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東日本大震災緊急募金 第123報
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熱心に子どもたちの発表に耳を傾ける参加者 |
11月6日、震災で大きな被害を受けた福島県相馬市で、「相馬の子どもが考える東日本大震災」発表会が開催されました。相馬市教育委員会は、子どもたちが今回の震災をどうとらえ、何を課題とするのか、そして相馬市の未来についてどのように考えるのか。子どもたちがこの震災に向き合い、お互いに意見を交換して、考えを深めていくことが非常に大切だと考えました。本発表会の目的は、今回の震災において、生と死、破壊と復興等、生活の大きな変化を、身をもって体験した子どもたち自身が、今、何を思い、そして何を課題と考えているのかを明らかにすることです。
日本ユニセフ協会は、子どもたちが自分たちのふるさとである相馬市について考え、発表する機会を設けることで、子どもたちが考える子どもにやさしい復興の実現を支えるべく、相馬市教育委員会が主催で開催された今回の発表会の実施を支援しました。
相馬市議会議事堂での発表の様子。 |
参加したのは、相馬市内の小学校10校、中学校5校で、各校の代表が3名ずつチームになり、各校でまとめられた内容を発表しました。それぞれのテーマを設定し、学校によっては校内でアンケートを実施したり、クラスの時間を使って話し合いなどを行ってきました。それぞれの発表内容には、震災直後の子どもたちの様子や、家族の状況、そして震災後に気付いたこと、子どもたちの願い、相馬市の未来や復興への強い想いがこめられていました。発表を聞いた、日本ユニセフ協会東日本大震災緊急本部東北駐在代表を務める水野眞理子は、「想像力にあふれ、それぞれの視点で分析、発表され、地域を大切にしよう、前向きに頑張る気持ちが伝わってきました。素晴らしい市民が育つところに、素晴らしい町ができます。皆さんの発表を通じて、新しい希望を見ることができました」と話しました。
子どもたちの発表の一部をご紹介します。
相馬市教育委員会教育長より感謝状が贈呈されました |
—今まではいるのが当然と思っていた家族の大切さ、命の大切さを知りました。水や食べ物のありがたさ、普通の生活が送れることが大切なんだと思いました。原発事故から、資源の大切さを感じました。
—人口が福島県で約3万人、相馬で約1千人減りました。美しい自然、住みやすい相馬。相馬の良いところ、安全なところを全国にアピールして、相馬が元気になるために、住む人が増えてほしいです。
—地元のものが食べられないのが悲しい。地元でつくられた食べ物を安全に食べることができるようになってほしいです。
—支援してもらったことについて、感謝の気持ちを忘れません。自分がおとなになったときに、子どもたちにそのことを伝えたいと思います。
—地域のつながりが大切。地域の人たちに支えられていたからこそ、震災の混乱を乗り越えることができました。私たちが元気に過ごせば、地域の人たちも元気になることがわかりました。地域に貢献できる人なりたいです。
—将来、先生になって震災のことを伝えたい。/将来はおいしいお菓子を作ってみんなを笑顔にさせたい。/野球選手になってお金を相馬の人に寄付したい・・・。
— 一番不安なのは原発事故による汚染です。どうやって身をまもればいいのかわかりません。屋外の活動を少なくすればいいのかはわかりましたが、とても不安。僕たちが大好きな相馬市に安心して暮らせるように、相馬市に望むことは、①詳しい放射線マップを作ってほしい。八幡は比較的値が高いのですが、どこが高いかわかりません。すべてを除染するのはむずかしいので、線量の高いところには近づかないようにしたいです。②僕たちは線量計をつけて毎日生活をしています。健康に影響はないと聞いていますが、将来大丈夫なのかと心配です。健康被害が出た場合に、すぐに治療してもらえるように研究所や病院を作ってほしいです。③のびのびと運動ができるような施設を作ってほしいです。
—校内にも瓦礫がまだ残っています。壁がくずれそうで怖いです。体育館が崩れたのを見たときは、学校がつぶれるかと思いました。家族、きょうだい、自分の家のことが心配になりました。おじいちゃんが亡くなったと聞いたとき、夢かと思いました。
—いつも教室ではトランプ、お絵かきをしています。体育館では人数が多すぎて思い切り走ったりできません。家のなかではゲームをしています。運動量が不足して、病気や大きな怪我にならないか、心配しています。学校で「あたまが痛い、気持ちが悪い」など体調不良を訴える人が昨年よりも増えました。校庭や体育館などの運動施設を見直す必要があると思います。
—子どもは遊びのなかで育つといいます。安心して遊ぶ場所が必要です。早く新しい校庭ができることを願っています。遊びと運動を通じて、子どもたちの元気と笑顔が生まれるのです。それが相馬の復興につながると思います。
写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会