|
東日本大震災緊急募金 第175報
|
気仙•子どものこころのケアセンターに隣接した相談室。 |
「東日本大震災発生後から開始した心のケア活動は現在も継続中ですが、相談支援対応は限界に近づいています。しかし、我々の使命は子どもたちの福祉の向上であり、そのニーズに応えていく責務があると考えています。この使命を果たす上でも、仮設相談室は待望のものでした」。大船渡市の児童養護施設「大洋学園」に併設されている、「児童家庭支援センター大洋」の刈谷所長は、日本ユニセフ協会の支援に対する感謝の言葉と共に、仮設相談室完成の意義を強調されました。
「児童家庭支援センター大洋」は、震災直後より、通常のセンターでの相談業務に加え、避難所等も巡回しながら、大船渡市や陸前高田市の被災した子どもたちやご家庭の支援を行ってきました。しかし、大洋学園と児童家庭支援センター大洋の職員の方々も被災されたり、震災で心のケアを必要とする子どもたちが増えたことから、日本ユニセフ協会は、職員の方々の負担を減らし、地域での活動を充実させるお手伝いをさせていただきました。昨年度は、全国児童家庭支援センター協議会と連携し、「児童家庭支援センター大洋」の活動を支援するために、全国の児童家庭支援センターから合計9名の心理士の方々を派遣しました。
一方、岩手県児童家庭課では、震災後に、宮古市、釜石市、および大船渡市に「子どものこころのケアセンター」を設置し、県内外から児童精神科医を派遣しています。大船渡市でも、児童家庭支援センター大洋に、「気仙•子どものこころのケアセンター」が設置され、震災2年目の現在は、週に1度、盛岡市から小児科医が、月に1度、東京都の児童精神科医が派遣されています。
こうした窓口への相談件数は今も増えているものの、以前は、気仙•子どものこころのケアセンターに相談室は1室しかなく、子どもやご家族のプライバシーを確保できる相談室の整備が急務とされていました。そこで、日本ユニセフ協会に支援の要請があり、2012年10月に仮設相談室が開設されたのです。
相談室では子どもや家族のプライバシーが確保されます。 |
新しい仮設相談室は、派遣される小児科医や児童精神科医との面談の他、複数の子どもやご家族が来所した場合の児童家庭支援センター心理士との相談スペースとしても利用されています。また、児童家庭支援センターに来所することで、学校への出席日と同等に認められるため、不登校の子どもたちの居場所としても利用されています。
「里親も含めて在宅の子ども家庭に関する総合的な家族の視点での支援強化は必須であり、本体施設の大洋学園とも連携しながら総合的な相談支援をしていけるよう、今以上の機能強化も図っていきたいと考えております」と、刈谷所長は抱負を語りました。
現在の相談の多くは、被災の大きかった陸前高田市から寄せられていますが、独立した相談室が整備されたことで、大船渡市や住田町などからの相談にもより積極的に応えて行ける体制ができました。「気仙地区における子ども家庭が震災前よりも福祉を実感できる地域社会作りに少しでも貢献していきたいと考えております」と刈谷所長。今後も、児童家庭支援センター大洋が、地域の子どもたちやご家庭への支援を充実させていけるように、日本ユニセフ協会としても協力していきたいと思います。
写真クレジット全て:© 日本ユニセフ協会