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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

<2003年5月20日信濃毎日新聞掲載>

政治的対立 教育現場にも混乱
<東ティモール>


  昨年5月に悲願の独立を果たした東ティモール。インドネシアからの独立を問う住民投票と騒乱から4年を経た現在でも、壁が黒焦げになった校舎など各地にその傷跡が色濃く残っています。当時東ティモールの90%近くの小学校が焼き討ちに遭ったとみられ、通い慣れた校舎が廃虚と化した姿に子どもたちの多くが強い衝撃を受けました。
しかし、騒乱の影響は校舎の破壊以外にも及びました。インドネシア統治時代に教職の多くを占めていたインドネシア人が騒乱後に東ティモールを去り、極度の教員不足と教育の質の低下を招きました。インドネシア統治時代の98年に70%だった小学校就学率は騒乱後の2001年には64%に低下、特に貧困層の子どもの就学率が悪化しました。

また、政治的な対立が教育現場に混乱をもたらしています。

東ティモールで使われる15の主要言語の中で住民の91%が理解し、実質的に共通語と見なされているのがテトゥン語です。ところが、歴史的にポルトガルとのかかわりの深い現政権は、公用語と教育の場での使用言語としてポルトガル語を採用したため、多くの小学校教員がポルトガル語を話せない中で、教育現場が混乱に陥っています。対立は教育カリキュラムや教科書、教材開発にも遅れを生んでいます。こうした混乱の一番の犠牲者はいうまでもなく子どもたちです。

貧困、人材不足、教育に対する政府やコミュニティの理解不足いう困難の中で、ユニセフは中長期的な視点から教育システムの基礎作りに力を注いでおり、その中心が「小学校100校イニシアチブ」と呼ばれるプロジェクトです。

選ばれた「中核校」を中心に周辺の小学校数校をグループ化し、それぞれの学校グループに教員や政府教育担当官、地元のリーダーや両親から構成される運営委員会を設置、教育環境や問題点の改善、解決に向けての主体的な取り組みが促進されます。

「中核校」には、ユニセフの支援で新たな教育方法や教材、教具が導入されるとともに、教員の研修プログラムがあわせて実施され、新たな知識・技能や教育方法は各学校と共有され、東ティモール全体の教育の質的向上が図られます。

国際社会からの支援を得て独立を勝ち得ることのできた今、東ティモールでは社会サービスの各部門で真の自立が求められています。東ティモールの教育の発展のために、ユニセフの支援はこれからも続きます。

(文・構成・写真提供/(財)日本ユニセフ協会)

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