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日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

シリア:難民キャンプ内外で提供される安全な飲料水

【2012年10月22日 ヨルダン発】

ヨルダン北部にあるザータリ難民キャンプは、シリアの武力紛争で避難を余儀なくされた約3万人が暮らす安全な避難場所。毎日、数百人もの人々が、このキャンプに避難してきています。

ザータリ難民キャンプが開設されたのは、今年7月。開設されてすぐ、一つの小さな町が生み出す位の規模のさまざまな需要に対応しなければならなくなりました。特に、飲料水の支援は急務でした。

“需要”に応えるために

© UNICEF Jordan/2012/Al-Masri
ザータリ難民キャンプで水を飲むシリアの男の子。この難民キャンプには、毎日100万リットルの飲料水がトラックで運ばれている。

毎日、給水トラックがキャンプ内を走り回り、計100万リットル以上の飲料水を運んでいます。

しかし、世界で最も乾燥している国の一角に設置されたこのキャンプで、必要としている全ての人に飲料水を届けることは、容易なことではありません。

そのため、ハラ・アブ・オマルさんのように、水と衛生に関する啓発活動を担う人々が、とても重要な役割を果たしているのです。

ACTEDと呼ばれるユニセフのパートナー団体のスタッフ、アブ・オマルさんは、同僚と一緒に、キャンプのテントを一つ一つ訪ね、水の節約方法などを伝え回っています。

彼女たちのメッセージは、単純で明快。それは、賢く水を使うということ。そして、病気の発生と流行を防ぐため、テントを清潔に保つことです。しかし、日々、難民の数が増加している砂埃まみれの乾燥しきったこのキャンプの中では、そうしたことが‘難題’なのです。

住民の信頼

© UNICEF Jordan/2012/Al-Masri
ヨルダンにあるザータリ難民キャンプで、衛生と節水の啓発活動にあたっているユニセフのパートナー団体スタッフ、ハラ・アブ・オマルさん、手に持つのは、最近作成した啓発用ポスター

アブ・オマルさんのチームは、毎日朝早くキャンプ内の事務所に集まり、その日の活動計画を立てています。キャンプを撮影した高解像の衛星写真を利用して、訪問するテントを決め、水場やトイレなどに関する問題についても、チームの中で情報を共有します。

この日、アブ・オマルさんは、衛生環境と節水の重要性を話し合うために、出来たばかりの節水を訴えるポスターを携え、午前中に10世帯を訪問しました。

最初に訪問したテントでは、首都ダマスカスから避難してきた家族と話しています。この家族は、ザータリ難民キャンプに来て、3ヵ月近くになります。

アブ・オマルさんは、この家族がどのように水を使っているのか、注意深く話を聞きます。それから、特に、子どもたちに、節水の大切さを説明します。そして、親たちには、洗濯の時に使える節水方法など、具体的なアドバイスをします。

「とても飲み込みの早い方々です。3人の子どもたちとも話しました。ポスターを見せながら説明しました。とても協力的でした」(アブ・オマルさん)

彼女がテントからテントを回って歩いていると、キャンプに住む人々から、温かい声がかけられます。中には、自らアブ・オマルさんを呼び込んで、水の問題を相談する人もいます。ザータリ難民キャンプで活動を始めてから2ヵ月。彼女は、多くの人々と、しっかりとした関係を築いているのです。

「私の活動は、とても重要だと思います。だって、周りを見渡してみれば、シリアを逃れて来た方々が暮らす何万ものテントが見えるでしょう。ここで生活されている方々の水の使い方などの生活習慣に、変化を与えようとしているのです」「また、キャンプの中でも健康を保つために、一人ひとりができる適切な衛生習慣の普及の手助けもしています」と、アブ・オマルさんは語ります。

“今後の水”を確保するために

トラックによる給水活動は、長期的な解決策ではありません。費用と手間がかかる上、遅延が発生したり、中断を余儀なくされることもあり得ます。

ユニセフは、トラックによる給水活動に代わるものとして、現在、パートナー団体と共に、キャンプの近くに、2つの井戸の掘削を準備しています。

また、ザータリ周辺の町の水の供給状況も改善するべく活動しています。シリア難民だけでなく、こうした難民を受け入れている地域の人々も恩恵を受けることになるのです。

たとえば、ザータリ難民キャンプの最も近くにあるマフラク市の人々は、1週間に約10時間しか水道水を利用することができません。ユニセフの現地事務所で水と衛生分野の活動を司るサエエド・ハメエド担当官は、現在、マフラクで建設が進んでいるパイプラインの拡充工事が完了すれば、そこに住むシリア難民と地元の人々、計2万5,000人が恩恵を受けることになると説明します。

また、ヨルダン北部でシリア難民を受け入れているラムサでも、こうした上水道の改善支援が続いています。

「ここに暮らす人々は、(現在の)2倍の水量と、より強い水圧、そして、断水の心配の要らない上水道を手に入れることになります。ここで展開している支援活動は、キャンプで暮らすシリア難民だけでなく、周辺のコミュニティの人々にも恩恵をもたらすのです」(ハメエド担当官)

ザータリ難民キャンプの近くに建設中の井戸は、11月中旬には完成の予定。しかし、キャンプには、毎日新たなシリア難民が到着しています。アブ・オマルさんたちの水を守る活動は、今後も非常に重要な役割を担い続けます。

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