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大地震でなくした友—深い心の傷
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昨年8月と11月にトルコを襲った大地震は、1万9000人の尊い命を奪い、4万9000人を負傷させただけでなく、今でも多くの人々の心に深い傷跡を残している。
アリエは38歳になる4人の娘の母親。ゴルカク市内のテント村で非難生活を送る彼女は、地震の日以来ぐっすりと眠れた夜は無い。冷え込みが特に厳しくなる夜中、いつまた起こるかわからない地震の恐怖と寒さに何度も目が覚め、「あの日」の体験が鮮明によみがえるという。4歳の娘ディレクは、地震で亡くなった友達のマインのことを何度もアリエに尋ねる。アリエは母親として適切な答えにいつも頭を悩ませている。
ユニセフが支援するテント村の仮説幼稚園に、毎朝ディレクを連れて行くことがアリエの日課だ。ディレクは友達と遊び、おしゃべりをし、大好きなおもちゃで遊ぶことで、徐々に以前の明るさを取り戻しつつある。彼女はブロック遊びとお人形に今は夢中だ。それでも友達のマインの事を思い出した時の彼女は寂しげだ。
ユニセフは学校、幼稚園など友達との共有時間が子どもの心理状態に及ぼす好影響に着目し、テント村で仮説小学校、幼稚園の設置を推進するとともに、教員に対する心理カウンセリング技術の研修を行っている。被災地域の校舎の3割が被害に遭い教室の不足が深刻化しているため、地震発生前に比べ現在は約半数の子どもしか学校に通っていない。ユニセフは教育活動の早期再開のために、教材・教具、レクリエーション用具の提供を行っており、すべての子どもが早期に学校に復帰することを目指している。
子どもたちが学校に行った後、アリエはユニセフが支援する母親のためのクラスに参加する。そこでは、ボランティアスタッフが母親たちに熱心に手工芸技術を教えている。「もし機会があれば、作ったものを売って家計の足しにしたいわ」とアリエは言う。夫の失業によって家計に苦しむ彼女のまなざしは真剣だ。
日本からも提供されたプレハブ仮設住宅の建設が被災地域で徐々に進み、人々はテント村から仮設住宅に移りつつある。アリエとディレクの周辺でも、復興はゆっくりと着実に進んでいるようだ。