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東日本大震災緊急募金
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東日本大震災緊急募金 第172報
子どもの保護:家庭におけるリスクの発見と対応に関する研修実施

【2012年11月16日 岩手発】

研修会の講師をしていただいた、岩手県宮古児童相談所の釜石・大槌地区担当の児童福祉司である米澤氏。

家庭におけるリスク。家族の中や地域社会との様々なストレスが原因となり、家族の関係にも緊張が生じます。そうした問題を抱えた家庭に対しての関わり方は、支援員や援助を行う関係者にとって難しく、特に支援を求めない、或いは拒否されることも珍しいことではありません。そんな時、支援者として何ができるか考える。それが、11月15日と16日、釜石市および大槌町で開催された、被災遺児家庭の支援者育成研修会の主要テーマでした。

『地域におけるリスク家庭の現状とその対応方法について』と題したこの研修会の講師は、岩手県宮古児童相談所の釜石・大槌地区担当の児童福祉司である米澤氏。「今直面する諸問題は、元々あった問題です。大震災やその後の津波による被害によって、そうした問題を家庭や地域で支える力(地域力)が弱まったため顕在化したのでしょう」と語ります。

支援者は、各家族のおかれている状況を想像するために、客観的なデータを情報収集し、そこから起こりうるリスクを推測し、推測された問題への対応を想定する必要があります。「これができないと家庭訪問であたふたとして、何もできないで終わってしまいます」と米澤氏。また、“何かあったときに対応するという判断”や“見守る”という姿勢は、言葉だけで終わりがちなので、少なくともどう対応するか、関わる頻度、見守るための方法を具体的に検討しておく必要があるのです。

架空の家庭についての断片的情報を基に、家庭のおかれている状況を想像して対策をたてるグループ演習では有益な意見がたくさん出ました。

釜石市の研修参加者は29名。大槌町では19名。釜石市子ども課や大槌町などの行政職員に加え、保育所職員、小学校教員、保健師、生活支援相談員、民生・児童委員など、現場で被災者や子どもたちに接する実務担当者が集まりました。研修では家庭のおかれている状況を想像して対策をたてるため、父子家庭などの架空の家庭についての断片的情報を基に、グループでどのようなリスクがあるか話し合うという演習も行われました。

個々の家庭からの申請に基づいてではなく、手を差し伸べるサービスの必要性、地域で支援を必要としている方々に身近に関わる方々が、寄り添いながら支援をすることの重要性。一方で(児童相談所のような)特定の組織ではすべての家庭には対応できないので、そうした寄り添うケアを行うため、「個々の家庭と身近に関わる人たち=共に生きる人たちの存在が大切」ということを演習で学びました。

今回の研修に参加した仮設住宅を訪問する生活支援相談員の方は、「私が担当している仮設住宅でも、震災や津波で家族を亡くした子どもがたくさんいますので、演習の事例は同じ目線で考えられました。グループワークが大変参考になりました」と感想をくださいました。

また、今回の講義では家庭におけるリスクの一つである子どもに対する虐待に関しても、その定義や近年の傾向、さらに、予防の視点についてCAP(子どもの暴力防止)プログラムを含めた言及がありました。今回の研修参加者のように家庭に身近で関わる人が、虐待発生のリスク要因を認識した上で、それらを軽減させていくことが必要だと指摘しました。虐待のサインを具体的に列挙し、虐待の可能性を発見したら、迷わずに各市町村の児童福祉担当や、民生?児童委員、広域振興局、児童相談所などに通告して欲しいと訴えました。

「専門機関(児童相談所)が家庭での子どもの虐待問題に介入したから解決というわけではなく、家庭と身近に関わる人たちや保育所・学校などの継続的な関わりが、再発防止にもつながり、地域における連携・ネットワークとして大切です」と米澤氏は締めくくりました。

沿岸広域振興局保健福祉環境部福祉課の八幡課長は、「家庭において、震災以降様々な問題が表面化してきています。生活基盤が確立されていない家庭が多く、そういう状況が長期化することによって、いろいろな問題に発展していきます。行政としては、様々な地域ネットワークや各家庭への関係者と協力して支援を行っていくのが大切であると考えていますので、こうした研修会がとても重要であると思います」とこの支援者育成シリーズ研修会を実施した思いを述べてくださいました。

釜石市の子ども課の佐々木課長補佐も、「時間が経過すれば経過したなりに、新しい問題が発生してきている状況です。今日学んだことを役立て、支援・援助の活動を進めていけると良いと思います」と期待しています。日本ユニセフ協会は、シリーズ研修会を沿岸広域振興局との共催で、企画段階から共にすすめてきました。今後もこうした行政の取り組みを補助することで、各地域社会自身の問題解決力の向上に資するような支援をしていきたいと考えています。

写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会

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