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日本ユニセフ協会
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ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」
映画『蜂の巣の子供たち』
上映会・トークイベントを開催しました

【2019年11月15日  東京発】

上映後のトークイベントの様子

©日本ユニセフ協会/2019

上映後のトークイベントの様子

日本ユニセフ協会は9月14日(土)、『風の中の子供』(1937年)や『子供の四季』二部作(1939年)に代表される子ども映画の演出において先駆けとなった清水宏監督が制作した映画『蜂の巣の子供たち』の上映会を、東京都港区のユニセフハウスで開催しました。

子どもの権利条約が国連で採択されてから30年を迎える今年、日本ユニセフ協会は「子ども」を主題にした映画13作品を5月から12月にかけて連続上映する、ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」と題したイベントを開催しています。第7回目となる9月14日は、「それでも生きていく子どもたち」という視点から、復員兵と彼を慕う戦争孤児たちが山陽道をともに旅する物語を描いた映画『蜂の巣の子供たち』を上映しました。

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◇作品について

映画『蜂の巣の子供たち』作中画像

@神戸映画資料館

映画『蜂の巣の子供たち』作中画像

本作は、清水宏監督が私財を投じて、引き取って共同生活を送っていた少年たちを出演させてつくった、オール・ロケーションの作品です。この8人の子どもたちは、それぞれ戦災によってかつては浮浪生活をしていた孤児です。また、島村修作を演じている青年も、役者ではなく、物語の中の青年のように、復員したばかりの青年だということ。子ども以外の登場人物も、それまで一度もカメラの前に立ったことのない素人ばかりで、俳優は一人も出ていないということです。病気になった子どもを診察する医者には本物のお医者さんが出てくるといったように、劇映画でありながら、記録映画の色合いが強い作品と言えます。

また、映画の撮影はすべてが外で、スタジオの中では行われなかったとともに、登場人物はいずれも撮影のために化粧や衣装を身に着けておらず、撮影もすべてが自然光線によって行われています。

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上映後には、OMEP(世界幼児教育・保育機構)子どもの権利プロジェクト代表で児童発達学がご専門の金田利子さんに作品をはじめ、当時の社会背景や子どもにとって大切なことについてお話しいただきました。以下は、お話しいただいた内容の要約です。

 

世代間交流をしてみよう

トークセッションのはじめ、参加者の方々同士でグループをつくり、映画の感想を共有しました。その後、異なる世代の方からそれぞれ発表いただきました。

  • 「現役の保育士です。この作品では、復員兵のお兄さんが、子どもの年齢は下だけれども、差別はなく、上から目線の発言もなく、お兄さんの行動を見て子どもが学んでいく様子が描かれていました。自分も保育の現場で子どもに接する時に、自分の行動で子どもたちが自然に腑に落ちるということが大切だなと思いました」

 

  • 「この映画を観るのは2回目ですが、戦争があったことを全面に押し出しているわけではなく、その後どのように生きていくかということを中心に描いているなと思いました。暗く描いていないからこそ、当時の環境の中で生きていかなきゃならない子どもの過酷さなど、考えさせられることが多くありました。どの世代が観ても考えさせられることがあるのではと思います」

 

  • 「戦後生まれではあるけれど、小さいころ、週末に孤児の子と交流する機会がありました。いま、作品を観ながら、その子が孤児になってからどのような思いでいたのだろうかと考えました。映画は思ったより明るい印象で、悲惨な場面だけでなく、子どもたちがいろんなおとなと触れ合いながらたくましく育っていく様子を見ることができました」

 

子どもたちの生きるための闘い

戦争孤児に関する映画というと、悲惨さが強調された作品と想像しがちですが、この作品は、シアター・シリーズの一視点でもある「それでも生きていく子どもたち」という、子どものたくましさや、おとなも子どもも対等な人間としての関係を描いています。

戦争の影響が最も強く及ぶのは、子どもです。戦争が終わったあと、子どもたちの生きるための闘いが始まります。日本では、1945年、たくさんの子どもが孤児になりました。1948年2月、厚生省が全国孤児調査をおこなった結果、総数は12万3504人(内訳:戦災孤児2万8245人、引き揚げ孤児1万1351人、一般孤児8万1259人、捨て子・迷い子2,649人)。同年8月、映画『蜂の巣の子供たち』が封切りされ、世界人権宣言が出されたのもこの年でした。そのあとの、子どもの権利条約までの歩みは以下の通りです。

発表資料より

発表資料より ※クリックでPDF版をご覧いただけます。

 

人間らしい生活の大切さ

金田利子先生

©日本ユニセフ協会/2019

金田利子先生

移動しながら生活し、そこで起こる様々な出来事を映画化していくロードムービーのなかで、子どもの闘いの実態、そのなかでの出来事を作品は描いています。戦争に行き、復員してきたおとな。おとなは子どもとともに行動しつつ、それとなく支えていきます。そして、逆に子どもから教えられ、おとなは目が覚めるという場面もあります。

また、そうしたおとなと子どもの関係だけでなく、本作品には人間生活の原点ともいえる人間性が描かれています。労働の大切さ、仲間、命、学習要求(学びたいという気持ち)、道徳が描かれています。子どもたちはいろいろな経験をするなかで、いろいろなことを学び、変わっていきます。本作で子どもたちが向かうのは大阪の「みかへりの塔」(注1)で、社会的家庭の大切さについても触れています。家庭と家庭の連帯や広がりの大切さ、人間らしい生活によって子どもは変化するということが描かれています。

(注1)非行や家庭環境、その他の理由により生活指導を要する子どもたちに対して、心身の健全な育成を図り、自立のための支援をする現存の児童福祉施設である大阪府の修徳学院を指す。同名の作品を清水宏監督が制作(1941年)。

人のなかで人が育ちあう

子どもの権利、すなわち子どもが生存し、発達し、参画する権利を守るためには、時間や空間、仲間、自由が必要です。時代が変わっても、それによって変わるものと変わらないもの、変わってはならないものがあるのではないかと思います。

  • マニュアルの売り買いではなく、自分の頭で、手足を通して考えること
  • 労働のなかで人は育つこと
  • 厳しいなかでも他者を思いやること
  • そうしたなかで血を超えた人と人の信頼関係が育つこと
  • 教える人と教わる人でなく人のなかで人が育ちあう(中から目線)

 

科学技術の進歩が人間性の発展に転換できるように。それは、60年代~70年代はじめのある小学2年生の詩のようです:

ぼくはどうろは

にんげんが一ばんに

とおるみちにならなあかんとおもいます。

それはむかし山だったとこを

にんげんがえらいめして

みんなでつくったで それでくるまに

ひかれたらばかなことないです。

出典:季刊 『国民教育』 70年冬季 3号

この映画から、科学技術の発展した今日における、生活に根差し生活を変える教育を、共につくり出していきたいと考えました。

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ご参加いただいた皆さまからも、多くのお声を頂戴しました。

  • ・「子どもの生きる力を信じ、丁寧に同じ目線で伝え、子ども自身の主体的な育ちを支える様子がとてもよく描かれていました。そばに寄り添う大人のありようを考えさせられました。子どもの持っている力にも感動しました。あたたかい気持ちになりました」

 

  • 「日本の子ども(戦争直後)をとらえた映画を見て、まず映画そのものが素晴らしかった(また見るチャンスがあってもいい)。お話も深く、大切なところを捉えていて考えさせられます。よかったです。もっと多くの方にシアターシリーズをお知らせしたいと思います。よい機会をありがとうございました」

 

  • 「映画の出演者が役者ではなくオールロケーションとのことで当時の現状をイメージしやすく貴重な映画だと感じました。労働をして得る食べ物の味、山の頂まで友人を背負って登りきる思いやりの深さ等色々な場面で感じることの多い映画でした。このような機会を本当にありがとうございました。」

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◇ユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」とは…

子どもの権利条約が採択されてから30年を迎えるにあたり、「子ども」を主題とした作品を5月~12月にかけて毎月連続で上映する日本ユニセフ協会主催の映画上映会です。「子どもたちの世界」を基調テーマに、「そもそも子どもとは?」「それでも生きていく子どもたち」「子どもを取り巻く世界」「女の子・女性の権利」という4つの視点から選んだドキュメンタリーとフィクション計13作品を上映します。

※参加申込や今後の上映予定についてはこちら

 

◇ 映画『蜂の巣の子供たち』

監督:清水宏

配給:蜂の巣映画

1948年/ 86分/日本/モノクロ

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