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財団法人日本ユニセフ協会

世界の子どもたち

≪2003年1月15日掲載≫

ヨード添加塩工場を夫婦で設立
<ウズベキスタン>

「カラカルパクスタンでやっていける商売といったら塩くらいなものだよ」と語るのはサイドヴァリ・カディルクロフです。黒い帽子を頭の上で整えて、従業員が塩の包みを小分けにして封をしているところを見届けます。
焉uほかのものは信用できないからね。綿花とか米をどうやって信用しろというんだね?みんな水に頼らなきゃできない作物じゃないか。塩ならばあと2、300年は大丈夫」

焜Tイディバリ(通称サイド)は、カラカルパクスタン自治共和国のコジリという町に住んでいます。48歳のサイドは、妻のオイムコンの話に乗って、この商売を始めたそうです。オイムコンは、コジリの衛生・感染センターの医者で、ヨード欠乏症で苦しむ患者さんたちをどうにかしたいと思ったのです。ヨード添加塩は、社会的な責任であるばかりでなく、ビジネスとしてもうまくいくはずだと言います。「カラカルパクサンにはたくさん塩があるんですもの!スルハンダリヤやナヴォイにも塩はたくさんあるけれど、カラカルパクスタンの塩に勝てる品質のものはないわ!」

烽サこで夫妻は知恵と、資産と努力を注ぎ込んで、今は亡き妻の兄が仕事をしていた場所に、その名前をとったエンベルゲン塩工場を設立したのです。私的に運営されている塩工場は、この二人が作った会社しかありません。設立のために20,000米ドルを費やしました(敷地の確保を含む)。「ユニセフから支援を受けた15,000米ドルがなかったらヨード添加用の機械を自分で買わなければなりませんでしたから、もっと大変だったね」と話すのはサイドです。工場では、ほかの塩工場と同じように、ユニセフからヨード溶解液2トンの支援を受けました。

焜Jディルクロフ夫妻は、すべてをこの工場に投資しました。アパートと車2台を売却し、サイドの建設ビジネス用にと溜め込んだお金もつぎ込みました。銀行から借金することができなかったので、友人からお金を借りたり、自分たちの個人資産を売り払って事業資金を作り出しました。従業員は20,000〜25,000スム(やみ市場の交換レートは1米ドルは約1,200スム)の給料で12人ほど雇っています。「地元のお給料としてはかなり高いレベルですよ」はにかみながらオイムコンが言います。「衛生・感染センターでの私の給料は、彼らと同じ20,000スムですから」

焜Jラカルパクスタンでヨード添加塩を生産すると、労働力が安いのでほどほどの生産コストで済みます。ほかに、ユニセフからはヨード添加用の機械を支援してもらっていますから、塩のほうもそれなりの値段で提供できるんです」パッケージ用の機械を持っていないので、タシュケントの業者に大袋で売って、1キロパックに詰め直しています。
焉u私は1キロ20スム未満で売りますが、そのうち10倍の値段になり、タシュケントでは250倍にもなります」自動パッケージング機械を手に入れるには5,000米ドルが必要とオイムコンは言います。当面はプラスチックのパックと手動式封入機ですませようと思っています。「パックのデザインは、政府がヨード添加塩の新しい基準を作るみたいなので、ようすを見ています。少し待てば、お金を大分節約できますからね」とオイムコン。「小さなパックを売ることができれば、利益率はよくなります」

烽オかし、問題になるのは利益ばかりではありません。妻は学術的な知識もあるので、ヨード欠乏症のことは知っていました。「ユニセフがタシュケントで製塩業者を集めて開いた会議で、ヨード欠乏症が、妊娠中の子どもの知的発達まで影響を与えることを再認識させられました」
焜Iイムコンは、現在デザイン中のパッケージを指差しながら説明します。印刷されているのは地元の言語です。「ヨード添加塩をもっと理解してもらおうと思って、ヨード添加塩をとらないと生まれてくる子どもが知的にも身体的にも発達が遅れる可能性があると表記してみました。それに、お客さまに塩の品質について、知ってほしい情報も盛り込みました」

烽サれでも、低所得世帯はヨード添加塩ではない塩を買ってしまうのだ、とカディルクロフ夫妻は言います。「免許がないまま営業している会社がたくさんあり、こうした会社は保健衛生の規制にものっとらずに営業しているんです。塩は汚いし、ヨードも添加されていない。でも1パック10スム未満という安さです。ヨード添加塩はその5倍はしますから」
烽セからこそ、食卓用のヨード添加塩の製造や販売には規制が必要だと考えているのです。「製塩業者の集まりでは、ヨード添加塩の法案も見直しました。1点、1点見直して、合意をとりつけました」とオイムコン。「製塩業者の協会を作ろうと思っているところです。協会ができれば、法律の通過を早めるために政府とやりとりをしたり、製塩業者全体のために動くこともできます」

  • ヨード欠乏症を予防するには、ヨード添加が一番簡単で安価な方法である。
  • 1人1年間分の塩へのヨード添加費は2〜4セントで済む。
  • 2000年のデータで、全世帯の19%しかヨード添加塩を使用していない。
  • 2002年7月のデータでは、店やマーケットで売られている塩の55%がヨード添加塩であった。
  • ウズベキスタンには製塩工場が64あるが、そのうちヨード添加を行っているのは14の大きな工場だけである。
  • ウズベキスタン政府は全世帯にヨード添加塩をという目標を立てたものの、ヨード添加塩以外の塩の製造を認めないためには、法律の整備が必要である。

 

 工場のレベルを上げるには、まだまだ投資をしなければなりません。まずは、駐車場をアスファルト敷きにして、衛生的にしなければなりませんし、工場をフル稼働させるために、もっと効率のいい電力供給システムに変えなければなりません。工場の拡張の話も出ています。150キロ先の塩採取場から塩をトラックではなく、機関車で運ぶ計画です。そのうち、海外の投資家と組んでジョイント・ベンチャーで工場を拡大して行こうと思っています」

熾v妻は役割分担を決めました。「研究開発は妻が担当。専門家でもあるし、ボスでもある」にやりと笑いながらサイドが言います。「そのほか、工場がうまく機能するように面倒を見るのが私の仕事です」

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製塩業者の初めての集まり

002年10月24、25日の2日間、ウズベキスタンのヨード添加塩問題を話し合うために、国中の18の製塩業者、医学専門家たち、そして保健省とその関係機関からの政府関係者たち50人以上が集まりました。国の製塩業者を集めた初めての会合で、ユニセフとADB(アジア開発銀行)が共同で開催したものです。

日にわたった会合の内容ですが、最初の日は「ヨード添加塩を全世帯に(USI)」とヨード欠乏症の説明、脳の発達についての講義が行われました。USIに向けて、ウズベキスタンがどのような努力をしているかを学び、ヨード添加についての技術的なこと、USI達成のためにほかの国ではどのような努力がなされているのか、などを学びました。2日目は、ヨード欠乏症やUSIについての法案のドラフトを見直し、製塩業者で協会を組織する話なども出ました。

煢№ナは、塩のヨード添加レベルをWHO(世界保健機構)とユニセフの推奨値でもあり、ほかの国での実践値でもある40+/-15mg/kgppmに増やすことを薦めることにしました。ただ、製塩業者協会の組織化までにはいたりませんでした。それでも、製塩業者たちは満足げに会合を終えました。協会を早い時期に組織することで合意し、2003年1月にはまた会合を持つことになっています。ウズベキスタンのUSIを広めていくために、団体としてひとつの声を上げるほうが効果的だと考えているのです。

タシケント2002年12月28日
ルパ・ジョシ(ユニセフ・タシュケント広報官)

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