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東日本大震災復興支援 第222報
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© 日本ユニセフ協会 |
11月1日に開催された第6回研修会のテーマは「あそびを通しての心のケア」。東日本大震災で“心のケア”支援を続けてきた日本プレイセラピー協会から、講師の方を派遣いただきました。 |
首都圏を中心に保育園の待機児童問題が注目を集める一方で、小学校に通う特に低学年の子どもたちの保育環境=学童保育の確保も各地で深刻化しています。東日本大震災の被災地も、例外ではありません。
日本ユニセフ協会では、震災直後から、就学児はもとより、支援が比較的手薄だった未就学児の保育・教育支援に加え、被災自治体の要請に基づき、学童保育分野での支援も実施してきました。宮城県気仙沼市では、2011年夏ごろから展開した「幼稚園・保育園等園舎再建支援」の一環で、津波で被災し閉校を余儀なくされた南気仙沼小学校にあった学童保育施設を、気仙沼小学校の敷地内に再建(2012年4月落成)。2013年4月からは、気仙沼市の要請に基づき、学童保育指導員のスキルアップのための研修会を、宮城県学童保育緊急支援プロジェクトによる企画•運営協力のもと、支援しています。
毎回、学童保育に関する経験豊かな全国学童保育連絡協議会の講師を迎え、これまでに、「学童保育とは〜指導員の役割と仕事・求められる倫理」、「子どもの生活や人間関係を豊かにするあそび(実践交流)」、「ひとりひとりを大切にするにする生活づくり(実践交流)」、「指導員の一日の仕事と生活の中で大切にしたいこと」などをテーマに開催。研修会では、学童保育に関する知識・技術を系統的に習得するための講義に加え、参加者の間でお互いに切磋琢磨しようという意識や仲間意識が生まれるよう、それぞれの学童クラブの実践例を持ち回りで紹介する時間も設けられています。
学童保育指導員研修会は、通常、気仙沼市内の公民館などを使って開催されます。しかし、指導員がより多角的で質の高い研修を受講する機会を得られるように、他市町村で開催される大規模な研修会への参加機会も設けており、日本ユニセフ協会は、会場までの交通手段の提供(バス)という形の支援も行っています。
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「新聞パンチ」を実際に体験してみる参加者の方々。研修会では、毎回こうした実践もメニューに組み込まれています。 |
11月1日に気仙沼松岩公民館で開催された第6回研修会のテーマは、「子どもの生活とあそび〜あそびを通しての心のケア」。震災直後から、“心のケア”の分野で日本ユニセフ協会が連携する国内の専門家団体=日本プレイセラピー協会より講師をお招きし、学童期の子どもの反応や脳の働きに関する基本的な知識を講義。続いて、参加者が、“新聞パンチ”や“ローション塗り”などの遊びを通じた心のケアを、自らを“子ども”の立場に置いたロールプレイの形で実際に体験。「遊びや声がけなど、すぐに実践に使えそうです」、「ロールプレイをしてみて、子どもたちの気持ちがわかりました」、「子どもにとっての遊びの重要性を改めて実感しました」などの声が上がっていました。
宮城県学童保育緊急支援プロジェクト代表の池川尚美さんは、「震災後の不安定な状況にある子どもとその家庭を支えるためには、明確な役割意識と高いスキルを持つ指導員の育成が重要です。研修を通して得る仕事への自信は、指導員自身のケアにもつながります」と、研修会の必要性を語ります。
現在、気仙沼市で勤務される37名の学童指導員のなかには、自身が震災で大きな被害を受けた方も少なくありません。身近な方を亡くされたり、家を失ったりされながらも、仮設住宅に住みながら、文字通り寝食も忘れて、子どもたちのために懸命に努力されていらっしゃいます。
東日本大震災から間もなく丸3年。ブルドーザーやダンプトラックの騒音、舞う砂ぼこり。復興への槌音は確かに響き渡っています。しかし、多くがまだ“仮”という不安定な状態なのも事実です。日本ユニセフ協会支援本部の子どもの保護専門家、小野道子アドバイザーは、「こうした状況の中で、これから子どもたちをどう支援していくかが、一層重要になっています。学童保育という、子どもたちへの支援の仕組みが、期待されている本来の役割は勿論、難しい状況の中でも子どもたちを守り・育む役割を果たせるよう、この研修会が少しでも役に立てばと願っています」と語ります。
日本ユニセフ協会は、今年度に引き続き来年度もこの研修会の支援を続けていく予定です。