ました。そして彼も、医者になるという夢を追い続けるために、学校に戻れればと思っています。「この学校(ワジアナクール小学校)に通えるようになれればいいな。だって、ここの先生や生徒たちも知っているし。まだ医者になりたいと思っているよ。医者になって、僕の国で貧しい人たちを助けるんだ」 |