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篠原 辰治さん(左)
(公財)日本ユニセフ協会では、日本人の大学院生を対象にUNICEF現地事務所でのインターン研修を行う「海外インターン派遣事業」を実施しています。UNICEFバングラデシュ事務所への海外インターン派遣を終了後、3月まで同事務所でのインターンを継続中の篠原辰治さんから、ロヒンギャ難民キャンプを訪問した際の現地リポート(その2)が届きました!
こんにちは、現在ユニセフ バングラデシュ ダッカ事務所でインターンをさせてもらっています、篠原 辰治(しのはら たつじ)と申します。11月の出張に続き、今月(2月)もコックスバザールに出張に行かせてもらいましたので、報告致します。
2017年8月、約70万人のロヒンギャ難民がミャンマーからバングラデシュのコックスバザールに流入し、元々脆弱なバングラデシュ側を含めて120万人の人々が支援を必要としています。ユニセフはパートナー団体と協力し、非正規ではあるものの155,692人(4~14歳)に基礎教育を提供しており、2019年前半までには2,500の学習センターを作ることを目標にしています。また、今までは学習センターがそれぞれ別々の地域に点在していましたが、現在は4~6つの学習センターを一つのユニット(クラスター)にし、学校のような構造を作っています。近々、ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォア氏の訪問が予定されているということで、私は難民キャンプにある学習センターの事前状況確認に同行しました。
フォア事務局長の視察予定先の一つが2月から実施しているLearning Competency Framework and Approach (LCFA)です。LCFAは、ロヒンギャ難民の子どもたちがより質の高い教育を受けられるよう“子どもを中心にした活動的な学習”の方針に則って設計された学習方式で、UN機関や国際NGO、現地のNGO、教育機関などが参加し、何を教えるべきか、どのように教えるべきかなどの意見を出し合い、開発されたものです。学習は4段階に分かれており、レベル1は就学前教育、レベル2は1~2年生、レベル3は3~5年生、レベル4は6~8年生に相当します(ミャンマー、バングラデシュでは初等教育は5年間)。そして、レベル1~2は英語・ビルマ語・算数・生活技能(ライフスキル)、レベル3~4では4教科に加えて理科も勉強します。
政治的背景から、学習センターではバングラデシュのカリキュラム、教科書、学習教材は使えません。また、バングラデシュで話されるベンガル語も指導言語として使うことができません。同僚になぜなのか話を聞くと、「子どもたちが言葉(ベンガル語)を覚えてバングラデシュに長く滞在することを避けるためだよ。」と教えてもらい、政治が人道支援に影響する事例を大学院の勉強だけでなく、現場でも感じたのは考え深かったです。
その結果、学習センターではロヒンギャ難民出身の指導者と受入れ地域出身の指導者(バングラデシュ人)の二人が協力しながら授業を進めます。ロヒンギャ難民が話す言語はバングラデシュのベンガル語チッタゴン方言の一つなので、バングラデシュ人でチッタゴン出身の人たちはロヒンギャ難民たちと同じ言語でコミュニケーションができます。同僚の教育専門官はチッタゴン出身者でしたので、学習センターで子どもたち・先生たちとうまくコミュニケーションをしていました。
一方、課題もたくさんあります。LCFAを取り入れることができれば指導者と子どものコミュニケーション時間が増えるはずですが、まだ現場では試行錯誤が続いています。難民キャンプを中心に活動しているUNボランティアから話を聞くと「2月からLCFAレベル1~2が導入されたけど、文章が難しくて、先生たちはガイドを読んでも分からない。だから、今は私が内容を教えているのよ」と、サポートの必要性を強調していました。
ユニセフは各パートナーとの契約が遅れたため、LCFAに関するスケジュールが遅れています。今後2カ月以内にイギリスの教育機関から教材内容に対するフィードバックが届き、指導・教材内容など早急に改善していく予定です。
現場のニーズに対してどこまで応えることができるのか、政治的な影響があったり、支援者・団体との関係の重要性があったり、現場で起きていることはとても複雑で一筋縄ではいかないことばかりです。しかし、ユニセフスタッフのあきらめずにベストな道を模索し続ける姿勢からはプロフェッショナリズムを感じさせられました。
インターンシップも残り約1カ月。最後までしっかり学び、今後のキャリアにつなげていきたいと思います。
UNICEFバングラデシュ事務所
インターン
篠原 辰治