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「発育阻害」をゼロに!
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ウガンダの首都カンパラの栄養治療センターで、母親と子どもに話しかける医師たち。 |
子どもたちの発育阻害は、お母さんのお腹の中にいる時からすでに始まっている場合が多く、その影響は、一生涯続きます。発育阻害に陥った子どもたちは、同年代の子どもに比べて身長が低いだけでなく、認知的な発達や学習能力が大きく阻害され、成人になってからの“生産性”も著しく脅かされます。
「(発育阻害は)まだお腹の中にいる間に、充実した人生を送り、存分に学習し、自分の可能性を見つけていくといった子どもたちの可能性や権利を奪ってしまいます。これほどの不公平が他にあるでしょうか?」 レーク事務局長は、こう問いかけました。
発育阻害の子どもたちが就労年齢に達し労働するようになったとしても、(そうでない子どもたちに比べ)一生涯の合計収入の10パーセント以上を失うと言われています。この影響は、広範囲に及びます。世界銀行によると、子どもたちの発育阻害の問題によって生まれる社会的コストは、各国の国内総生産(GDP)の2-3パーセントを占めているのです。
多くの国々で、発育阻害の子どもたちの割合は30パーセントを上回り、中には40パーセントに達している国もあります。このうち6ヵ国は、子どもたちの半数以上が発育阻害に陥っています。こうした状況は、数世代に及ぶ貧困の負のサイクルの要因となっており、個人やその家族、コミュニティのみならず、国をも脅かしている“静かな”世界的緊急事態なのです。
発育阻害を治療することはできませんが、その予防は不可能なことではありません。それどころか、比較的容易に行うことができるのです。十分な食事や栄養を摂取させ、様々な病気を予防し治療すること。これで予防できる問題なのです。妊娠中の女性が、日々の食事で不足しがちなビタミンやミネラルを摂取できるようにすることと、生後6ヵ月間の完全母乳育児を実施することも重要です。
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ウガンダの首都カンパラの栄養治療センターの庭のブランコで遊ぶ子ども。 |
総会での演説で、レーク事務局長は次のように訴えました。
「2008年、いわゆる“コペンハーゲンコンセンサス”の中で、5人のノーベル賞受賞者を含む8人の世界的経済学者が、世界の10の地球規模の問題の解決のための順位付けを行いました。その中で、彼らは、世界の福祉を促進するために最も費用対効果の高い方法として、幼い子どもたちに微量栄養素を提供することをNo.1に順位付けしました。」
「国会議員として、みなさんは特別な立場にいらっしゃいます。栄養問題に関する政策や、問題の改善に資する法律の整備を促進し、栄養問題改善プログラムのための予算を増やし、また、政府やパートナー機関・団体に、(そうした政策や予算・プログラム執行の)責任を課すことができるのです。」
今回の総会の中で、IPUとユニセフは、栄養不良問題解決に向けた国会議員の役割に関するパネルディスカッションを持ちました。ウガンダのジャネット・ムセベニ大統領夫人と同国の国会議員が共同議長を務めたこのセッションでは、ムセベニ大統領夫人が、参加した議員には、それぞれが選出された選挙基盤=地域の人々に、健康的な食事習慣に欠かせない成分と栄養の重要性について教える義務があることを訴えました。
このパネルディスカッションのスピーカーのひとりであるタンザニアのアン・マキンダ議員は、食糧の安全が確保されている国々で、いまだに栄養不良や発育阻害の割合が高いことは到底受け入れることはできないと述べました。
このパネルディスカッションには、ユニセフのヴェルナー・シュルティンク栄養事業担当部長も出席。栄養プログラム拡大運動(SUN)に参加している数ヵ国がこれまで積み重ねてきた成果を紹介し賛えながら、SNUに参加していない国々の参加を促しました。SNUは、100以上の組織や国、民間企業のメンバーで構成され、それぞれの国の政策等の中で、栄養への取り組みを優先させることを求めています。
また、本総会開催中、参加議員たちは、首都カンパラ一帯でユニセフの支援で実施されているプロジェクトを視察。コミュニティが主体となって実施している急性栄養不良問題対策を目的とした取り組みの様子を視察しました。議員たちは、栄養不良状態の子どもたちや世話をする人々の話を聞き、彼らが置かれている厳しい現状に対する理解を深めました。2011年に実施された人口保健状況調査によると、最終確定前の数値ではありますが、ウガンダの5歳未満児の33パーセントが発育阻害状態であることが示されています。
パネルディスカッションの終わりにあたり、ムセベニ大統領夫人は、(本文冒頭に紹介した)レーク事務局長のメッセージに同意しながら、世界中から集まった議員たちに、具体的な行動を強く求めました。「私たちは、何をすべきか知っています。」「行動を起こす時は、まさに‘今’なのです。」