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東日本大震災復興支援 第207報
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© 日本ユニセフ協会 |
講師の新座子育てネットワーク代表の坂本純子さんと佐野育子さんは、日本全国に共通な問題や状況に加え、福島に特徴的な問題なども解説。具体的な日々の支援に活用できるツールも紹介し、実践的な内容の研修となりました。 |
被災各地が復興に向けた歩みが進む中、“働き盛り”や“子育て真っ最中”の方々の負担が増し、様々な支援の取り組みも行われてきていますが、お父さん方の問題にはあまり焦点が当てられていません。日本ユニセフ協会は、NPO法人新座子育てネットワークや各地の自治体と連携し、「父子家庭+父親支援プロジェクト」を約2年前にスタート。福島県では、今年6月、教育や福祉の現場で活躍される方々を対象にした父親支援のための研修会を、県内で初めて開催。これに続き、去る8月21日、相馬市と南相馬市で、「お父さん支援のための研修会」を開催しました。
相馬市保健福祉部との共催で市総合福祉センターで開催された午前中の研修会には、児童委員や保健師、保育士、スクールカウンセラー、教育相談員など26名の方々が参加。一方、同日午後、南相馬市で活動するNPO法人はらまちクラブとの共催で市の労働福祉センターで開催された午後の部の研修会には、はらまちクラブやファミリーサポートセンターの職員、保育士、幼稚園教諭など、22名の方々が参加されました。
ふたつの研修会で講師を務めた新座子育てネットワーク代表の坂本純子さんと佐野育子さんは、国内の父親支援全般にわたる現状と課題のほか、東日本大震災後や福島に特徴的な課題も解説。いわゆる“震災父子家庭”や震災の影響で突如育児参加を余儀なくされている父親たちの問題が、もともと低かった日本 の父親の育児参加に関わる問題の氷山の一角として表出していることや、“復興ストレス”の中で父親による子どもへのネグレクトや暴力などの問題も出て来ていること、更に福島県については、一人離れてくらす父親たちへのサポートの必要性なども紹介・解説されました。
「父親の子育て支援の現状などのデータが豊富にあり、充実した内容の研修で大変参考になりました。今後、主任児童委員だけでなく、同じ地区の民生委員の方々にもぜひ受講してもらいたい研修です」と感想を語られたのは、相馬市の研修会に参加された同市で主任児童委員をされている渡部昭子さん。南相馬市の研修会を共催し、実際に研修も受けられたNPO法人はらまちクラブの江本理事長も、「こういった研修会では支援者ばかりが集まりがちですが、今回は地域で実施したことで、いろいろな方々に参加いただき、世代間交流にもつながりました」と、本研修会の意義を語ってくださいました。
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相馬市と南相馬市合わせて50名以上の専門家の方々が参加。相馬市保健福祉部の齋藤典雄さんは、「お父さんたちが市役所に相談に来ることは少ないので、(今回参加された)皆さんのように地域で活動する方々が支えてくださることが大切です」と語ります。 |
「相馬市では、震災で17世帯が母親を亡くされて父子家庭になっています。お父さんたちが市役所に相談に来ることは少ないので、(今回参加された)皆さんのように地域で活動する方々が支えてくださることが大切です」と語るのは相馬市保健福祉部社会福祉課長の齋藤典雄さん。南相馬市健康福祉部男女共同こども課長の小椋澄子さんも、「南相馬市では、小中学生は震災前の約6割、未就学児は震災前の約4割が市内に戻っていて、わずかずつですが増えている状況です。父子家庭や父親支援の取り組みは、普段行政が取り上げにくいところなので、このような研修会を開催して頂けるのは有り難いです」と、“お父さん支援”と地域の専門家の方々の役割、そして、そうした方々の対応能力向上を図る今回のような取り組みの重要性・必要性を訴えます。
今回相馬市と南相馬市で研修を受講された方々は、“お父さん支援員”として、今後、研修会でも紹介された助成金はじめ支援活動に使える具体的なツールなども活用していただきながら、お父さん支援に取り組まれます。南相馬市で保育園を運営し、震災直後から「お父さん頑張れプロジェクト」を実施されてきた保育士の近藤能之さんは、「(今回の研修会で)役立つ情報がたくさん得られ、大変参考になりました。お父さん支援の助成金を利用した活動も考えて行きたいです」と語ります。
日本ユニセフ協会では、今秋以降も、子育て支援関係者や教育関係者を対象とした研修会を福島県内で実施。岩手県と宮城県では、専門家などにとどまらず広く一般の方々向けに“お父さん支援”を考えるシンポジウムも開催してまいります。宮城・岩手・福島3県で開催した「お父さん支援研修会」には、これまでに400名を超える方々に受講していただきました。受講者の皆さまが、お父さんたちを応援していく推進力になっていただけるよう、日本ユニセフ協会も支援を続けてまいります。