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日本ユニセフ協会
 



東日本大震災復興支援 第209報
お父さんの「育児スイッチ」を“オン”にする支援
— 『岩手の父親支援のためのシンポジウム』開催

【2013年8月23日 盛岡発】

© 日本ユニセフ協会
盛岡市いわて県民情報交流センター「アイーナ」で開催されたシンポジウムには、津波で甚大な被害を受けた県沿岸部はじめ県内各地の子育て支援センターや保育園、自治体関係者など、50名を超える方々が参加。「お父さん支援のための研修会」を受講された方々も多く見られました。

東日本大震災は、子どもたちや子育てに関わる支援や制度の重要性を浮き彫りにしましたが、「お父さんの役割」に着目した取り組みはまだ限られているようです。子育てを“楽しむ”お父さんの数は着実に増えています。しかし、“いざ”という時も親の役割をきちんと果たせる“父親力”は、どうしたら身につけていただけるか?どう支援すべきか?今、子育て支援の現場が悩んでいます。

日本ユニセフ協会が、NPO法人新座子育てネットワークや岩手・宮城・福島3県の各自治体と連携して「父子家庭+父親支援プロジェクト」をスタートさせたのは、震災から約半年ほどの今頃。あれから2年。岩手県内では、その後、岩手県子育てサポートセンターが年数回のペースで「岩手県子育て支援指導者研修会」を実施してきましたが、この度、この研修会の一環として、県内各地で「男性の子育て支援」に日々取り組んでいらっしゃる専門家や実践者の方々に支援の現場で得られた様々な知見を報告していただき、「お父さん支援の在り方」を考える機会を作る『岩手の父親支援のためのシンポジウム』が開催されました。

8月23日、盛岡市いわて県民情報交流センター「アイーナ」で開催されたシンポジウムには、津波で甚大な被害を受けた県沿岸部はじめ県内各地の子育て支援センターや保育園、自治体関係者など、50名を超える方々が参加。「お父さん支援のための研修会」を受講された方々も多く見られました。

シンポジウム第一部では、震災前から宮古市で絵本の読み聞かせ活動をされている市民グループ『おどっつぁんず』(“おどっつあん”は県沿岸地方の方言で“お父さん”)の前川克寿さん、「お父さん支援のための研修会」を受講後、母子家庭に加え父子家庭の支援も始めたNPO法人インクルいわての山屋理恵さん、同様に研修会の受講後3組の父子家庭を支援しているNPO法人アシストエフワンの伊藤美代子さんが、それぞれ、「父子家庭+父親支援プロジェクト」の助成金などのリソースを活用して実践している活動を報告。岩手県保健福祉部児童家庭課の佐藤好許さんより、遺児家庭支援専門員の配置や、被災遺児家庭支援事業「つどいのわ」による遺児家庭支援者の育成など、県としての取り組みも紹介されました。

“育児スイッチ”をオンにする

© 日本ユニセフ協会
「もともと日本の父親たちが持っていた“育児スイッチ”をオンにできるような支援や、男性たち自身が辛い時には(他人に)助けを求めることも大切と気づくこと、今着ている“鎧”を脱ぐ練習も必要なんです」と語る白梅学園大学の汐見稔幸さん

「欧米では、1930年代に既に少子化問題が顕在化し始めていましたので、1980年代には、労働時間の短縮など“父親を家に帰そう”という動きが始まっていました」「一方日本では、江戸時代には、実は、諸外国より日本の父親達の方が育児に大変熱心だったとする記録もあるんです」と語ったのは、教育学・教育人間学・育児学の専門の立場から、シンポジウムに助言者として参加された白梅学園大学の汐見稔幸さん。「もともと日本の父親たちが持っていた“育児スイッチ”をオンにできるような支援や、男性たち自身が辛い時には(他人に)助けを求めることも大切と気づくこと、今着ている“鎧”を脱ぐ練習も必要なんです」と、ご自身が3人のお子さんの育児に積極的に関わった経験談や、時にユーモアも交え、お父さんの育児参加やお父さん支援の重要性を解説されました。

汐見さんは、これに続く「震災復興から考える、求められる岩手県の父親支援」と題された討論会にも参加。「母親は“産む”ことによって子どもと関係性を作りますが、父親は、“関わる”ことで子どもとの関係性を作っていくんです」などと語られる汐見さんは、『おどっつぁんず』の前川さんや、県保健福祉部の佐藤さんとともに、男性3人で、父親支援の意義や在り方などについて自身の子育ての経験なども交えながら本音トークを繰り広げられました。

震災3年目に向けて

「岩手県に住んでいながら知らなかった県内の取り組みもありました。今回、そうした知識や情報を得ることが出来ました」「今ある制度以外にも、家事サポートなどのニーズが父親にはあるのではないでしょうか?」「新しい支援の仕組みを岩手県から作っていけると良いですね」シンポジウムに参加された方々からは、こんな感想が寄せられました。

シンポジウムの開催をサポートした日本ユニセフ協会東日本大震災支援本部の小野道子子どもの保護アドバイザーは、今回のシンポジウムでは、「“平時”からの支援の大切さ、地域で支援するために必要なことや、震災3年目に向け、相談支援や交流支援などの機会の拡充が求められていることが確認されました」と語っています。

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