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財団法人日本ユニセフ協会

ライブラリー プレスリリース

学校は再開、でも子どもたちはどこに?
今年、教室に現れない子ども1億2300万人

【ニューヨーク、2003年9月16日】

 この2週間、世界中の学校で新学期がはじまりつつあります。しかし、ユニセフは、最近の家庭調査の結果、およそ1億2300万人の子どもたちが学校外に取り残されており、彼らが教室に現れることは恐らくないだろう、と発表しました。
 「今月、何百万もの家庭が、彼らの子どもたちを学校に送り出すという最良のチャンスを分かち合うことができません」と、キャロル・ベラミー ユニセフ事務局長は述べました。「これは、教育がすべての子どもたちの権利であるはずのこの世界で起きているがっかりするような現実です。そして、貧困を削減しようとする努力への障害です。そうした取り残された子どもたちが多ければ多いほど、何年か先により多くのおとなたちが取り残されることになるのです。私たちは、何か新しい対処法を必要としています。」

  ユニセフは、サハラ以南のアフリカで、4600万人の就学年齢の子どもたちが学校に入ったことがなく、この数字は1990年以来毎年徐々に増えつづけている、と述べました。また、南アジアの子どもたち4600万人も学校に通っていません。これら2つの地域が、世界全体の未就学児人口の4分の3を占めています。ユニセフはまた、学校に通っていない子どもの2%(およそ250万人)は、先進工業国に住んでいるとも言及しました。

 世界的に見ると、学校に通っていない子どもの多数は女子で、最近の調査によると56%を占めています。

女子に対して高いハードル

 女子も男子も同じように学校に通えるようにすることと定めた2005年までのミレニアム開発目標の達成期限まであと2年となりましたが、女の子はいまだに明らかに不利益をこうむり続けています。過去10年の間に、就学率におけるジェンダーによる格差は縮まりましたが、女の子はいまだに学校に通う権利を否定されやすい存在であり、早くに中途退学してしまう存在でもあります。世界では、およそ6600万人の就学年齢の女子が学校に通っていません。

 ジェンダーの平等を2005年までに達成するためには、多くの国でさらなる努力が求められます。サハラ以南のアフリカでは、半数の国が目標達成にほど遠く、4分の1の国ではむしろ悪い方向へと逆行しつつあります。

 ユニセフは、女子が教育を受けたり修了したりすることができなくなっている明確な障害に注目し、先頭に立って、女子が学校に通えるようにするための戦略的な努力を続けてきました。研究結果によると、より多くの女子を学校に通わせようとする戦略は、結果的に、より多くの男子が学校に通えるようにすることにもつながっています。

 「学校に通えない子どもたちを無視することは、この世代そして次の世代における巨大な損失を意味します」とベラミー事務局長は述べます。「子どもたちは、教育の直接の利益を得られないだけでなく、学校に行けないことで、子どもたちは病気や虐待、性的搾取などの脅威により近づいてしまうことになります。そして特に女子にとってその脅威は大きくなります。」

 「一方で、女子が学校に通うように促され、学校が女子を迎え入れ、女子が質の高い基礎教育を修了できるようになるとき、もたらされる利益は計り知れません。こうした女の子たちが育つと、自分自身も家族も、よりうまく世話できるようになります。教育を受けた女の子たちは、健康な子どもを持てることが多く、その子どもたち自身が学校に通う傾向も高くなります。これは貧困の悪循環を断ち切る上でカギとなるのです」

 他の国ぐにに道を示すような成功例もあります。タリバン政権後のアフガニスタンで、女子教育は長期の開発にとって価値あるものだと認識されるようになりました。昨年、ユニセフによる過去最大規模のバック・トゥ・スクール(学校へ戻ろう)キャンペーンでは、150万人の女子や男子が学校に戻りました。今年、その数は7000校420万人に達し、昨年から女子の就学者数は37%増えました。

 学校の費用がまかなえないような貧しい家庭で、女子は最も不利益を受ける傾向があります。ケニアでは、2003年1月に政府が学校を無償化したことにより、学校の需要が急激に高まっています。国立の小学校の就学児童数は590万人から720万人と130万人増加しました。多数の新入児童に対応するために、緊急に教室が増設されました。ユニセフは、ケニア政府と協力し、これに対応する学校のシステムを支援し、女子も男子も同じように質の高い教育を受けられる(当然のことですが)ことが確保されるよう活動しています。

開発へのエネルギー源

 ユニセフは、女子を就学から妨げている障害をなくすことが、学校の質を改善し、貧しい両親にとってより納得のいく選択肢を生み出す重要な戦略であると考えています。すべての子どもたちにとって学校を魅力的な場所とすることは、真の人間的な開発を促し保つことにつながります。ユニセフは、これらの議論について、12月に発行予定の最新の年次報告書“世界子供白書”で詳細をお伝えする予定です。

 「女子教育は、開発のためのアジェンダにおいて、もはや優先順位の低い課題ではあり得ません」とベラミー事務局長は述べます。ユニセフは、子どもたちの未就学が課題になっているようなところで、可能性を現実に変え、女子が忘れ去られたり、取り残されたりしないよう、政治的、財政的支援を続けます。

 ユニセフによる「2005年までに25カ国で(25 by 2005)」 キャンペーンは、2005年までに25カ国で初等および中等教育におけるジェンダーによる格差をなくすための主要なイニシアチブです。このキャンペーンには、アフリカ13カ国、南アジア6カ国が含まれ、女子教育が危機的な状況にある地域に焦点をあてています。2005年までに初等・中等教育におけるジェンダーの平等を定めたミレニアム開発目標を達成するためには、緊急の支援が必要です。

 それぞれの国で、ユニセフは政府と協力し、新しい資源を動かし、女子教育の必要性について広く国家的なコンセンサスを築くと同時に、女子も男子も迎え入れられるように学校自体の改善を行うなどの支援をしています。

 ユニセフは(このキャンペーンにおいて)次のような基準の一つ以上に当てはまる、対処できるだけの数の国を選びました。

  • 女子の就学率の低さ
  • 初等教育における男女の開きが10%以上
  • 100万人以上の女子が未就学、・世界銀行の “すべての子どもに教育を、緊急イニシアチブ(Fast Track Initiative)” に含まれている
  • HIV/エイズや紛争といった女子の就学の機会に影響を与えるような危機に見舞われている

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